先週土曜日の話です。

昨年井上ひさしさんがお亡くなりになってから、一度は井上作品を観ておかなくっちゃと思っていたら。
なんと、「雪やこんこん」を人間座さんが上演し、私の後輩桑原さんが出演するというではないですか。
これはいかなくちゃならんと行ってきました。

おなじみ人間座スタジオですが、前列2列が桟敷席、後列3列が椅子席だったんですが、迷わず桟敷に座りました。
やっぱ、芝居は桟敷でしょ。
あの、ビリビリと足がしびれる感じ、体勢を変えつつ、一番良い形を探しながら芝居を観る感じはやっぱり大好きです。

さて、お芝居。
舞台は北関東のある温泉宿の芝居小屋。
中村梅子一座は、旅劇団。途中、衣装やかつらを役者に持ち逃げされながら、劇団員も6人に減り、それでもこの宿になんとか辿り着く。
中村梅子はなんとか最後の浅草にたどり着くまで劇団を維持したい。
元旅役者の女将と語らって、実は女将と梅子が実の親子で、その関係で温泉宿のオーナーがスポンサーになるからもう劇団は大丈夫という狂言を打つ。

ところがこの金欠病の旅劇団という話自体が、やはり元旅役者である番頭と劇団員が、女将を役者に戻すための狂言だったというお話。

どこまでが狂言でどこまでが実際の話か、静かに落ち着いていながらも、くるくるとめくるめく展開はさすがに面白い!
さらに、人間座の大ベテランの役者陣が皆芸達者ぞろい。

いわゆる旅芝居調のセリフ廻しの展開の中での演技は観ているより何倍も難しいのです。
しかも、役者の出入りが少ない分、舞台上でセリフが無くて見ている芝居もちゃんとやらないといけないから、これまた難しい。
桑原さんいい勉強になったのではないでしょうか。

最後、元旅役者の女将と番頭はそれぞれ役をもらい、口立てをしながら化粧をするシーンで終る。
一度舞台の味を知ったものは再び戻ってくるという話。

私のような3年しか演劇経験のない者でも、その気持ちはよく解ります。

「また、芝居をやりたい」

正直、今そう思います。
芝居と言う名の「嘘」の世界を、「嘘」だからこそ楽しめる舞台をやりたいと思います。
例えば、2時間の芝居であれば、その2時間は現実を忘れて楽しめ、そして、現実の世界にその余韻を残せる。
そんな芝居が出来たらどんなに素敵でしょうか。

最後に桑原さんお疲れ様でした。
桑原さんの個性が良く出たお千代さんでしたよ。