今回学んださまざまな歴史事象は、現代における「人と文化」をつなぐものの参考になります。そこで本課題では、自身が所属したことがあるコミュニティの問題について、下記のように歴史事象を参照にして検証し、レポートにまとめてください。
(1)自身が所属したことがあるコミュニティの問題を取り上げる。
(2)その問題を克服するためにはどのようにすればよいか、今回の全15章で取り上げた歴史的事象をもとにして、考察する。
私が町内会を辞めた理由
今春、長く加入していた町内会を脱退した。その理由を述べるとともに、そこから浮かび上がる問題点、解決の方法として町内会はどうあるべきかを、町内会の歴史と関連付けて考察することにする。
町内会(私の地域では自治会と呼ぶので、以下自治会と称す)の脱退のきっかけになったのは、昨年度の末に自治会の区長を依頼されたことである。私の地域の自治会は、概ね20世帯くらいを単位に「区」という区分に分けて運営されている。その区のとりまとめ役が区長である。区長を打診された際、断ったのであるが、輪番なので断れないと言われ、それなら自治会を脱退するといった経緯である。
では、なぜ区長を断ったのか、それは、日頃から自治会に対して様々な疑念を抱いていたからである。その1つに募金活動がある。区長が各家庭を回り、赤十字や共同募金の寄付を募るという活動である。しかし、この募金の収集について以前から問題視してきた。
まず、徴収にあたり一戸でおよそ500円のように目安を示し、あたかも義務のように取り立てることを疑問に感じていた。また、赤十字の会員でもない人間が、区長というだけで、なぜ募金活動に関わらなければいけないのか疑問である。このような理由で私は募金を拒否してきた。しかし、拒否すると「どこの家庭でもお願いしている」と意見されることもあり、さらに不信感が高まった。このような経緯があり、募金活動を行う区長の仕事はやりたくなかった。
自治会によっては、最初から募金の額を自治会費に上乗せして徴収している自治会もあり、このような強制的な募金が問題視されている。このような時代に、なぜ募金を半ば強制的に自治会が行うのか、その理由が分からない。また、このようなことを問題提起しようにも、問題提起するような総会という場も設けられていない。
町内会の歴史を見ると、その役割として、包括的機能と行政の末端組織があるが、募金活動はこの中に含まれるものではない。ましてや、区長が募金を半ば強制的に集めることは、ボランティアで行う範疇を超えている。
町内会活動で、学校を建てたという例が紹介されていたが、その際には町民から資金を募っていたかもしれない。そのように地域のコミュニティを支える上での募金活動は自治会で行ってしかりであるが、それも強制されるものではなかったのではないだろうか。
現在の自治会は、行政の末端組織という仕事はほとんどなくなり、包括的機能がその中心となっている。例えば防災意識の高揚や独居の高齢者への気配り、登下校中の児童の見守りなどであるが、私の周りでは、このような活動もあまり見られなくなった。昨今、私のように自治会に加入しない世帯が増えていると、講義の中でも述べられていたが、それは、自治会の活動が地域に根ざしたものから乖離しているからだと考える。募金を強制するような活動はその一例である。これを解決する方法としては、自治会という組織が、あくまでボランティアとしての活動であることを再認識し、住民に強制的に過重な負担をかけないことが重要である。その上で、活動の内容を見直し、包括的機能を有する地域のコミュニティを活性化する活動を行えば、住民の自治会への参加の意識も高まると考える。