フランシスコ・カナロのオルケスタが演奏した「Invierno」は

メキシコでも日本でもミロンガでよくかかる曲です。

 

「冬」という意味を持つこの曲は、1937年8月19日に発表されました。

忘れてはいけません・・・アルゼンチンの8月は冬です!⛄

 

「Invierno」の作詞家Enrique Cadícamoは、1900年7月15日にブエノスアイレスで生まれました。

そう、彼は冬生まれ・・・なんですが、ブエノスアイレスでは冬でも滅多に雪が降りません。

ブエノスアイレス史上、初めて積雪が観測されたのは1918年6月22日だそうです。

Cadícamo、18歳の時です。

 

氷点下に慣れていないブエノスアイレスの人たちは、雪に興奮したでしょうし、恐れも感じたことでしょう。

 

【写真】ブエノスアイレス史上初めての積雪(1918年)※ウィキペディアさんよりお借りしています。

 

大人になってから、初めて見る真っ白い地元の街並み。

この経験は、現地の音楽家達にとっても大変貴重な「雪(厳しい冬)」の経験になったようで、

この時の雪がモチーフになったタンゴの曲も存在します。

 

そして、次の積雪は約90年後の2007年7月9日です。

この曲「Invierno」は”Volvió...” (再び冬だ)という歌詞で始まっていますが、Cadícamoにとって、この曲「Invierno」の歌詞を書いた時点では

 

1918年の積雪が人生で唯一の雪体験だった可能性があります。

 

歌詞に出てくる雪景色や霜の情景は、実際の積雪でなく精神面での「冬」ではないでしょうか。

冷たく孤独で過酷な季節の再到来。

「それまでどうだったのか?」の説明が一切ないにも関わらず、「独りではない温かい時期」があったのだろうと聴く者に想像させ、突然訪れた冬との大きな温度差を感じさせてくれます。

1918年の積雪と主人公の過去の「孤独な"冬"の時期」が重なり、詩的で物悲しい印象です。

 

美しいメロディーに明るめの音調のため意外かもしれませんが、これはかなり寂しい曲です。

この短い歌詞に込められた悲しみと孤独を感じながら、温かい場所でホットティーでも飲みながら聴いてもらえると嬉しいです。😊

 

Invierno」 ‐冬‐ (1937)

作曲:Horacio Pettrossi

作詞:Enrique Cadícamo

オーケストラ:Francisco Canaro

歌:Roberto Maida

 

おかえり

真っ白な雪の家具

氷の絨毯が光る

愛なき暮らし

深みにはまり

目もそらせずに

震え狂うこの孤独

 

ごらん

胸に吹きおろす

凍てつく風に もう

泣けてくる

心の中に

冷たい霧が

留まる季節

 

Youtubeで「Invierno」を聴こう♪↓↓

FRANCISCO CANARO & ROBERTO MAIDA: INVIERNO (TANGO CON LETRA DETALLADA) (youtube.com)