The Super Mario Bros. Movie(2023 アメリカ)
監督:アーロン・ホーバス、マイケル・ジェレニック
脚本:マシュー・フォーゲル
製作:クリス・メレダンドリ、宮本茂
音楽:ブライアン・タイラー、近藤浩治
出演:クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ、ジャック・ブラック、キーガン=マイケル・キー、セス・ローゲン、フレッド・アーミセン、ケビン・マイケル・リチャードソン
日本版出演:宮野真守、志田有彩、畠中祐、三宅健太、関智一
①マリオと私
みんな知ってる超有名ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」を、「ミニオンズ」のイルミネーションがアニメ映画に。
マリオの生みの親である、任天堂の宮本茂が製作に参加。
スーパーマリオブラザーズ、もちろん知ってる。子供の頃にファミコンで遊んだから懐かしいし、今も子供がSwitchで遊んでる。超息の長い、みんな知ってるゲームです。
僕の場合は子供の頃に遊んで以降は長いことゲームをやってなくて、自分が親になって子供にSwitch買ってから、あらためて再会した…って感じです。だから、決してどっぷり深いファンというわけではないのだけど。
それでも、映画に出てくるものみんな知ってる。キャラもお約束もちゃんとわかる、というのが凄いですね。本当に、コンテンツの持つ浸透力がめちゃ強い。
こういう「原作へのファンが多い映画」の場合、だからと言って必ず当たるわけではない。
というか、むしろ悲惨なくらいに外す場合も多い。
思い浮かびますよね。アレとか、アレとか、アレとか……。
そんな中で、本作はものすごい成功例になりましたね。
観た人が本当に、ほとんど悪く言わない。
すごい褒める。褒めたくなる。
そして何回でも観たくなる。
僕の場合、「ミニオンズ」がどっちかというと苦手なので。「USJ的なノリ」もそんなに好きではなくて。なので、映画としてはどうかな…と、結構疑ってたんですよ。
そういう先入観が吹っ飛ぶくらい、本当に心から楽しみました!
なんというか、シラケるところとか、我に返るようなところがなくて、最初から最後まで気持ちいい、純粋に楽しい気分になれるエンタメでした。
②ゲームの気持ち良さを映画で再現!
Discover usのコラムでも書いたけど、本作は本当に「気持ちいい映画」です。
「ゲームの気持ち良さ」が、映画館でそのまま味わえる。
ゲームやってる時の、爽快感。コントローラーの旧力に、画面の出力が答えるレスポンスの気持ち良さ。
かと言って、本作は決してストーリーや展開まで「ゲームのまま」というわけではないんですよね。
いわゆるオリジナルの「スーパーマリオ」の、横スクロールのゲームっぽいのは、序盤でピーチ姫に特訓されるところくらいで。
その他は、画面展開ではあまりゲームそのままにしていない。
「マリオカート」や「スマブラ」など他のゲームのムードも上手く盛り込みつつ、単調にならないバラエティ豊かな展開になっています。
そんなふうに、見た目の点では必ずしもゲームを踏襲していない。
それにも関わらず、本作を観ていて感じる気持ち良さは、まさしくマリオのゲームをやってる時の快感なんですよね。
それはたぶん、ズルをしてないから。
劇中のマリオが、ゲームのお約束を離れて「映画ならではの派手な大活躍をする」というようなことを、一切していない。
マリオの走るスピード、ジャンプで飛べる距離、アイテムの効果やその持続時間など、すべての「体感」がゲームの通り。
なので、観ていて「あれ、ここなんか違う…」と思うところがない。
ゲームでの記憶と変わらないリズムやテンポで、マリオやピーチ姫が冒険を繰り広げていく。
映画の中での呼吸が、ゲームと同じなのです。だから、「自分で操作していないのにゲームと同じ気持ち良さが味わえる」という、アクロバティックなことが達成できちゃっているんですね。
③両親との関係を軸に描かれる、子供たちに届けたいテーマ性
そういう、体で直接感じる気持ち良さをたっぷり感じた上で。
ストーリーも、決して適当なものではない。
「ブルックリンで暮らすイタリア系移民の配管工の兄弟がヒーローになるまでの物語」ですからね。ちゃんとテーマも込められているのです。
だから、「ゲームじゃねえか!」みたいな批判がほぼないんですよね。
映画好きな人も、ちゃんと評価できてしまう。
冒頭、マリオとルイージ兄弟の家族の「イタリア人っぽい暮らし」が結構しっかり描かれるのが意外でした。
なんか、親戚も集まって大家族でね。キノコのパスタ食べて。
でもその中でも、マリオとルイージは落ちこぼれで、馬鹿にされている。
両親に認めて欲しいと心から願っているけど、でもなかなか上手くいかない。
だから最後、ブルックリンを救ってヒーローになる時も、両親に認められることこそが彼らの「達成」なんですよね。
マリオとルイージの成長と達成が、両親との関係を軸に描かれているのが、子供たちに向けた物語として実に正統派だと思うのです。
また、本作は移民の物語でもある。移民の子供たちがアメリカのヒーローになる物語。
また、きのこ王国で唯一の人間であるピーチ姫は「難民」ですよね。異分子なのに受け入れられて、お姫様にさえなっている。
異分子を社会に受け入れるのが、特別なことでなく当たり前であるということ。
日本では、いまだにネガティブな語られ方をしがちなところですからね。マリオの映画を通して、子供たちに何かしら伝わることがあるんじゃないでしょうか。
難しいことを一切考えず、ゲームと同じ空気感で楽しめて。
でも、子供たちの心に大事なことが残るはず。
だから、これは本当によくできた「映画」だと思うのです。
Discover usのスーパーマリオ・ムービー特集はこちら。
映画を観るとゲームがしたくなる、というのも良くできてますね。