ミイ子「ねえマリカ、うちの課の九条くん覚えてる?最近ヤバいんだよ。目が死んでた。口元は笑ってんのに、目だけスン…て。」
マリカ「昼休みちょっと見かけたけど、魂が抜けかけてたわね。笑顔の裏に隠した絶望、って感じ。」
ミイ子「もう完全に、ブラックホール背負ってる系男子よあれは。でさ、誰も気づかないフリしてるのがまたツラい。てか、九条くん自身が『大丈夫です』オーラ出しまくってるんだもん…。」
マリカ「“孤高の頑張り屋”って、ロマンはあるけど現実ではだいたい過労死予備軍よね。」
ミイ子「それ言い方ァ…いやでもマジそれ。九条くん、完全に一人で全部やろうとしてるじゃん?『人に頼るくらいなら倒れた方がマシ』くらいに思ってそうで、こっちがヒヤヒヤする。」
マリカ「誰にも頼らないのが強さ、って思い込んでる人ほど、実は一番折れやすいのよ。脆さと強さは、紙一重。」
ミイ子「うわー…それ、九条くんに貼って送りたい。ポストイットで。」
マリカ「助けを求めるって、弱さじゃない。ちゃんと“自分の限界を知ってる”っていう、立派なスキルなのよ。むしろ、助けられる覚悟がある人が、本当に強い。」
ミイ子「そうそう!私だってさ、前に無理して倒れたときに言われたの。“誰もあなたに、全部やれなんて頼んでない”って…。それ聞いて、泣きながら味噌汁こぼしたもん。」
マリカ「…その割に次の日も普通に一人で無理してたわよねあなた。」
ミイ子「それ言う?空気読もうよ?!」
マリカ「孤独は美徳のように見えて、案外ただの勘違い。支え合うことで、人は初めて自分の形を知るのよ。」
ミイ子「それ九条くんに通じるかなあ…。でもさあ、彼、誰にも借りを作りたくないんだと思うんだよね。お礼とか気にして、逆に疲れちゃうタイプっていうか。」
マリカ「そういう人ほど、助けを求める練習をしなきゃいけないの。人生、貸し借りじゃないのよ。見返りを求めない優しさも、あるってことを覚えてほしいわ。」
ミイ子「そう!『ありがとう』で完結していいんだよって、誰か教えてあげてほしい…。いや、教えてあげたい!ていうか、私が言う。」
マリカ「言うのはいいけど、“君の生存が心配で夜も眠れない”みたいな重苦しいやつはやめなさいよ。」
ミイ子「たかが後輩にそんなん言わんわ!」
マリカ「ミイ子、あんたの良さは無邪気なとこなんだから、それで押し通しなさい。『九条くん、今度無限プチプチ買ってきてあげるから、代わりにこの資料やって♡』くらいのノリでね。」
ミイ子「……それ、普通に労働の押しつけじゃん!今の九条くんに対して、無邪気というか邪悪。一番腹立つやつ。なんだったの今までの話?」
マリカ「冗談冗談。とにかく本当に誰かが言ってあげなきゃよ。頼ってもいいんだよって。」
ミイ子「明日でも、一緒に九条くんのとこ行こうよ。」
マリカ「は?なんで私が、他の課の後輩のとこ行かなきゃなんないのよ?」
ミイ子「いいじゃん。面識はあるんだし。私の援護お願い!冷静に観察してただニヤッとする担当でいいから。」
マリカ「ミイ子は、ハートでゴリ押し係でもやるつもり?」
ミイ子「そうそう。」
マリカ「組み合わせとしては、最悪にして最強ね。いいわ、行こう。孤高の戦士を救いに。」
一人で頑張れる=強さだと思い込んでいませんか?
でも本当は、助けが必要なときにそれを認め、勇気を出して「助けて」と言い、素直にその手を受け取れる人こそ、本当の意味で強いのかもしれません。
誰だって、時には助けられる側でいい。
それは甘えでも、負けでもなく、ただの人間らしさです。
無理して笑っているあの人にも、「頼っていいんだよ」の一言が、心をふっと軽くすることがあります。
そして自分自身にも、その一言を向けてあげられたらいいですね。
あなたも、大切な人も、ひとりで全部抱え込まなくていいのです。
