【翼月】書記ロボット!
「あー!作業終わり!」
最後の書類に判を押して、一樹会長は勢いよく両手を天に伸ばした。
「どうだ颯斗!終わらせてやったぜ!」
「そんな勝ち誇った顔をされても…」
私は会長の傍にお茶を置く。
「お疲れさまです、一樹会長」
「ありがとな、月子」
お茶をすすり、「相変わらず不味いな!」と余計な一言を言ってから、会長は立ち上がった。
「よし、じゃあ今日は終わりにするか!みんなお疲れ!」
帰り支度をしようとして、ふとラボに目をやる。
翼くんは、最近ラボにこもりっぱなしだ。それだけならよくあること。だけど、今回はいつもと違う。
「翼か?」
「はい…まだ帰らないのかな…」
「新しく発明してるようですが…今回は何か妙ですね」
みんな同じことを考えていたらしい。
そう、ここ数日は全く、いつもの「爆発」が起こっていない。
「爆発しない完成品ができたなら、俺らに発表に来るはずだしな…」
「そうですね…音もほとんど聞こえませんし、どうしたんでしょうか」
会長と颯斗くんも心配しているようだった。
「わ、私、もう少し待ってみますね!ちょうど、この企画書を部屋で仕上げようと思ってたので、ここでやってます」
鞄から作りかけの書類を出して席につくと、会長と颯斗くんは互いに顔を見合わせて、微笑んだ。
「分かったよ、翼を待っててやってくれ」
「あんまり遅くなるようでしたら、僕たちに連絡をください」
会長に頭をポンポンと叩かれ、その手から「分かってるから」って伝わってくる。
「ありがとうございます」
書類の文面を作りつつ、ラボに目をやる。相変わらず、音は聞こえてこない。
「もうこんな時間…!」
きっと翼くんは時間なんて見てないだろうな、教えてあげないとダメだよね、と理由付けをして、私はそっとラボへ向かった。
扉を少しだけ開けると、やはり機械の音などはしない。だけど、翼くんの声が聞こえた。
「お、俺と水族館に行こう!」
耳を疑った。
緊張で強張った声で、そんなセリフ…。
どう考えても、デートの誘い文句じゃない。どういうこと?
「当たり前だ!君とじゃなきゃ嫌なんだ!」
目の前が、真っ暗になる心地がした。
私には言ってくれたことのない言葉。今、それを誰か別の人に言っている。
「…そんなの…部屋でやりなさいよ…馬鹿…!」
思わず声を出していた。
「わっ!書記!い、居たのか!」
私に向ける言葉は、それだけなの?嫌な気持ちが溢れ出しそうになる。
ラボの扉を大きく開き、翼くんを見やる。
作業机に向かって座る翼くん。その傍らには、見たことない携帯電話のような端末。
押し止めていた嫌な気持ちが溢れ出す。
「電話…、なんだ」
「書記、これは」
「電話で他の子と話すのに、ラボ使ってたんだ」
「違う」
「デートに誘ったりしてたんだ!」
「書記!」
「もういい!」
「違うって!」
端末を放り出して、翼くんは私の手を掴む。
「放して!」
だけど、その手は強く掴まれたまま。
「…離さないよ。俺、書記に誤解されるのは嫌だ」
「誤解…?」
翼くんは私を作業机に掛けさせ、さっきの端末を見せた。
「これは…?」
「…デート練習用ロボット、好き好き書記マシーン1号」
顔を真っ赤にしてポツリとそう言った翼くん。目の前の端末の画面に映るのは、私の顔写真。
「書記の声を録音して、俺の言ったことに応えるようにプログラムした。即席だから、バグも多いんだけど」
私の勘違いだった。
それに気づいた瞬間、恥ずかしくて、私の目からは涙が出ていた。
「…情けないよな、君を俺だけのものに出来たのに、一緒に遊ぼう、すら言えないんだ」
「ううん…私こそ、誤解して…疑って…ごめんなさい…」
椅子ごと翼くんの方を向いたら、翼くんはやっぱり顔を真っ赤にしていた。
「…今から、本番していいかな」
こくりと頷くと、翼くんはわざとらしく咳払いして、口を開いた。
「今度、一緒に水族館に行こう」
「…うん」
「君と行きたい。君じゃなきゃ嫌なんだ」
「…うん」
「…抱き締めて、いい?」
「うん…!」
椅子から立ち上がって、翼くんの胸に飛び込んだ。
翼くんの大きな体に包まれて、目を閉じる。
「上手じゃなくたっていいよ。翼くんが私のことを考えてくれる…私と出掛けたいって思ってくれる…。それだけで、幸せだから」
「ありがとう…月子。俺も幸せだ」
さぁ、今日からは二人で、デートの計画を立てよう。
最後の書類に判を押して、一樹会長は勢いよく両手を天に伸ばした。
「どうだ颯斗!終わらせてやったぜ!」
「そんな勝ち誇った顔をされても…」
私は会長の傍にお茶を置く。
「お疲れさまです、一樹会長」
「ありがとな、月子」
お茶をすすり、「相変わらず不味いな!」と余計な一言を言ってから、会長は立ち上がった。
「よし、じゃあ今日は終わりにするか!みんなお疲れ!」
帰り支度をしようとして、ふとラボに目をやる。
翼くんは、最近ラボにこもりっぱなしだ。それだけならよくあること。だけど、今回はいつもと違う。
「翼か?」
「はい…まだ帰らないのかな…」
「新しく発明してるようですが…今回は何か妙ですね」
みんな同じことを考えていたらしい。
そう、ここ数日は全く、いつもの「爆発」が起こっていない。
「爆発しない完成品ができたなら、俺らに発表に来るはずだしな…」
「そうですね…音もほとんど聞こえませんし、どうしたんでしょうか」
会長と颯斗くんも心配しているようだった。
「わ、私、もう少し待ってみますね!ちょうど、この企画書を部屋で仕上げようと思ってたので、ここでやってます」
鞄から作りかけの書類を出して席につくと、会長と颯斗くんは互いに顔を見合わせて、微笑んだ。
「分かったよ、翼を待っててやってくれ」
「あんまり遅くなるようでしたら、僕たちに連絡をください」
会長に頭をポンポンと叩かれ、その手から「分かってるから」って伝わってくる。
「ありがとうございます」
書類の文面を作りつつ、ラボに目をやる。相変わらず、音は聞こえてこない。
「もうこんな時間…!」
きっと翼くんは時間なんて見てないだろうな、教えてあげないとダメだよね、と理由付けをして、私はそっとラボへ向かった。
扉を少しだけ開けると、やはり機械の音などはしない。だけど、翼くんの声が聞こえた。
「お、俺と水族館に行こう!」
耳を疑った。
緊張で強張った声で、そんなセリフ…。
どう考えても、デートの誘い文句じゃない。どういうこと?
「当たり前だ!君とじゃなきゃ嫌なんだ!」
目の前が、真っ暗になる心地がした。
私には言ってくれたことのない言葉。今、それを誰か別の人に言っている。
「…そんなの…部屋でやりなさいよ…馬鹿…!」
思わず声を出していた。
「わっ!書記!い、居たのか!」
私に向ける言葉は、それだけなの?嫌な気持ちが溢れ出しそうになる。
ラボの扉を大きく開き、翼くんを見やる。
作業机に向かって座る翼くん。その傍らには、見たことない携帯電話のような端末。
押し止めていた嫌な気持ちが溢れ出す。
「電話…、なんだ」
「書記、これは」
「電話で他の子と話すのに、ラボ使ってたんだ」
「違う」
「デートに誘ったりしてたんだ!」
「書記!」
「もういい!」
「違うって!」
端末を放り出して、翼くんは私の手を掴む。
「放して!」
だけど、その手は強く掴まれたまま。
「…離さないよ。俺、書記に誤解されるのは嫌だ」
「誤解…?」
翼くんは私を作業机に掛けさせ、さっきの端末を見せた。
「これは…?」
「…デート練習用ロボット、好き好き書記マシーン1号」
顔を真っ赤にしてポツリとそう言った翼くん。目の前の端末の画面に映るのは、私の顔写真。
「書記の声を録音して、俺の言ったことに応えるようにプログラムした。即席だから、バグも多いんだけど」
私の勘違いだった。
それに気づいた瞬間、恥ずかしくて、私の目からは涙が出ていた。
「…情けないよな、君を俺だけのものに出来たのに、一緒に遊ぼう、すら言えないんだ」
「ううん…私こそ、誤解して…疑って…ごめんなさい…」
椅子ごと翼くんの方を向いたら、翼くんはやっぱり顔を真っ赤にしていた。
「…今から、本番していいかな」
こくりと頷くと、翼くんはわざとらしく咳払いして、口を開いた。
「今度、一緒に水族館に行こう」
「…うん」
「君と行きたい。君じゃなきゃ嫌なんだ」
「…うん」
「…抱き締めて、いい?」
「うん…!」
椅子から立ち上がって、翼くんの胸に飛び込んだ。
翼くんの大きな体に包まれて、目を閉じる。
「上手じゃなくたっていいよ。翼くんが私のことを考えてくれる…私と出掛けたいって思ってくれる…。それだけで、幸せだから」
「ありがとう…月子。俺も幸せだ」
さぁ、今日からは二人で、デートの計画を立てよう。