本作は新作映画レビューブログ…のつもりなんですが、パンフレット情報でお茶を濁しちゃってるのは、スミマセンここのところ映画館に行けてない!です。

いや〜暑さのせいで…ってわけではなくて、ただ忙しかったり時間が合わなかったり、ってだけなんですが。

来週は行けるといいなあ…と思いつつ、いつか誰かの何かの役に立つこともあるかもしれない…と信じて、今回はパンフレット情報です。

女と男の観覧車

映画のレビューはこちらです。

表紙は極めて地味ですが、コラムが4本載っていて、とても読み応えのあるパンフレットでした。

 

1本目は劇作家のケラリーノ・サンドロビッチ氏。

演劇論の面からのレビューが実にためになりました。若きウディ・アレンのテネシー・ウィリアムズ戯曲への傾倒、それを仮託しているのがジャスティン・ティンバーレイク演じる劇作家の卵ミッキーであること、彼のナレーションで語らせているのが「より演劇的な映画」を撮るためであることなど、いちいちなるほどと思わされます。

ケイト・ウィンスレットの終盤の長ゼリフを「上手い俳優にしか与えてはいけない類の台詞」というのも、ケラ氏ならではですね。

 

2本目は翻訳家・エッセイストの井上一馬氏。

女優論の側面からのコラムになっています。ここでもテネシー・ウィリアムズが引き合いに出されて、「欲望という名の電車」のヴィヴィアン・リーがケイト・ウィンスレットと比べられています。

 

3本目は編集者の辛島いづみ氏。

みんなが見過ごしている火遊び好きな息子リッチーの境遇を、ウディ・アレンの子供時代と重ねているのは彼女だけですね。

ジニーの様相を女の「キモさ」と言い切ってしまうのも、思い切りのいい視点です。

 

4本目はベテラン脚本家の内館牧子氏。

「奇想天外な発想」「リアルな現実と人心」の編み込み。そして巧みな隠喩。それらを、ウディ・アレンの脚本の巧みなところと指摘するのは脚本家ならではの視点ですね。

「観覧車」「回転木馬」、ジニーの家がもともとそうだった「見世物小屋」など、すべてに隠喩を読み取っていきます。

 

 

長場雄氏のイラストもいいです。ジニーの最悪の誕生日パーティー。

 

引用されている台詞は、

”おめでとうジニー 40歳でも悲しまないで 

一瞬で50歳になり 40歳が恋しくなるわ”

全然めでたくない!

 

紙質も良いです。28ページで720円。いいパンフだと思います。

 

告発小説、その結末

映画のレビューはこちらです。

こちらもコラムは3本ポランスキーのインタビューも掲載されています。

この映画については、それぞれいかにネタバレを回避しつつ、面白みを抽出して書くかの工夫が凝らされています。

 

1本目は映画監督の万田邦敏氏。

ポランスキーの経歴にある「世界が突然崩壊する不安と恐怖」が、この映画にも刻印されているという視点です。

サイン会での文字の映し方、「食べること」の映画の中での寓意など、あらためてそこに注目して観たくなる細かなポイントがいろいろと指摘されています。

 

2本目は映画評論家の河原晶子氏。

「デルフィーヌとエルは一心同体、分身同士」と書いて、それでもはっきりネタバレし切らずに書くテクニックはさすが。

小説版のラストが明かされていて、それを読むと「デルフィーヌの次の小説のテーマは何か」がわかります。

 

3本目は翻訳家の風間賢二氏。

原作小説の紹介が主になっています。スティーヴン・キングの研究書も書いてる風間氏ならではの、原作で引用されているキング作品を踏まえた分析。

本作を「ドッペルゲンガーもの」ととらえ、デヴィッド・リンチの「ロスト・ハイウェイ」と結びつけてみせるのも面白い視点ですね。

 

紙質は「女と男の観覧車」より薄くて、24ページで700円。こちらも読み応えは十分だったと思います。