【犬まこ】射抜かれた心
部活終了後の一時間が、最近の俺の楽しみだ。
大会が近いことから、何とはなしにその日の振り返りも兼ねて、居残って練習するのが習慣になっていた。
スポ根みたいで恥ずかしかったので、白鳥たちには話していない。たまに宮地や夜久が残ることもあるが、あいつらは学業も真面目だから、試験期間でもある今はさすがに残らず帰っていた。
だから完全に俺一人…というわけではない。この時間が楽しみなのは、つまりそういうことだ。
「犬飼くん!今日先輩に怒られてたことが、モロに出てたわよ」
「えっマジか!」
「無意識なの!?呆れた」
お前のことしか考えてなかったからな、と言おうとしてさすがに呑み込む。
気がつくと俺の側に春名が立っていて、俺の構え方をくどくどと注意した。
少し前に居残り練習が見つかって、偶然春名がアドバイスくれたから、それ以来何となく二人で残っていた。真剣勝負したり、その日身に付けたことを繰り返したり、他愛もない話もしてる。
そういう時に、ふと、以前ここで抱き締められたことを思い出したりする。それで急に心臓の鼓動が早くなるのは、しょうがないじゃないか。
「ちょっと、犬飼くん聞いてるの?」
「あーわり、何だっけ」
「全く、練習中まで何を余計なこと考えてるのよ」
「……お前のこと」
あ、言っちゃった。
だって我慢できなかった。
俺はそこまで器用じゃないんだ。
「……え?」
目の前でポカンとしている春名の頬がみるみる紅潮していく。
ほらな。
俺が、こんな春名を見て、可愛いとか抱き締めたいとか思うようになったのも、全部…。
「お前のこと、ばっかり…考えるんだ」
意識し始めたら、もう止まらなくなっていた。
「犬飼、くん…?」
「お前だって、意識してないとは言わせない」
「う…」
普段のさばさばしたボーイッシュな所など、今や見る影もない。いま俺の目の前にいるのは、一人の可愛い女だ。
もう、俺の手は春名を捕えていた。
「……答えろよ」
「えと、あの」
「あぁ、すげぇ心臓の音が響いてくる」
俺の腕の中で、びくっと震えて離れようとするが、俺が逃がすわけはない。
「いちいち反応が可愛いやつだな」
「…うそ」
「嘘ついてどーすんだよ。…春名」
少しだけ腕を緩めると、春名は俺を見上げてきた。
「…真琴」
「犬飼くん…反則…」
春名が観念したように言って、少しだけ俺から離れた。
「もう気づいちゃったよ。…私、犬飼くんが好きだわ」
そしてもう一度、俺の腕の中に戻ってくる。
「…何か言ってよ」
心臓の音がうるさい。春名だけじゃない…これは…。
「…俺も…お前に射抜かれたわ…」
少しだけ腕に力を込めたが、拒絶はなかった。
「……好きだよ」
春名が、おずおずと俺の背中に腕を回す。
こいつ、やっぱ可愛いや。
「お前、気を付けろよ?」
「え…」
「あんま可愛いことしてると、俺知らねーぞ?」
勢いで、春名の額に口付けた。
「なっ…!!」
「気を付けてても、するけどな」
にやりと笑ってやると、春名が言葉にならない叫びをあげているのが分かった。
「さ、帰ろうぜ…真琴」
「犬飼くんの変態…」
「変態じゃねーよ純粋なんだよ。…ほら、手」
「ん…」
手を差し出せば握ってくれる。
今はそれでも十分だ。
俺はようやく手に入れた。
大会が近いことから、何とはなしにその日の振り返りも兼ねて、居残って練習するのが習慣になっていた。
スポ根みたいで恥ずかしかったので、白鳥たちには話していない。たまに宮地や夜久が残ることもあるが、あいつらは学業も真面目だから、試験期間でもある今はさすがに残らず帰っていた。
だから完全に俺一人…というわけではない。この時間が楽しみなのは、つまりそういうことだ。
「犬飼くん!今日先輩に怒られてたことが、モロに出てたわよ」
「えっマジか!」
「無意識なの!?呆れた」
お前のことしか考えてなかったからな、と言おうとしてさすがに呑み込む。
気がつくと俺の側に春名が立っていて、俺の構え方をくどくどと注意した。
少し前に居残り練習が見つかって、偶然春名がアドバイスくれたから、それ以来何となく二人で残っていた。真剣勝負したり、その日身に付けたことを繰り返したり、他愛もない話もしてる。
そういう時に、ふと、以前ここで抱き締められたことを思い出したりする。それで急に心臓の鼓動が早くなるのは、しょうがないじゃないか。
「ちょっと、犬飼くん聞いてるの?」
「あーわり、何だっけ」
「全く、練習中まで何を余計なこと考えてるのよ」
「……お前のこと」
あ、言っちゃった。
だって我慢できなかった。
俺はそこまで器用じゃないんだ。
「……え?」
目の前でポカンとしている春名の頬がみるみる紅潮していく。
ほらな。
俺が、こんな春名を見て、可愛いとか抱き締めたいとか思うようになったのも、全部…。
「お前のこと、ばっかり…考えるんだ」
意識し始めたら、もう止まらなくなっていた。
「犬飼、くん…?」
「お前だって、意識してないとは言わせない」
「う…」
普段のさばさばしたボーイッシュな所など、今や見る影もない。いま俺の目の前にいるのは、一人の可愛い女だ。
もう、俺の手は春名を捕えていた。
「……答えろよ」
「えと、あの」
「あぁ、すげぇ心臓の音が響いてくる」
俺の腕の中で、びくっと震えて離れようとするが、俺が逃がすわけはない。
「いちいち反応が可愛いやつだな」
「…うそ」
「嘘ついてどーすんだよ。…春名」
少しだけ腕を緩めると、春名は俺を見上げてきた。
「…真琴」
「犬飼くん…反則…」
春名が観念したように言って、少しだけ俺から離れた。
「もう気づいちゃったよ。…私、犬飼くんが好きだわ」
そしてもう一度、俺の腕の中に戻ってくる。
「…何か言ってよ」
心臓の音がうるさい。春名だけじゃない…これは…。
「…俺も…お前に射抜かれたわ…」
少しだけ腕に力を込めたが、拒絶はなかった。
「……好きだよ」
春名が、おずおずと俺の背中に腕を回す。
こいつ、やっぱ可愛いや。
「お前、気を付けろよ?」
「え…」
「あんま可愛いことしてると、俺知らねーぞ?」
勢いで、春名の額に口付けた。
「なっ…!!」
「気を付けてても、するけどな」
にやりと笑ってやると、春名が言葉にならない叫びをあげているのが分かった。
「さ、帰ろうぜ…真琴」
「犬飼くんの変態…」
「変態じゃねーよ純粋なんだよ。…ほら、手」
「ん…」
手を差し出せば握ってくれる。
今はそれでも十分だ。
俺はようやく手に入れた。