2025年劇団せすん公演
へんしいへんしい私の・・・
鉢巻とさざれ石





大阪天満宮の近くにある大阪グリーン会館というところでの舞台を鑑賞。

↑ここ、グリーン会館


あらすじ 
 戦後間もない頃の日本。
 新憲法が施行され、 これからは自由と人権が保障され、 明るい世の中がやってくると信じ、
 希望にあふれていたあの頃。
 当時の人たちの気持ちを代弁するかのうような「青い山脈」という小説、映画、主題歌が大ヒットした。 
そんな世情の中でも、 戦争で体にも、心にも傷を負った多くの人たちはその深さ故、癒されることはなかった。 戦争が終わり、自由な時代の到来に 「若く明るい歌声」が響く中、 体や心に負った傷を癒しきれないでいる大人たち。
戦後80年の節目に描く、
「青い山肌」と
戦後の人々の再出発の物語。



受け付けで聞かれたのは「65才以上の方ですか?」
後で知ったのですがシニア割があり500円安い。
もちろん、まだその年齢には達してません(笑)
受け付けの方も観客の方たちも私よりも年配に思えた。
お値段もかなりお安く、この雰囲気。
えっ!?もしかして素人集団の演劇を見せられるのか?などと心配しました。

が、

全然そういうのではありませんでした。(初めての鑑賞とはいえ本当に失礼しました)

話の内容が前後間もない頃の話で、
小説•映画•歌でその時代に凄く人気のあった「青い山脈」というモノを中心の題材として展開していくため、その「青い山脈」自体を知らない若い世代の方には「???」の話になるのかも知れない。
私も歌は当時ではなく、後に聞いて一番くらいは口ずさめるが
映画は見たこともなく、小説も読んではない。
そんな感じなので
多分内容をある程度知っていた人が集まってくるとこんな観客層となるんだと
勝手に納得しました。


ということで、少し帰ってから「青い山脈」を調べてみると

AIでも
変しい変しいという言葉が出てきており
「変しい変しい 青い山脈」は、誤字であり、恐らく石坂洋二郎の小説『青い山脈』、あるいはそれを原作とした映画や主題歌を指していると思われます
もちろん変しいは恋しいの誤字。
「青い山脈」は、戦後まもない地方の学校を舞台に、高等女学校の生徒たちの恋愛などを通して、当時の社会や人間模様を明るく描いた作品です。

なるほど、へんしいという題名もこのあたりからなんでしょうね。


『青い山脈』について
  • 原作小説::石坂洋二郎の長編小説で、1947年に発表されました。
  • 映画::小説は東宝によって映画化され、1949年に公開されました。この作品は戦後を代表する青春映画の一つとして人気を博しました。

  • 主題歌::藤山一郎と奈良光枝によって歌われた同名の主題歌も有名です。 

  •            

  • 作品の概要

  • 物語は、日本の一地方の高等女学校を舞台に展開します。


  • 男女の交際や、当時の教育、社会に対する価値観の変化などが、明るくユーモラスに描かれています。

  • 映画では、戦後復興期に、民主主義が浸透していく様が描かれ、当時の人々に大きな感動を与えました。


戦時中は、全てが「お国のため」で、
恋をするなどということは御法度であった。
ただこの舞台でも言われてたように、それは法律などというものではなく
もちろん軍に入れば強制的にもなっていたであろうが、
普段の生活は、国民自身が周りの環境に合わせるように、
「言ってはいけない、やってはいけない」と自分自身をその閉鎖的なところに追いやっていた。

日本人の、遠慮深い、我慢強いという本来は褒められるような気質が、返って災いして民主主義とは真逆の世界へと全体で進んで行ったのではと考えられる。
(ここが私が一番この作品で再認識、考えさせられたところ)

そんな中で生活してきた人たちが、戦後民主主義の道を歩み出した時
そこには、たくさんの格闘があった。
「はい、今日から民主主義ね」と言われても••

住むところを奪われた者、身体の一部を失った者、生命を失った者、残された者
そんな人たちが、前を向き歩き始めるまでを
高校の文化祭でこの流行りであった「青い山脈」を演じるということを通じて
上手く現していました。

もう少し「青い山脈」というものの説明さえつけることが出来れば
若い人たちにも、こういう時代のうえに今の時代がある事
何を大切にしなければいけないのか
などを知るため•考えるためにも、観てもらいたいと思える作品でした。


出演者

北林貴子/水野桜花

高校教師。作家北林修三の息子の嫁。
息子は沖縄戦にて戦死。
死んだ事すらも受け入れる事が出来ず次の一歩を踏み出すことが出来ない。
文化祭での「青い山脈」の英語教師島崎節子を演じることとなり、それをキッカケに前に進めることとなる。

いろいろな役に挑戦してドンドン上手くなっている印象。本当の年齢分からない(笑)
文化祭で初めて役を演じるという設定なので、そこでわざと下手な演技をするんだけど立ち位置が違うとか話す人に向っていないとか細やかな所まで魅せていました。ただその時の台詞がちょっとイントネーションを含め違和感があったかも。
しかし、泣かせる演技やその時代にあった姿勢など上手さを十分に発揮してました。


北林修三/古謝伸二
万葉集の詩に関して著した作家。
貴子の義父。亡妻とは見合いで本当の恋は知らない?
戦争に突入時、国の方針に沿うよう詩の解釈を変えた著書を出版させられ
次の作品を書けなく(出版したくない)なっている。

好きな声。その声を聞いているだけで話に吸い込まれて行く感じ。

木戸美也子/久保友紀
北林が以前に出した著書の出版社の北林担当記者。
貴子の教え子。
子供の頃にやっていた演劇を活かして、貴子と朝倉の演技を指導する。

初めて舞台に立ったとは思えないくらい堂々とした演技で違和感もなく、自然に見ることが出来ました。
というか、声もよく通ってましたし言われないと分からないレベルだと。
重松と台詞が被り焦るところがありましたが、あれはどちらのミス?(笑)


朝倉/盛光秀信
市役所の役人。北林や貴子、重松、好江が住む仮設が5年をむかえ、新しく出来た住居に移るようにと説得に来る。
元々北林の著書のファンで北林に憧れを持つ。
貴子の夫と同じ沖縄に出兵するが、直ぐに台湾へと移動となり帰国出来ることとなる。
生きて帰ることが罪と感じ、彼も前向きに強く生きることが出来ないでいる。
鉢巻は、出兵する前にいた軍需工場で、彼に恋した(彼女はその時代にそんな事は言えない)人から沖縄出兵の際もらったモノ。

「青い山脈」の校医沼田玉雄をなぜか演じるはめとなり、それをキッカケに彼も前に進めるようになる。

演技など気になったことはないのですが、唯一最初の登場から靴(綺麗すぎる革靴)だけがなぜか気になってました。

重松/下村和行
戦争で目を失い、普段は年下の上官(戦死)が口ずさんでいたという曲をハーモニカで演奏しながら物乞いをしている。

ハーモニカの手の動きと音があまりに違うので、そこは気になったのだが、
話しの中では、台詞を噛み、決してスムーズではないその話口調がリアルさを感じさせてくれたり、笑いもありと話に厚みを加えていました。

好江/井上清美
仮設に住んでいる元芸者。
とても世話好きで、貴子だけでなく北林、朝倉にまで相手を世話しようとする。

着物姿がとても似合っていて、姿勢も台詞も自然すぎて本当にそういう世界にいた人かと思うくらい。
この人も年齢が分からない(笑)