何度か同じ話を書いておりますが、私が学生時代に活動しており、いまもまだ活動を続けている劇団というのは関西に数えるほどしかありません。
ましてや、学生時代に私が観に行っていた劇団となると遊劇体さんしかありません。

さて、「戀女房」。
遊劇体さんによる「泉鏡花オリジナル戯曲全作品上演シリーズ」の8作目だそうです。
私は「多神教」と「戦国茶漬」に続いて3作品目。

今回はなんと3時間半!
途中休憩をはさみますが、やる方も大変ですが、観る方も大変だと思っていたのですが、なんと3時間半、全く集中力切れることなく、一気に観ることができました。
でも「やる方」は相当大変だったと思います。

泉鏡花作品の絶妙な「おかしみ」は観る度にわかるようになり、そして、惹きこまれてゆきます。

舞台は明治後期から大正初期でしょうか。
今回は大火事の後の吉原・浅草に暮らす人々、根岸の伝統ある地主、それと産業振興に乗じて成り上がった成金の話。

あらすじを書こうとしましたが、なにせ3時間半のお芝居です。
割愛いたします。すいません。

主役の大熊ねこさん演じる「お柳」、高杉さん演じる「重太郎」、条さん演じる「お柳の姑 槇子」 村尾さん演じる「鳶の棟梁」 菊谷さん演じる成金社長「鷺坂」などなど、それ以外の方も含めて全ての登場人物のキャラクターがしっかり演じられていて、そこがしっかり演じられているからこそ、ググッと芝居の中に引きずり込まれてしまいます。

明治後期、伝統的な生活の中に少しずつ文明的なものが流れ込んでくる中で、鏡花は吉原や浅草で暮らす人々の在り様を愛していたのでしょう。人々の暮らしへの愛おしみがしっかりと描かれており、また、それを遊劇体さんの役者陣はしっかりと演じてくれていました。

シーンそれぞれもとても印象的なもので、アイホールの空気感をうまく使っていました。

特にラストシーン、大熊ねこさん演じる「お柳」と高杉さん演じる「重太郎」、この二人夫婦でして、根岸の家を追い出された(飛び出してきた)お柳を、家を捨てて重太郎は吉原まで追いかけてくるのです。(あらすじ書いて無くてすいません)
その最後のシーン、まるで隅田川に舟を浮かべて、新たな暮らしに漕ぎ出だすようなシーンは中でも特にすばらしく綺麗でした。

演技、舞台、照明、音効、それらすべてが100年前の戯曲に息吹を吹き込み、具現化している様は何とも形容しがたい素敵な世界を体現してくれていました。

最後に、大熊ねこさん演じる「お柳」が嫁ぎ先である根岸の家を飛び出てくる際の「啖呵」が実に切れがよく、それまで姑や小姑のいじめで鬱々としていた観客の気持ちをすーっと晴らしてくれる凄味のあるもので、とても素敵でした。

「芝居観たぞー」って感覚をどっしり残してくれる、やっぱり遊劇体さんはすごい!!

次はなんと10月にキタモトさんの新作をやるようです。
ものすごく楽しみです!

齋藤秀雄です。再び京都へ戻ってきました。-遊劇体「戀女房」