いったいこの3時間のお芝居を創るために、このVOGAの方たちはどれくらい膨大な時間と労力をかけたのだろうか。
それを思うと、驚きを通り越して、尊敬の思いでいっぱいです。

僕はVOGAのお芝居を観るにはあまりに予習が足りなかったようです。
まるで、普通のお芝居3~4本分観たくらいの怒涛の情報量。

3時間という長さだけではなく、そこに盛り込まれたストーリー、照明、舞台、映像、音響、そして、何よりシンクロする役者の集団での動き。
さすが、維新派の流れを組む人たちだなと思います。

1945年8月15日すなわち、太平洋戦争配線の日を挟む「あとさき」が舞台。
ニューギニアで戦う79連隊、そこで戦う兵士、そして内地で帰りを待つ女達。
そして、終戦。
随分してから、現地人に助けられたと言って帰ってきた夫は・・・

まだ公演中なのであらすじをなぞるのはこれくらいにします。

実は、私の祖父は沖縄戦の生き残りでした。
米軍の捕虜になり、終戦後随分経ってから帰国した時、自分の墓が立っていたと言います。
何度か戦争の話をしてほしいと祖父にねだりましたが、元来気の小さい祖父はほとんど語ることなく死んでゆきました。それほど悲惨な体験だったのでしょう。

家庭の分だけ悲劇があり、そして生き残った人たちのそれぞれの胸に決して打ち消すことのできないそれぞれの想いがあり、それでも時は流れ、戦争から少しずつ遠ざかってゆく。

「残像」というセリフが印象に残りました。

照明も映像も音響も舞台もどれもすばらしいものでしたが、このお芝居でもっとも評価すべきは「役者」に尽きると思います。

随所に盛り込まれた集団でのムーブはとてもシンクロしていて、どれも情景や心象をありありと表現するもので、ずしんと心に響いたり、やんわりと寂しさを奏でたり、舞台の上から感情のうねりを起こしてくれました。

終った後、正直ぼーっとしてしまい、楽屋も訪ねずふらふらと家路についてしまいました。
正気に戻るまでずいぶんと時間がかかりました。

ただ、今思えば、途中で退席するお客さんがいましたので、本来であれば途中で休憩を入れるべきだったかもしれません。まあ、賛否あると思いますが。

福田君と滝沢さんの演技はすばらしいものでした。
セリフのひとつひとつ、動きのひとつひとつが心にぐっと来ました。

最近、もう少しお芝居は簡単に創るのが、主流だと聞きます。
一方でここまでいろいろとものを盛り込んだお芝居もあるのですね。
ただ、これだと、あまりに公演を打つこと自体に相当な労力がかかり、頻繁には公演を打てなくなります。
それは、どう考えたらよいか、まだ私には勉強不足で解りません。

もう少し考えてみることにします。