Jumanji: Welcome to the Jungle(2017 アメリカ)

監督:ジェイク・カスダン

脚本:クリス・マッケンナ、エリック・ソマーズ、スコット・ローゼンバーグ、ジェフ・ピンクナー

原作:クリス・ヴァン・オールズバーグ

製作:マット・トルマック、ウィリアム・ティートラー

出演:ドウェイン・ジョンソン、ジャック・ブラック、ケヴィン・ハート、カレン・ギラン、ニック・ジョナス、ボビー・カナヴェイル

 

パンフレットは凝った作りだけど見にくい!

①キャラクターの面白さ

楽しい映画でした!

特筆すべきは、いちばん楽しい部分が、CGを使った派手な特撮シーンにあるのではないというところ。

ドウェイン・ジョンソン(akaロック様)を始めとする芸達者な俳優たちによる、爆笑必至のシチュエーションコメディ。キャラの立った役者たちの演技を楽しむ部分が、この映画の最大の魅力になっています。

 

居残りを命じられて集まった、本来なら交流のない異なるスクールカーストに属する4人の高校生たち。

学校の資料室で古いテレビゲームを見つけて、キャラを選択した彼らは、意思を持ったゲーム「ジュマンジ」の世界に吸い込まれてしまいます。

ジャングルに覆われ、凶暴な野生動物に襲われるその世界から脱出する方法は、ゲームをクリアすること。

ゲーム内で死亡するとライフが減っていきます。各自の持っているライフは3つ。全部なくなるとどうなるかは、誰にもわからない。

本来なら友達にもならないようなバラバラの4人が、生き残るために必死で力を合わせなくてはならない。この初期設定がまずはよくできていて、ここからいろんな笑いが生まれてきます。

 

そして秀逸なのは、ゲーム内ではまったく異なる見た目とスキルを持ったキャラになっているというところなんですね。

キャラ選択場面で深く考えずに適当に選んだから、ゲーム内で自分の姿を見てえーっということになる。

キャラ選択で後悔するっていう、これ自体ゲームのあるあるネタになってます。その上で、中身と外見のギャップで笑わせる、入れ替わりコメディの舞台がバッチリ整います。

 

オタクで弱虫のスペンサーは、マッチョで最強、フェロモンだだ漏れのロック様、akaドウェイン・ジョンソンに。

巨漢のフットボール馬鹿でいじめっ子のフリッジは、チビでかばん持ち係の黒人ケヴィン・ハートに。

ガリ勉陰気少女のマーサは、格闘スキルを持ったセクシー美女カレン・ギランに。

SNSに熱中する自分大好き美少女べサニーは、デブのおっさんジャック・ブラックに。

それぞれ正反対のキャラになってて、それだけで本当に面白いんだけど。

中でもべサニーが見事にオチを担っていて。あらゆる場面で笑わせてくれます。

 

②芸達者な俳優たち

でね、役者たちが本当に上手いんですよ。みんな本当に、中身の通りの人物に見える。

ドウェイン・ジョンソン、こんなに上手い人だと思ってなかった。あんなガタイしてるのに、ちゃんと、奥手でビビリのオタクに見えるもの。ずっと小さいケヴィン・ハートの威嚇にビビるところとか最高です。

誇張したコメディ演技だからっていうのはもちろんあるけど、ただ筋肉があるだけの人じゃない。俳優としてしっかりと成長しているなあと感じました。

 

カレン・ギランのオドオドっぷりも素晴らしい。人と目を合わせて喋れない、終始伏し目がちで目が泳いでる挙動不審振り。見た目は自信に満ち溢れてるのに。

ザ・ロックとカレンの、世にも不恰好なファースト・キスのシーンは本作のハイライトです。

 

そして何より素晴らしいのは、ジャック・ブラックですね。最初から最後まで、本気で女の子にしか見えない

最初のうちはあの外見でギャルっぽく振る舞うさまが、ただ笑えるんだけど、だんだん本気でべサニーにしか見えなくなってきて。だんだん、いじらしく見えてきたり。

恋に落ちたべサニーを、ついつい本気で応援してしまっていたりする。外見ジャック・ブラックなのに!

いやほんと、かわいらしく見えてくるんですよ。あのおっさんが、女子高生以外の何者でもなく見える。

危うく新しい扉が開くところでした。すごい、ジャック・ブラック。

③王道の成長物語

彼らの成長を描く脚本が、とても良く出来ています。

4人の高校生、性格はそれぞれバラバラだけど、共通してるのは、みんな自己中心的ということなんですね。

自分が傷つくことを極度に恐れるスペンサー。他人の気持ちがわからず、攻撃的な言葉を投げつけるマーサ。自分大好きなフリッジとべサニー。

自分のことに精一杯で、他人の気持ちがわからない。そこからいろんな軋轢を生んで、人を傷つけたり自分が傷ついたりしてしまう。

でもこれって、ものすごく普遍的なこと。これが、若いっていうことですよね。未熟であるということ。

 

そんな幼い4人が、図らずも生きるために必死で協力しなければならない状況になって。

未熟さゆえに何度も失敗したり、危機に陥るけれど、その度に少しずつ成長していく。

少年たちが冒険を通して成長し、大人になる。実に王道の冒険物語になっています。

 

その中でスパイスになってくるのが、ゲームの中で出会うアレックスです。

彼が20年もゲームの中に閉じ込められていることを知り、スペンサーたちは自然と、「彼を救う」という新たな目標を得ることになります。

それまでの彼らに欠けていた、他者への共感。自分のことばかりじゃなく、利害関係のない他人のために頑張るということ。

ゲームの中で、同じ境遇にいて、なおかつずっと辛い状況にある人に共感することで、自分以外の他人の存在に初めて気づく。理屈じゃなく、体験として。

 

また、アレックスとの出会いを通していちばん成長するのが、いちばん足手まといな存在だったべサニーなんですよね。

彼女はアレックスに恋してしまって、彼のために自分のライフを差し出す行動を取る。反射的に。

それまで、自撮り画像をSNSにあげることだけに夢中で、まさしく自分のことしか眼中になかった彼女が、他人のために命を差し出すという究極の利他行動に至ります。

 

また、脚本の秀逸なのは、ラストに至って、べサニーの恋が成就しないことなんですよ。

アレックスは現実に帰るけれど、それは20年前の世界であって、現在のべサニーは既に結婚して子供もいるアレックスと再会することになります。

ほろ苦い再会。でもべサニーはそれを受け入れます。それがアレックスにとっていちばん幸せな結末だとわかるから。

相手を自分のものにすることが目的の恋愛じゃなく、相手の幸せを願う恋愛。誰よりも幼かったべサニーが、誰よりも大人になった姿を見せてくれます。

 

そして、成長するってことは、カッコよくなることでもある。

それまで必死に自分をカッコよく見せようとしていたけれど、成長して他人を思いやれるようになると、自然とカッコよくなるんですね。

ラスト、スペンサーとマーサのキスシーンがもう一度繰り返されます。

スターであるロックとカレンの時にはあれほどカッコ悪かったキスシーンが、生身のスペンサーとマーサは実にカッコよく、スマートにこなす。それは、彼らが大人になったから

 

実にためになる映画だなあ。中学生や高校生に観て欲しいです。

 

1995年のオリジナル「ジュマンジ」

④ビジュアル的な驚きは少なめ

一方で、ジュマンジ的な面白さの部分…次から次へとピンチが襲ってくるアクションの部分は、割と淡白というか。

最初のカバの襲撃が意外で面白かったくらいで、後はサイ、ワニ、ゾウ、ジャガー…と予想がつく感じで、あまり強い印象に残るものではありませんでした。

ゲーム的なトラップ、仕掛けにしても、そんなに凝ったものはなくて。今回のジュマンジをゲームとして見た場合、クソゲー…とは言わないまでも少々食い足りないゲームだったような気がします。

 

ジュマンジのゲーム世界は、あまりリアリティは追求されていないんですね。あくまでも、人工的な世界として描かれている。

村人が同じセリフしか言わないとか、むしろ「勇者ヨシヒコ」的なパロディ世界として構築されています。

お金をいっぱいかけた「勇者ヨシヒコ」世界

それはそれで面白いんだけど、危機に瀕したジュマンジ世界を救うとか、悪者が何をどうしたいとか、ゲーム内の設定は割とどうでもいい感じになっちゃいますね。

 

前作「ジュマンジ」にあったホラー性は薄くて、全体に「あくまでもゲーム」として描かれている感はあります。

もしかしたら3回アウトでも現実に戻るだけなんでは?とか、校長は分かっていたのかも?とか、そんな想像もできちゃいますね。

 

その辺りが若干物足りないとも言えるんだけど、今回の焦点はあくまでも4人の高校生たちのリアクションと成長で。

テーマが絞られているので、映画の全体を通してブレない。一貫しているとは言えます。

 

「ジュマンジ」という過去の映画のアイデアから出発しながら、まったく別の見どころ、面白いポイントを構築して、新鮮な映画に仕上げている。

ティーン向き映画ですが、大人から子供まで、広く誰でも楽しめると思います。