あちらの人達は、ホテルやマンションというように
同じ形のものが連なる場所を好むと聞いたことがある。
実際に、多くの恐怖体験が報告されているホテルや病院、
学校というのは、同じような部屋がいくつも連なっているので、
ある意味納得できる。
それ以外では、水場にも多く見られる。
占いなどで、水難の相というのは、水の事故だけではなく、
霊のことを差すこともあると、ある占い師に教わったことがある。
しかし、それ以外の場所にも、あちらの方は存在する。
私が目撃したのは、電車の中だった。
座って本を読んでいる時、視界の隅のほうに、変なものが見えた。
同じ並びの座席に座っている人の足元に、
黒い大きな荷物があるように見えたのだ。
私が電車に乗ったときは、大きな荷物を持った人は
いなかったはず。
そう思い、目線を横にずらしてみた。
私の二人ほど向こうに座っている女性の足元に、
確かにそれはあった。
けれど、それは荷物ではなかった。
女性の足元にしゃがみこみ、女性の膝の上に両手を置き、
更に顎を乗せM女性の顔をジっと見つめているのだ。
たぶん、小学校中学年くらいの子供だと思う・・・
「だと思う」というのは、外見がかなり崩れているからだ。
体中に泥を付けて乾かしたように、表面全体がボコボコしていて
原形を留めていないのだ。
私との距離が近すぎたので、読み取ろうとするのはやめたけれど
見えてしまったこともある。
彼女は、いわゆる心霊スポットと言われる場所に行ったらしい。
林か森を抜けた所にある小さな沼のような場所だ。
そこで、どうやらお持ち帰りをしたらしいのだ。
その子が、何故そこにいて、何故彼女に着いて行ったのかは
知らないが、あの様子では、自ら離れるとは思えない・・・
心霊スポットと呼ばれるからには、それなりに
謂れがあるのだ。
面白半分に遊びに行って、彼女のように
お持ち帰りすることもある。
わかりやすいように説明すると、
病気で苦しんで寝ている人の部屋に、何人もの人が
連れ立って入り込み、写真を撮ったり騒いだりしてるようなもの。
そんなことをされたら、誰だって怒るだろう。
もしくは、誰かに声をかけて欲しがってるモノもいるだろう。
そんな所に入ったら、迎えに行っているようなものだ。
面白半分で、出入りするようなことは止めたほうがいい。
お持ち帰りしてしまった女性が、無事であることを祈る・・・