悪い芝居はもはや関西で紹介する必要がないくらい有名になりました。
西一風OBの山崎彬君の劇団。山崎君と言えば今年のOMS戯曲賞佳作受賞作家。
なお、悪い芝居とは『悪いけど、芝居させてください。の略』なんだそうです。

さて、この「キョム!」なんと、9日間11ステージというロングランでして、すでに観に行った方からかなり良い評判を頂いておりましたので、かなり期待していきました。
その期待を超えて、とても面白いお芝居でした。

設定は精華小劇場そのもの。その精華小劇場に、越年のため一時的にホームレスが多数住んでいて、そのうちの一人の松本さんが殺され、劇場型の操作が始まるという設定。ところが話は途中で、やはりホームレスである元劇作家山本による「松本さんを殺す」お芝居に変化してゆくというもの。

なにせ、パワフル、全編実に計算された展開の中で、折り重なるようにストーリーが進んでゆく。役者はほとんどずっと舞台に出て展開に沿って芝居をし続けてているという悪い芝居独特の手法は、群衆演劇の進化形とも言うべきスタイル。
観ている側も一時も気を抜けない。

特に、役者は大変。何せ、2時間を越える芝居の中で、ほとんどの役者はずーっと演技し続けている。
終ったあと思わず「すっげー!!」と声を漏らしてしまいました。

ただ、私にとって(あくまで私にとって)残念だったのは、途中で客としての集中力がちょっとだけ切れるシーンがあったこと。それは、このお芝居にとって不可欠なシーンなのですが、ホームレス元劇作家山本が「演出」として客に語るシーン。ここが前半から後半への切り替えなのですが、私は残念ですが、ここでちょっと集中力が切れてしまった。
もちろんこの「演出」は役なのですが、急に客に語り始めたため、「あれ?」と一旦集中力が切れてしまいました。もし、ここを本来の演出である山崎くんが語っていたら、また全く違う展開になったのかもしれません。まあ、おじさんが展開についていけてなかっただけです。

もちろん、これはとても些細なことで、このお芝居がすばらしいお芝居であったことは変わりません。

mokichi4516の過ぎ去った青春の思い出-精華小劇場

遊劇体のキタモトさんはそのブログで(もちろん高い評価をした上で)「<死>を取り扱うにはゲーム性に過ぎるのでは?」と評していました。確かにそこは少し気になりましたが、そうすることで、今の若者の「死」を軽んじる傾向に一石を投じているのだと私は感じました。

いやはや長い文章になりました。
それくらい、面白いお芝居だったということです。

さて、この「キョム!」実は来年東京で上演されます。
1月14日~16日下北沢・駅前劇場でかかります。
東京近郊の皆さん、ぜひともご来場ください。