このお芝居、途中で休憩をはさんで2時間40分という大作でした。
でも、ちょっとも長さを感じないお芝居でした。

VOGAの「Ato-saki」が圧倒感満載だったのに対して、じんわりと優しく包み込むようなお芝居。

設定はどこかわからない国。
でも島国らしい。
どの家もプレハブみたいな同じ規格の家、後で作られた町。
もともと白い林檎の木がたくさん生え、マンゴーやバナナがたくさんとれた森だった。

ところがある日、その森は「お城」に住む人たちに開拓され、一面のあぶらやしの林になった。
いわゆるプランテーションか。
そのに住む人もほとんどは、そのプレンテーションで働いている、単調な日々。

そしてその町にはかつて「闘争」と呼ばれた反対運動があり、それは「林檎の木の闘争」と言われていた。
その国にも「孝行息子の街」という都会があり、町に住む若者の中にはその街で暮らすことに憧れを持っている者もいる。

さすが、飛び道具の大内さんワールドです。
物語はいくつかの家族を描きながら、プレンテーションの組合活動がとん挫してゆくさまも同時に描いてゆく。

役者陣はさすがに皆素晴らしい。
遊劇体、飛び道具、ニットキャップ、このしたやみなど京都を代表する錚々たる面々。
そして、演出がキタモトさん。

ここの役柄に、ひとりひとりの役者の人生が載っている感じがしました。
お話はとてもオーソドックス。
じっくりと体に入ってきます。
派手な演出はありません、でも、じっくり体に入って心を掴んでゆく。

すごい!ではなく、素晴らしいお芝居でした。

役者陣、特に大ベテランの皆さんが素晴らしかったです。
特に最初の章に出てらした人間座の菱井さんのなんというか絶妙な間。

そして、条あけみさんの酒好きでどうしようもないけど情に厚いおばあさんは特筆です。

お話は静かに進み、終ってゆきます。

ラストシーン。
隣の新婚夫婦から自転車を借りて、散歩に出る夫婦。
おじいさんは足を悪くしているので、条あけみさん演じるおばあさんがこいで行く。

港につく。
今まさに出ようとしている船に、「あんた世界を廻りたいっていってたよね」といいながらまるで散歩の延長のように自転車でむかおうとする。

そのシーンで、気がついたら泣いていました。

なぜ僕は泣いたのか。
さっき、やっとわかりました。
歳をとりながら、長く同じ町で暮らしながらも、今、まさにその世界から飛び立とうとする老夫婦に自分を重ねていたんだと。

なんだか散漫な感想になってしまいました。
ちゃんと消化するにはもう少し時間が必要なのかもしれません。

mokichi4516こと齋藤秀雄の京都単身赴任生活-府立文芸会館