行方不明の時間                          茨木のり子

 

人間には

行方不明の時間が必要です

なぜかはわからないけれど

そんなふうに囁(ささや)くものがあるのです

 

三十分であれ 一時間であれ

ポワンと一人

なにものからも離れて

うたたねにしろ

瞑想にしろ

 

不埒(ふらち)なことをいたすにしろ

此処で

突如襲う 笑い

笑いながら窓の外へ視線を、

今日の青さに

登る

笑い。

 

 

詩は続くのだが、