Ghostbusters: Frozen Empire(2024 アメリカ)

監督:ギル・キーナン

脚本:ギル・キーナン、ジェイソン・ライトマン

製作:アイバン・ライトマン、ジェイソン・ライトマン、ジェイソン・ブルーメンフェルド

製作総指揮:ダン・エイクロイド、ギル・キーナン、ジョアン・ペリターノ、エイミー・カープ、エリカ・ミルズ、エリック・ライヒ

原作:ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス

撮影:エリック・スティールバーグ

美術:イブ・スチュワート

編集:ネイサン・オーロフ シェーン・リード

音楽:ダリオ・マリアネッリ

出演:マッケナ・グレイス、フィン・ウルフハード、ポール・ラッド、キャリー・クーン、クメイル・ナンジアニ、セレステ・オコナー、ローガン・キム、ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、アーニー・ハドソン、アニー・ポッツ、ウィリアム・アザートン、エミリー・アリン・リンド

①かなり渋滞気味!

夏のニューヨーク。フィービー(マッケナ・グレイス)を始めとするスペングラー家の面々は、ゴーストバスターズとしてゴースト退治に大忙し。しかし昔の因縁でゴーストバスターズを毛嫌いするウォルター・ペック市長(ウィリアム・アザートン)によって、未成年のフィービーは活動を止められてしまいます。傷心のフィービーは、メロディ(エミリー・アリン・リンド)という女のゴーストと友達になります。一方、オカルト骨董屋を営むレイ(ダン・エイクロイド)のもとに、ゴーストを封じた玉が持ち込まれます…。

 

「ゴーストバスターズ」最新作。2021年の「ゴーストバスターズ/アフターライフ」とキャラクターの共通する続編になります。

「アフターライフ」はオクラホマ州の田舎が舞台だったのですが、今回は元祖の舞台であるニューヨークに場所を移し、「ゴーストバスターズ」らしい展開になっています。

 

前作「アフターライフ」で登場したキャストたちが全員続投。旧シリーズのキャストも(現在可能な限り)全員揃って、更に今作の新キャラも加わり、実に賑やかになっています。

…というか、さすがに登場人物が多すぎ。なんかいろいろと渋滞気味。

いろんな人を出して活躍させねばならないので、展開が遅い。いろんな人をとっかえひっかえしたドラマが延々と続いてしまい、なかなか派手なお化け退治にならないので、かなりじれったいです。

 

②面白いのはフィービーのところ

思ったのは、面白いのはやはり主役であるフィービーをめぐるシーンなんですよ。

誰よりもゴーストバスターズに情熱を燃やすフィービー。才能もある。でも未成年だからという理由で、やりがいを取り上げられてしまう。

傷心のフィービーが心を通わせるのは、ゴーストであるメロディ

孤独という共通項を持つフィービーとメロディが、親密になっていく…。

思春期の普遍的な悩みを的確に捉えていたし、それをゴーストの孤独に重ねるのも巧み。感情移入しやすいドラマになっていたと思います。

 

それを支えるのは、やはりマッケナ・グレイスの瑞々しい魅力です。

女優としての彼女の姿を見ると、本当に美しいのですけどね。映画の中では野暮ったいティーンエイジャーになり切って、等身大の説得力ある活躍を見せてくれます。

 

「ゴーストバスターズ」は昔から子供に人気なのだけど、考えてみれば元々は「大人しか出てこない」シリーズだったんですよね。

「アフターライフ」で子供主人公のジュブナイルに舵を切ったのは、だから結構な冒険だったと思うのだけど。

でも、何の違和感もない。むしろ、シリーズがもともと持っていたジュブナイル性をはっきりさせた感まであります。

その成功を支えたのが、マッケナ・グレイスの魅力と実力。

 

フィービーを囲む兄のトレヴァーやオタクの友人ポッドキャスト、ラッキーといった若い面々も魅力的で。

「アフターライフ」も今作も、懐かし要素ではなく、若い力が支えていると言えると思います。

今作では、いかにも「懐かしいでしょう?」って感じで出てくる旧メンバーたちが、邪魔に感じる…というところまであったんですよね…正直言って。

それもバランスだと思いますが。とにかく今の本シリーズを支えてるのは明らかにフィービーであり、マッケナ・グレイスであると思うので、もっと彼女を前に押し出したストーリー構成にした方が、よりまとまりがいいように感じます。

 

(これは蛇足なのだけど、本作のポスタービジュアルはどれを見ても「さして活躍もしないポール・ラッド」が中心にいて、主役のマッケナ・グレイスは端っこにいるだけ。「アフターライフ」もそうだったけど。フィービーだったら絶対にイラっとくることを、映画それ自体がやっているというのはどうなんだろうな…。)

③最後は雑!

「なんか凄い奴」が封印されてるっぽい呪物が早々から出てきて期待を持たせるのだけれど一向に出てくる気配なく、封印が解かれるのは映画も終盤

予告編やCMでやってる「真夏のニューヨークが氷づけに!」という楽しそうな展開が出てくるのはもう終わり近くです。

パニック描写も一瞬だけで、話はあたふたと最終決戦に突っ込んでいくことになります。

 

フィービーの傷心や、メロディとの交流をめぐるじっくり丁寧な描き方は、良かったと思うんですよ。そこは、すごく好きなポイントではあるのだけど。

でも、いかんせん全体のボリューム感のバランスが悪い。

「頭から順に語っていったら結果的に時間がなくなりました」って感じで、最後の方はかなりざっくり。駆け足になっていく。

せっかくじっくり、ゆっくり描いていたフィービーの物語も、最後はなんかバタバタっと強引に畳んでしまった印象です。なんというか…雑。

 

満をじして登場した邪神ガラッカはさして強くもなく、「ファイアマスター」がやっつけるのも最初から言ってる通りなので意外性はない。

駆け足のハッピーエンドで、最後はお約束の市民の「ゴーストバスターズ」コールで大団円。

でもなんか、最初の方と最後の方と、やってる映画が違うような…。上がるはずのレイ・パーカーJr.も、なんだか浮いてる感じを受けちゃったな。

 

まあ、ある程度の雑さ、大味さもシリーズの持ち味とは思うんですけどね。コメディなので。

どうにもちぐはぐな印象は受けてしまったのでした。

キャラがやたら多くていろんなシチュエーションで繋いでいくこの作りは、映画というよりテレビシリーズに近いような…。

まさか配信ドラマへの展開を見込んでるとか、ないよね。そういうのはやめてね。