彼とはその後も何度かデートに行きました。
あれは、博物館の後日だったかな。
今度はご飯を食べに行こうという事になって、
お見合いの日に行った料理屋がすごく素敵なお店だったので、
次はどこに行くのか正直期待はありました。
彼にお店決めを任せている…当時20代の私はその事にどれだけ感謝できていたかな。
婚活で行き先を決めてもらうって結構ありがたいことですよね。
お互いが受け身同士である事もよくあるんで。
私も例に漏れず元々が受け身な事もありますが、当時はこちらからの提案は失礼なのではないかとか、立ち振る舞いの正解が分からずにデートの行き先は提案できずにいました。
そして……彼が指定した場所は……あれ?
色あせたテントの軒先をくぐると、コンクリートが剝き出しになった床、汚れた机、皺の入った紙のメニューもマイナーなエスニック料理が中心のもので、かなり人を選びそうなお店でした。
客層は日本人というよりも日本で働いている外国人が故郷の味を求めて集まるような雰囲気でした。
好き嫌いはほとんどないのですが、甘味が強めの料理はあまり口に合いませんでした。
これって……どう振る舞うのが正解なんですかね?
私は珍しいお店に来れて喜んだふりをし、料理も笑顔で美味しいふりをしました。
だって、彼は一生懸命悩んで決めてくれたお店なのだろうし、そう思ってました。
でも、どこかのタイミングでぽろっと彼が言ったんです。
「この前の博物館も、さっきのお店も喜んでもらえて良かったよ。
仕事柄、有名なお店はあらかた行きつくしてて、ローカルニュースに載せるのに普段行かないようなお店も取材を兼ねて行ってみたかったんだ」
------えっ、って思いました。
そうなんだぁ、と笑顔で相槌は打ちましたが。
つまりこれは、仕事の延長、ついでだったって事?
相手を喜ばそうとか、悩んで決めたとかそういうものではなかったんだ。
……私は、もし仲良くなろうとしている相手がいて、美味しいお店とか知っていたら、相手にも喜んでもらいたいから、自分が知っている中で一番おすすめのお店を選ぶ。
知った事のないお店に行くとしても、相手も楽しめるような所を選ぶ……。
私、勘違いしていたんだ。
------こういう人もいるんだ………。