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あらすじ

田中良子(尾野真千子)は生きづらい世の中で逆風にさらされながらも、13歳になる息子・純平(和田庵)の前では胸に抱えた哀しみや怒りを見せずに気丈に振る舞っていた。一方の純平も、屈辱的な出来事に耐えながら母を気遣っている。二人はもがき苦しみながらも、あるものだけは手放そうとしなかった。

解説

『舟を編む』『町田くんの世界』などの石井裕也監督がメガホンを取り、『そして父になる』などの尾野真千子が主演を務めるヒューマンドラマ。世知辛い世の中で、時代に翻弄(ほんろう)されてきた主人公が、愛する中学生の息子と共にたくましく生きていく。息子をドラマ「隣の家族は青く見える」などの和田庵が演じるほか、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏などが共演する。

田中良子(尾野真千子)の夫(オダギリジョー)は、ある日、自転車で青信号を渡ろうとしたときに高齢ドライバーが運転する車、アクセルとブレーキの踏み間違いによって、吹っ飛ばされ即死してしまう。

その後、その運転手は数年後に亡くなった通夜に、良子が顔を見せたものだから、遺族から

あの事故はもう解決したはずだ、これ以上、私たちを追い詰めないでいただきたいと門前払いを食らう。

良子は保険金の受け取りも拒否していた。自分の中では私たちこそ被害者なのに、保険会社

の処理による解決では納得できず、ずっと感情は引きずったままだった。

そして中学生との息子との二人三脚の生活は苦難を強いられる。

コロナ渦で経営していたカフェが潰れ、花屋での仕事も取引先の子のアルバイトがないので、その花屋で働かせてほしいとごり押しを迫られ、店長は良子を解雇してしまう。

そして時給の高い風俗の仕事をすることになる。

息子は学校でいじめの対象になってしまう。

母親が風俗に勤めているだの、コロナ感染は大丈夫なのか?と誹謗中傷を受けたり、小突かれたりする。

その事実を知った良子は学校に乗り込むが、いじめはない、今、学年主任と相談中だと言って、担任との話し合いもこじれてしまう。

そして中学校の頃に好きだった同級生と再会する良子。相手の男性は今は別居中、家庭が

つまらないと良子を誘う。

良子は自分が風俗をしていることをその同級生に告げる。

そのとき、その男性は軽く良子の告白を流し、本気になってもらったら困る、軽いノリで行こうよとあしらってしまう。

良子はキレて、私は舐められている、そして風俗の仲間も良子に味方をしてくれ、その男性を

ボコボコにしてしまう。

生きづらい世の中でこの先の未来も描けないこの家族に、世間の風は冷たい。

そんな中で一生懸命に生きていく、死ぬこともできない家族がいることを丹念に描いてくれた

石井裕也監督に拍手を送りたい。

尾野真千子も体を張っての演技も見事だった。