AKIRA(1988 日本)
監督:大友克洋
脚本:大友克洋、橋本以蔵
原作:大友克洋
製作:鈴木良平、加藤俊三
作画監督:なかむらたかし
撮影:三澤勝治
編集:瀬山武司
音楽:山城祥二
出演:岩田光央、佐々木望、小山茉美、玄田哲章、石田太郎、鈴木瑞穂、淵崎有里子
①ようやく、遂にIMAX!
IMAX上映版「AKIRA」を、ようやく観てきました。
また懐かしの作品ですが、「AKIRA」に関してはコロナの影響でリバイバルしてるわけじゃなく、4月3日公開ではじめから予定されていたものです。
とても観たかったんですが、じきにコロナで閉鎖に向かってしまって。
見逃した…と思ってたんですが、再開後にも引き続き上映してくれていました。ありがたい!
4Kリマスター版ということで、ソフトの発売に合わせた上映ですね。
そこはやはり、映画の時代設定が2019年だったり、2020年東京オリンピックの予言など、話題性があったからこその上映だったのだとは思います。
…が、まさかここまで現実と「AKIRA」がシンクロするとは。驚きですね。
2020年東京オリンピックが「中止だ中止」になって。
上映が、緊急事態宣言をまたいでるという。劇中で大佐が発令するのは「非常事態宣言」ですが。
今は収束に向かいつつあるところですが、場所によってはまだ予断を許さない感じですかね。
ネオ東京は「飽和状態で、熟し過ぎた果実」「欲望に身を任せた馬鹿どもの掃き溜め」と言われてましたが、現実の東京はどうでしょうか。
第2波はともかく、日本の夏は災害が多いんでね…。
これ以上、アキラ発動後の光景が現実とシンクロしたりしないよう、祈るばかりです。
②魂を揺さぶる音響!
「AKIRA」のストーリーの謎ときや解釈については、既にネタバレ解説記事を4本も書いてしまってるので、そちらを見て頂ければと思います。
ここでは、IMAX版の感想について。
何よりもまず強烈なのは、音響ですね。
IMAXの音響の良さ、全身に響いてくる迫力は、「AKIRA」という映画の本領を最大限に発揮させてくれます。
冒頭、金田たちとクラウンの抗争シーン。
金田のバイクが走り出し、芸能山城組のケチャのリズムが響いてきて、大音量で「金田」が流れ出した時。全身に強烈な震えが来ましたよ。
本当に、ぶわっと鳥肌が立った。それくらい、カッコ良かった。
ここ以外でも、芸能山城組の音楽とIMAXの相性は最高です。
腹に響き、体を揺さぶるリズムが、映画の躍動感を極限まで高めてくれます。
この映画でしか聴けない、ものすごくオリジナリティのあるサウンドトラック。
サウンドトラックを最高の条件で聴くためだけでも、IMAXを観る価値があると思います。
③建設と破壊のカタルシス
「AKIRA」という映画の魅力は、やはりなんと言ってもそのスケールのデカさ。
超能力が暴走して、巨大な都市が崩壊していく。
どんどんスケールが大きくなって、最後には宇宙の誕生にまで至る…というそのダイナミズムなので、IMAXの大画面は最高の舞台と言えます。
「AKIRA」の主人公はただ金田や鉄雄やケイたちだけではなくて、巨大なネオ東京という街そのものであると言えます。
大勢の人々をその中に呑み込んで、躍動し、進化する街そのもの。
そしてその中で同時並行的に進行する、反政府デモ、暴走族の抗争、野次馬、新興宗教、爆破テロ、クーデター、軍事衝突、内戦…。
ごった煮状態になった人々のエネルギーがやがて臨界に達して、ラストに一気に崩壊する。
「AKIRA」のダイナミズムは、積み上げた積み木を一気に崩すカタルシス。人が根源的に感じる、建設と破壊の興奮ですね。
IMAXの大画面で、躍動する街のまるごとが描き出され、精細な積み木細工が出来上がっていく。
だからこそ、最後に来る崩壊が強烈なカタルシスを生むんですね。
④映画の根源的な魅力
…って、さっきから結局「デカくて迫力がある」という、IMAXの当然のことしか言ってないですが。
でも、こと「AKIRA」に関しては、デカくて迫力があることがやっぱりいちばん肝要なとこですね。
画面いっぱいに巨大な爆心地が映し出されて…あるいは巨大なアキラのカプセルが映し出されて、ババーン!と大音響が鳴り響く。
その有無を言わせないハッタリの強さこそが、「AKIRA」の本質だと思えます。
そして、これはまた映画というものの根源的な魅力でもあって。
家のリビングで、テレビの画面で観るのでは、絶対に得られない迫力。
映画館で映画を観るということの、強調された特異性。それが存分に味わえる上映だから、自粛明けに映画館に出かけていくのは、ちょうど良い作品と言えるんじゃないでしょうか。