いやはや、またまたやってきました…毎年恒例の「大雪山縦走」の時期が。
毎年毎年、面倒くさ…いやいや、違った。
楽しみだな〜。ウキウキするな〜。今年は何処を歩こうかな?
いやいや待て待て。今年は「歩こうかな?」では無く、「歩けるかな?」と問うべき体力的現状ナノだ。
山菜シーズンが終わってから、マトモに山を歩いてすらいない拙者に、歩ける大雪山系の山があるのか?
暑いからと言って、「歩荷訓練なんかせずに、沢で泳ぎたいな〜」とかほざいてる場合では無いノダ。
可及的速やかに…体力・筋力・長州力の復活を目指してトレーニングに取り掛からねばならぬ。
…と、縦走一ヶ月前に突然気がついて、慌てて「手稲山」に歩荷訓練に向かったものの、「平和の滝コース」のガレ場で、トウキビやら灯台ツブを炭火で炙って、ごくごくプッハーと言いつつ、悶絶しのた打ち回っているだけだったりして、相変わらず何の反省の色も見えないのであった。
ま、アレだ。標準コースタイムなんてものには頓着せず、ゆっくり歩けばイイのだ。明けない夜が無いように、止まない雨が無いように、辿り着けない頂上は無いノダ(いや、あるだろ?)。
今回の山行には、新しい装備品がいくつか加わる事になった。
先ず、発寒イオンに入ってるmont-bellで画期的構造の浄水器を発見した。
今まで濾過には手押し式や重力式など、濾過器を通過させる為の圧力(重力)が必要だったワケだが、その力学的発生源は我々ニンゲンに他ならなかった。
だが、長い行程を経て辿り着いたキャンプ地でヘロヘロになっているのに、力仕事なんか御免だ。
この商品もニンゲンの力を必要としつつも、疲れ切って辿り着いたキャンプ地でも、ふふふ〜ん♪などと鼻唄を奏でながらでも、楽々と飲み水を生成する事が可能ナノだ。
その仕組みは至って単純且つ明解で、直径8cmぐらいのプラッチックの筒の二重構造で構成されているだけナノだ。水鉄砲やトコロテンを押し出す道具を想像してもらうと分かり易いかも知れない。
外側の筒に沢水なり沼水なりを掬い、その容器よりも僅かばかり小さな内径を持つもう一つの筒を押し込んでやると、内側の容器の底についた浄水器フィルターを浸透した飲み水が、僅か12〜3秒で内側の筒の中に溜まるという仕組みだ。
歩荷訓練で訪れた「手稲山」のガレ場下にある…通称「命の泉」という伏流水で試してみたが、ものの10分程でプラティパス(水筒ね)一本分の飲み水を作れた。
ただ、この伏流水は…拙者は濾過なんて七面倒臭い事はせずに、普段はそのまま飲んでいるし、「何十年も飲んでるけど、何も問題無いわよ」と言い切る高齢のお婆さんも知っている。
札幌市が管理する自然歩道上にある伏流水故に、建前上の注意喚起をした看板があるが、地中のフィルターを通過した伏流水は沢水や雪渓直下よりも安全だと、個人的には思う。
ビバークをも厭わない山行をしていると、ちゃんとした水場を利用出来る事は稀であり、歩いてる途中に見つけた流れ出しや沼で飲み水を得る事も多い。
今まで使っていた浄水器は、フィルターが小さ過ぎて役に立たなかったり、大層な肉体労働が必要だったりした。
雪渓が消えた秋の大雪山縦走では、飲み水の確保は看過出来無い重要な問題でもある。
2つ目は、モノキュラー(単眼鏡)である。
以前は羆ちゃんの観察用(捜索用)にビノキュラー(双眼鏡)を持参していたが、どんなに小型でも双眼鏡というやつは重くて難儀したノダ。
ならば、2つを1つにすれば良くね?という至極単純な発想に行き着いたワケだ。
ま、そこに行き着くまで、二十年ぐらいかかってしまったのだから、しょうが無い。
購入したケンコーの単眼鏡は、小さいくせに7倍から21倍のズーム機能もあり、とても軽い。レンズは半分になったが、重さは3分の1も無い。
このサイズと重さならば、ザックのショルダーストラップにでも引っ掛けておける。
しかし、この…単眼鏡ってのは、アレだな。片眼で覗き込んだりすると、 スナイパーライフルに付いてるスコープを連想してしまって、ちと困るノダ。
視界に鹿を捉えようもんならば、「one shot.one kill」と呟きかねないではないかっ(映画…[山猫は眠らない]を見てるヒトは解る筈)。
3つ目は、今この日記を書いてるスマホである。
いやあ〜今まで拙者は頑なにガラケー派だったもんな〜。
スマホはポケットに入れて持ち歩くには重く嵩(かさ)張るし、根っからのアナログ人間の拙者には明らかにオーバースペックな代物だった。
しかし、ガラケーが2023年で使えなくなりますよと、auが再三再四…嫌がらせかと思うぐらいにDMを送りつけて煽ってくるし、あの…サンドウィッチマン(お笑い芸人ね)もスマホにしたそうだし、現実問題として閲覧出来無いwebページが増えて、高校野球の組み合わせを調べるにも苦労する始末。
オマケにガラケーのバッテリーもヘタって、丸一日保たないようになるし、余りにも煩わしいので思い切ってケータイを捨ててしまおうかと思い始めた矢先、最新機器をタダでくれるというではないか。
食べ放題とタダには、反射的に反応してしまう悲しい性を背負った人生を歩んで来た。
オマケにauショップにわざわざ出向いて、ちんぷんかんぷんな専門用語を並べ立てて客を煙に巻こうとする店員の相手をしなくても良いというではないか。
昔、機種変しに出向いたショップの若いキレイなオネイサン店員の対応に業を煮やした拙者は…「君の言ってる事の半分も理解出来無いのは、拙者の理解力が不足してるのか、それとも君のマニュアル通りしか喋らない粗末な語彙力のせいなのか?」と絡んだ事のある拙者だ(コラコラ)。
融通の効かないアタマの堅い奴と、偉そうに自慢話をする奴が大嫌いな拙者には「融通の効かない店員と対峙しなくて良い」というのは、スマホを決断させるには充分な説得力のあるセールスポイントだった。
というワケで、スマホを手に入れたものの…マトモにカメラ機能の使い方すらもわからぬまま、大雪山に挑む事となり山行中に登山道の真ん中でスマホを睨んで途方に暮れる…なんて事が何度もあった。
さて、装備を整え順調に食糧など買い出しも進んだが、肝心の行き先だけが決まらなかった。
職場のラーメン通に、行くべき旭川ラーメンの店も教えてもらい、山に持って行くバーボンウイスキーの銘柄も「メイカーズ・マーク」に決まったのに、行き先だけが決まらなかった。
「大雪山」と一言に言っても、神奈川県に匹敵する山域面積があるし、登山口は両手では足らないし、縦走オプションも何十通りも考えられる。
但し、入山と下山場所を異にする縦走に於いては、公共交通機関の有無が計画立案の障害となるのは大雪山と言わず北海道の宿命みたいなものだ。
ま、困った時は…とりあえず、「天人峡」に向かえばなんとかなるものだ。
アソコならば、温泉もあるし「天人峡避難小屋」と拙者が(勝手に)呼ぶ嘗てのバス待合小屋もあり前泊にも困らない。
浮ついた観光客や、初心者向ハイカーも寄りつかないし、この気温ならば早生のキノコにも出会えるかも知れない。
現在、「天人峡」に直接アプローチ出来る公共交通機関は無い。
「旭川駅」と「旭岳温泉」を繋ぐ1日4便のバスを途中下車して、7・5kmの道道天人峡線を徒歩で向かうしか無い。
嘗ては、「旭岳温泉」に向かうバスが立ち寄ってくれたが、登山基地としてだけでなく近代的観光地として成功した旭岳温泉と比べ、嘗て栄華を誇った巨大温泉観光ホテルは老朽化甚だしく、昨年…遂に閉館してしまった。
現在は「しきしま荘」という小規模な温泉宿が一軒だけ細々と営業をしているのみだ。
そんな寂れた温泉街に観光客は寄り付かず、「天人峡から上がってくる奴は、本物のバカか正真正銘のドMだ」と言われた登山ルートを歩くマニアックな登山者も稀だ。
故にバス便が廃止されたのも、納得せざるを得ない。
でもな〜、拙者が「DEEP大雪山」と呼ぶ大雪山最深部に最短でアプローチ出来るし、コースはバリエーションに富んでいるし、植生遷移を体感出来るし、泉質の素晴らしい温泉はあるし、個人的には気にいってるんだけどな〜。
出発当日、夜勤明けに素早く準備して朝の通勤ラッシュに揉まれながら、バスセンターへ。
大仰な荷物を背負って地下鉄に乗り込むと、訝しげな視線に晒されるが、案外…快感だったりする。
これから仕事に向かう人達を横目に遊びに行く優越感は堪らない(むひひひ…)。
中には好奇の視線を送るヒトも居る。きっと、山をやってるヒトなんだろうな。
「あんなに大きなザック背負って何処行くんだろう?大雪山かな?日高かな?紫外線焼けしたザックはベテランなんだろうな。テントポールが見えるからテント泊かしら?縦走かな?アタシも仕事なんかほっぽり出して、一緒に行きたいなぁ」(妄想中)と、あのOLさんは思っているに違いない。
旭川行きの都市間バスに乗り込むと、コロナ対策で「バス中で飲み食いはするんでない」と書いてある。
何をホザくか、こちとら夜勤明けで飯も食わず、ゴクゴクせずにいるのだ。
仕方無く、二人掛けの席の隣りに置いたデカザックの陰に隠れて、クラシックを音がしないように開け、悶絶したいのを我慢しつつ、焼き鳥を摘む。
しかし、今日は舗装路歩きが3時間あるから、呑みすぎは自重しよう。
旭川に到着すると、駅にデカザックをデポ(Deposit)して、駅に直結するイオンモールに買い物に向かう。
荷物をコインロッカーに預けなくて良いのか?と疑問に思うかも知れんが、ナニ…30kg近いザックを持ち上げられるヒトは、なかなか居ない。背中に背負うにもコツが要るノダ。
イオンモールで縦走用の食糧(日保ちしない野菜やチーズやバケット)と、ビールを調達する。
今回は、種類の違う5本を買う。
つまり、毎日違うビールが飲めるという事だ。
「今日はテン場に着いたら、何を飲もうかなぁ?ルンルン♪」がモチベーションになるという鋭い作戦ナノだ。
サッポロ「クラシック」を筆頭に、サントリー「プレミアムモルツ 香るエール秋の芳醇」、キリン「一番搾り」、「ヱビスビール」、SE7EN限定「ヱビスビール プレミアムセゾン」である。
このラインナップを見て…「おぉ」と思った方は、かなりなビール通だろう。
因みに、拙者が大好きな「琥珀ヱビス」は下山後に発売になったので、残念ながらラインナップからは漏れた。
下校途中のJKに混じって「いで湯号」に乗り込む。途中、旭川空港に寄り登山の格好をした乗客を2名乗せ、旭岳温泉に向かってひた走る。
「国立公園入口」というバス停で下車し、舗装路を「天人峡」に向かって歩き始める。殆ど車は通らない。やがて、柱状節理が見え始めると1キロ近い長さのトンネルが待ち受ける。
1キロって、通過すんの20分近く掛かるという事だ。勘弁して下さい。
トンネルを抜けると「クワウンナイ川」に掛かる橋を渡る。
最後にもう一度短いトンネルを抜けるて「天人峡」に到着した。
なんとか、暗くなる前に到着出来た。
さあさあ、露天風呂に浸かってゴクゴクしようぜぃ。
いそいそと「しきしま荘」に向かった拙者は、信じられないモノを見たノダ。
つづく。
写真1 鄙びた風情の天人峡温泉街、殆ど廃墟。
写真2 溶岩が冷える時に縦に亀裂が入るのが柱状節理。天人峡名物でもある。
写真3 いつかは遡行したい…クワウンナイ川