『小石の手紙』
お酒飲みで、なかなか仕事をしない亭主に、女房は少々困っていた。ある日、ささいな事で亭主と喧嘩をした女房は、今迄の事もあり、実家に帰ってしまう。しかし、離れてみれば、亭主の事が気にかかる。今更、帰ることもできない。きっと亭主は怒っているだろう。
一方、亭主の方は、女房が出ていってから、心を改め仕事を熱心にこなし、お酒も止め、毎日真面目に暮らすようになっていた。女房の事は気になるが、自分を見切って出て行ったのだ。きっと自分のところには戻ってきてはくれないだろう・・・。
今は情報の時代。こんな時、メールで連絡したり、Twitter等を駆使し、様子を探る事もできるでしょう。でも時代は昔。全ての人が、字の読み書きが出来る時代ではない。実家に戻った女房と、亭主の住む家も、車や電車で行き来ができる今とは違います。
そして大きな問題は、唯一通信網となる手紙。亭主は字を書く事も、読む事もできた。しかし女房は、字の読み書きができない。
出ていったものの、女房は亭主のことが気になって仕方がない。出て来てしまった自分を、亭主は許してはくれないだろう。・・・そう思いながらも、亭主に自分の気持ちを伝えたい。
女房は、亭主に手紙を出す事にした。字が書けない女房が送ったのは、字のない手紙・・・『小石』。河原にある石。それを、何度も何度も亭主に送ったのだ。
亭主は増える小石を見つめながら、女房が何を考えているのか分からなかった。
これは嫌がらせ?・・・と、今なら思うだろう。だって石が送られてきてもねぇ・・。
ある日、亭主は女房の手紙を持ってくる商人を捕まえ、『これは一体なんだろう?』と、石の山を見せて問いかける。『女房が、何を考えているのか分からない』
商人は、目の前にある、小石を見ながら考えた。小石・・・小石・・・・小石・・・・。
これは字の書けない女房の、亭主に託したラブレター。
恋しい、恋しい。貴方が恋しい。
それに気づいた亭主。返事を書きたい。・・・・・・でも女房は、字が読めない。
そうなのです。手紙を書けない。読めない。そんな時代、想像力がとても必要になる。
亭主は女房に松を送りました。・・・もうお気づきでしょう?
待つ。お前を待っている。帰ってこい。
女房は翌日、亭主の元に戻りました。恋しい恋しい亭主の元に、待っていると伝えた亭主は女房を温かく迎えました。
パソコンも、携帯も、スマホも、本当に便利。
でもどこかで、『言葉』を粗末に扱っている自分に気づく事がある。
言葉を大事にしないって、自分の気持ち、相手の気持ちにも、鈍感になっているんじゃないかな?何となく流してしまい、受け止める事をおざなりにしてしまう。
もっともっと、相手の言葉の奥にある、気持ちに耳を傾けたいな。
そんな事を感じた昔ばなしでした。
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