劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師(2025 日本)

監督:藤森雅也

脚本:阪口和久

原作:尼子騒兵衛

キャラクターデザイン:新山恵美子

アクション作画監督:関根昌之

音楽:馬飼野康二

主題歌:なにわ男子

出演:高山みなみ、田中真弓、一龍斎貞友、関俊彦、大塚明夫、岡野浩介、間宮康弘、森久保祥太郎、代永翼、成田剣、保志総一朗、渋谷茂、神奈延年、置鮎龍太郎、鈴木千尋、小田敏充、渋谷茂、金丸淳一、山崎たくみ、東龍一、大西流星、藤原丈一郎

①「対象外」でも楽しめる映画!

こういう作品は基本的に、私のようなおっさんは対象ではないと思うのですよ。

第一にはやっぱり子どもたちが対象であり、あるいは子どもの頃に観て一緒に育ってきたようなファン、更には熱心な(特に女性の)大人のファンも多いようですが。

おっさんである私は世代でもないし、キャラクターにハマるような見方をするでもないし、最初から「よしてもらってない」観客だとは思うのです。

私が楽しもうがそうでなかろうが、本作の価値には何の影響もない……という。

 

なのだけど! まあ、そういう「招かれざる客」であるからこそ、客観的に評価できるというのもあると思うので。

せっかく娘に連れてってもらったので、短い感想を書いておこうと思います!

一言で言うと、すごく面白かったです! 上映時間、普通に退屈せずに夢中になって楽しみました。

 

子ども向けと言いつつ、ストーリーは割と複雑です。

複数の陣営の思惑が入り混じり、結構大人っぽい陰謀が進行して、意外とシビアな駆け引きが繰り広げられます。

互いに睨み合う陣営のバランスが崩れて一色触発になり、その影で忍者たちが暗闘して、大規模な戦争を回避しようとする……という、本格時代活劇のフォーマットになっています。

なので本当に、普通にストーリーに見応えがあるんですよね。当然のように、子供騙しになってない……というか。

大量のキャラクターは全然覚えきれないけど、ストーリーを追う上では問題にならない設計にもなっているので。僕のような余所者であっても、ちゃんと入り込むことができました!

 

②重力と痛みと思いを感じるバトルアクションシーン

この映画でいいな!と思ったのは、忍者アクションの描写です。

すごく「ちゃんとしてる」のですよ。観ていて隙がない。

キャラ同士の適当なバトルではなく、ちゃんと忍者同士が武器を持ってぶつかり合う肉弾戦になってる。

 

アニメで割とよくあるじゃないですか。なんかバトルしてるんだけど、実のところ何をしてるんだかよく分からないような、ふわっとした描写。

刀で斬ってるはずなのに一向に「体が切れる」ことはなく、ただ衝撃で吹っ飛ぶだけだったり。

特に飛ぶ能力もないはずなのに、なぜかずーっと空中戦で戦ってたり。

そういうのがない。重力を感じ、痛みを感じる。リアリティある戦いになっています。

 

天鬼vs6年生のシーン。

また、雑渡昆奈門vs利吉たちのシーン。

いずれも、刀が触れれば傷ができ、血が流れる。叩きつけられれば息が止まり、しばらく動けない。空中で攻撃を受ければ下に落ち、落ちれば大きなダメージを受ける。

そういう、納得感ある戦いの描写です。

 

それでいて、決して子どもが引いてしまうような残酷さを感じる戦いにはなっていないんですよね。

上の戦いはいずれも「実力差のある戦い」で、強い方がちょっとだけ手加減をしている。

空中で攻撃した相手がそのまま落ちて死なないように、木に叩きつけてから落とす…とかですね。

本気で相手を退けつつ、でも殺しはしない。そんな配慮が劇中の実力差の表現としても理にかなっていて、なおかつ「忍たま」らしさのキープにもなっているという。

③なおかつ、子どもがちゃんと楽しめる!

結構リアルに「殺傷能力のある武器を持った戦い」を描き、「戦争がもたらすトラウマ」までも描きつつ、子どもが安心して楽しめる「忍たま乱太郎」らしさも損なっていないのはすごいと思うんですよね。

ここまでリアルだと、デフォルメされた乱太郎たちのギャグ・パートが浮いてしまいそうなものだけど。

それほど浮いてないんですよね。そこはやっぱり、迫力あるバトルの部分でも上記のように、きちんと「らしさ」を意識して描いているからだと思うのですが。

 

観ていて感じるのは、たとえシビアな戦国時代でも、子どもたちが元気で活発で、ふざけたりするのは現代と変わらないはずだし。

戦いに身を投じる忍者であっても、優しさだってもちろん持ってる。

そういう、当たり前の人間らしさが浮かび上がってきます。

 

まあ、基本ファン・ムービーなので。もちろんその作り方で正しいので、一般的な広がりを得るのは難しいかもしれないけど。

あなどれない、よくできた時代劇アニメ映画だと思いました。機会があればぜひ!

 

 

これも結構本格的な「合戦映画」でした!