もう日にちが変わりましたが、寝る前にぜひこの曲について書きたいと思います。

Aníbal Troilo作曲、Homero Manzi作詞の「Barrio de Tango」。

これまでも「タンゴの街」と日本語訳されています。

ちなみに、横浜はじめ世界中にある中華街はスペイン語で「Barrio Chino」なので、「タンゴ街」でも悪くはないですね。

Barrioはある区域の正式名称に使われることもありますが、「ここは俺のシマだ」の「シマ」ような意味でも使われます。

貧しい地域やごろつきが多くいそうな地域を指してBarrioと言われることもあります。

作詞したHomero Manziは、9歳の時にブエノスアイレスに母親と引っ越し、歌詞にも出てくるポンペイヤで少年時代を過ごしました。

移民の多いこの地域は当時貧しく、多くの住民は屠畜場や精肉工場で働いていたそうです。

大人になったManziは学校教師になりましたが、政治的活動をしていたために政府から疎まれていました。

1930年には、短期間ですが牢屋に入れられ、更に教師の仕事を追われたそうです。

そのため、数年前からタンゴの作詞をしていたので、そちらに転向したとか。

ポンペイヤには鉄道の駅があり、この歌では駅で繰り返される「別れ」と「人々の秘密」がManziによって結び付けられています。

主人公の男性は、どうやら意に反して「昔、愛した女性を置き去りに」したとあります。

年月を経てもまだ彼女を想い、苦しんでいるが会おうとしない、そこにも何か、彼女にも言えなかった秘密があったのではないでしょうか。

もしかすると政治的な背景があり、彼女のために去ったのかも・・・と私は想像してみるのでした。

帰郷もできずに、記憶の中で彼女や街、全てを恋しがっているのだから。

あなたは、どう感じますか??

 

 

Barrio de Tango -タンゴの街-         1942-12-14

 

作曲: Aníbal Troilo, 作詞: Homero Manzi,

楽団: Aníbal Troilo, 歌手: Roberto Goyeneche

訳詩: Moka

 

街のひとかけら 遥かポンペイヤ

眠り込んだ 平地のほとり

外灯揺らめく踏切

「さよなら」のミステリー 夜汽車に乗せ

犬たち わんと月に一吠え

恋人がひそむ門の陰

湖の主が奏でるリズム

遠くの声はバンドネオン

 

タンゴの街 月と秘め事

懐かしの通り あのままかい?

古き友よ もう忘れていたよ

変わっちまったかい?今どこで何を?

 

タンゴの街よ あの子はどうした?

フアナ 愛しきブロンド娘

思い出しあえぐ この胸のうち

置き去りにした あの午後からずっと

 

タンゴの街よ 月と秘め事

記憶でまた会おうじゃないか

 

囃し立てる口笛 あの曲がり角

上がり札で盛り上がる酒場

秘めた過去に色褪せた隣人(ひと)

汽笛に駆け出した日は遠い

 

甦るお前との夜 タンゴの街

荷馬車たち 寝床に戻れば

月がはじく ぬかるみのメロディ

遠くの声は バンドネオン

 

タンゴの街 月と秘め事

懐かしの通り あのままかい?

古き友よ もう忘れていたよ

変わっちまったかい?今どこで何を?

 

タンゴの街よ あの子はどうした?

フアナ 愛しきブロンド娘

思い出しあえぐ この胸のうち

置き去りにした あの午後からずっと

 

タンゴの街よ 月と秘め事

記憶でまた会おうじゃないか

 

 

 Youtube「Barrio de Tango」原曲↓