明朝は、現代日本ではなじみの薄い王朝ですが、中国美術をみていくうえでは重要な時代です。 明朝では15世紀半ば以降、江南経済の活発化によって都市が繁栄し、美術のすそ野が広がりました。とくに科挙に挫折した知識人が文人画家として美術を担うようになり、個性的な画家を輩出しました。明代の文人画家のうち、最も注目すべき人物は明末の巨人 董其昌です。彼は文人画家・理論家・コレクターとして名高く、近年に至るまで大きな影響を与えた人物です。しかし、庶民から収奪を行う大地主としての顔ももっていました。本章では、こうした明代の画家群像を通して、社会と美術の関係について考察します。
Movie1・・・明代の社会
Movie2・・・明代の絵画の展開と特色
Movie3・・・個性的な画家群像 唐寅と徐渭
Movie4・・・明末の巨人 董其昌
明初の経済は停滞しましたが、15世紀半ば以降、江南を中心に経済が発展しました。明代後期には、各地域の有力者として郷紳と呼ばれる社会層が登場しました。 15世紀前半、蘇州で始まった文人画家とその後継者を「呉派」と呼びます。その代表的人物が沈周と文徴明です。また、16世紀に活躍した個性的な画家には、唐寅と徐渭があげられます。 明末絵画の中心人物である董其昌は、書画の才能と鑑賞力を兼ね備えた中国美術界の巨人です。彼は南北二宗論を展開し、中国絵画史に大きな影響を与えました。