日本文学史上に名高い『源氏物語』は、物語文学の頂点とも称されているように、それまでの作品から大きく前進し、新たな境地を切り開いた作品です。従来、物語は婦女子の暇つぶしとみなされてきたのですが、『源氏物語』はたんなる娯楽以上のものとして位置づけられ、文学のみならず絵画や演劇など、今日に至るまで日本文化全般に多大な影響を及ぼしているのです。
本章では、このような『源氏物語』の特質についてみていきます。
Movie1・・・作者・紫式部
Movie2・・・『源氏物語』第一部の特質
Movie3・・・『源氏物語』第二部の特質
Movie4・・・『源氏物語』第三部の特質
Movie5・・・『源氏物語』の達成
物語文学の頂点とされる『源氏物語』は、西暦一〇〇八年頃、一条天皇の中宮彰子に仕えた紫式部によって執筆された。この物語は、全五四帖からなる長編物語であり、通常、三部構成として捉えられる。そのうち第一部・第二部は正編ともいい、主人公光源氏の生涯が描かれている。第三部は続編ともいうが、そのうち橋姫巻から夢浮橋巻までのことを 宇治十帖と呼び習わしている。江戸時代の国学者・本居宣長は、この物語の主題をもののあはれと称した。