RRR(2022 インド)
監督/脚本:S・S・ラージャマウリ
原案:V・ビジャエーンドラ・プラサード
撮影:K・K・センティル・クマール
編集:A・スリーカル・プラサード
音楽:M・M・キーラバーニ
出演:NTR Jr.、ラーム・チャラン、アジャイ・デーブガン、アーリヤー・バット、レイ・スティーヴンソン、アリソン・ドゥーディー
①徹底的な勧善懲悪!
1920年、英国植民地時代のインド。村の少女が英国軍総督にさらわれ、ビーム(NTR Jr.)は奪還を目指します。一方、警察官のラーマ(ラーム・チャラン)は少女を取り戻しに来る者を逮捕する命を受けます。互いの素性を知らぬまま出会った2人は、固い絆で結ばれた親友になっていきますが…。
「バーフバリ」のS・S・ラージャマウリ監督/脚本によるインド映画。
前作同様、激しく熱い弩級のエンタメ超大作です。
「バーフバリ」にしても今作にしても、圧倒的なのは物語の基本に立ち返った盛り上がりの構築ですね。
悪い奴はとことん悪い。
強い奴はとことん強い。
逆境は徹底的に逆境で、倍する力でそれを跳ね返し、100倍返しで逆襲する。
英国人が徹底的に悪辣に描かれていて、インドで反英国の暴動が起きるんじゃないか?と心配になるくらいなんだけど。
それだけ憎々しく描くからこそ、その後の逆転も盛り上がるってもので。
コンプライアンスとかバランス感覚とか言ってる隙に、最近はすっかり見かけなくなっていた完全な勧善懲悪の面白さが生きていて、ちょっとびっくりさせられますね。
②リアリティある世界構築(当社比)
古代神話の世界だった「バーフバリ」に対して、こちらは過去とは言え近世。
よりリアリティのある世界構築になっています…って、あくまでも「バーフバリ」に比べて、ですけど。
バーフバリに比べると、本作のビームとラーマはより人間的。
殴られれば血が出るし、息を切らしてヘトヘトになりながら戦い、ボコボコにされて力尽きることもある、痛みの伝わる表現ですね。
と言いつつ、登場シーンでいきなりラーマは数十人相手に無双するし、ビームは虎と競争してるんですが。
大群衆にのしかかられながら、1人を捕まえて来ちゃうラーマの圧倒的強さは漫画的なファンタジーではあるのだけど、でもラーマが相当に痛そうだったりギリギリに見えるので、絵空事には見えないんですよね。
現実ではなく、映画の中のリアリティとして成立してる。
本作は全体を通してこのトーンが保たれていて、漫画の世界がそのまま実写になったような破天荒なアクションが楽しめつつ、同時にギリギリラインのリアリティも感じられるものになっています。
だから、より熱くなるんですよね。
③溢れ出るサービス精神
宗主国に徹底的な差別を受ける中で、父や母の無念を背負い、あえて敵に身を投じて裏切り者と呼ばれても、誓いを遂げるために信念を貫くラーマ。
そんなラーマとの絆と使命の間で揺れるビーム。
大いに盛り上がるドラマは、すべてが過剰で、往年の大映ドラマを思わせます。
泥臭くて熱々のドラマが展開していくのだけど、この作り手のいいところは、決して冗長にはならないところ。
情緒的に盛り上げつつもテンポを落とすことはなく。
あくまでも疾走感あるアクションを最後まで畳み掛けて、興奮を途切れさせず見せてくれるところだと思います。
リアリティが…って言ってましたけど、最後のクライマックスでは大いに逸脱するんですよね。ファンタジーの域に突っ込んでいく。
リアリティより、カタルシスが優先されてる。だから、非常に気持ちのいい後味で映画館を出ることができます。
この辺のリズムは、現代のアメコミ映画などからもエッセンスを取り入れている気がします。
映画のどの段階で、どんなリズムであれば気持ちよくて、観客が興味を持続出来るか、考え抜かれている。
常に観客の期待に応えて、その一歩先へ行こうとするサービス精神。自分の作りたいものに耽溺するんじゃなくて、お客の方を向いて作ってる。
これはエンタメを作る上での、本当に基礎となるべきことだよなあ…と、あらためてそんなことを思いました。