レポート試験 | 65歳の芸大生

65歳の芸大生

定年退職後、新しいことにチャレンジしたいと考えて、今まで縁がなかった芸術について学ぼうと思い、京都芸術大学通信教育部芸術教養学科に入学しました。このブログは学習記録としてレポート等の成果を載せています。複製、転載はご遠慮ください。

テキストを通読して一番興味をもった領域を一つ選び、その領域が近現代以降の芸術文化の展開にもたらしたものについて論じなさい。 なお「興味を持った領域」は、地域編・テーマ編のどちらからでも選択可能です。1~9章までの日本・中国・韓国・アフリカ・オセアニアから一つの地域を選んでもよいですし、10章以降の写真・工芸・建築・デザイン・ファッションから一つのテーマを選ぶこともできます

写真が近現代以降の芸術文化において果たした役割について 

1. 写真の誕生と初期の役割 

1839年、フランスのダゲールによってダゲレオタイプが発明され写真が誕生した。

この技術はヨーロッパ全土に広まり、肖像画や風景画の代替手段として利用された。この時期の写真は、主に記録やドキュメンテーションの手段としての役割を果たし、現実を正確に再現するという能力が評価された。 

2. リアリズムと印象派への影響 

19世紀後半、写真の登場は芸術におけるリアリズムの発展を促した。写真の正確な描写能力は、画家たちに新たな挑戦をもたらし、よりリアルな表現を追求する動機となった。一方で、印象派の画家たちは写真の影響を受けつつも、その限界を超えようとし、光や色彩の表現に重点を置くようになった。写真が瞬間を捉える力を持つことが、彼らの新しい視点や技法の探求に繋がった。

 3. モダニズムとアバンギャルドの時代 

20世紀初頭、写真はモダニズムやアバンギャルドの芸術運動において重要な役割を果たした。ダダやシュルレアリスムの芸術家たちは、写真をコラージュやフォトモンタージュの手法で用い、現実と非現実の境界を曖昧にする表現を追求した。また、ロシア構成主義やバウハウスの運動では、写真が新しい視覚言語としての地位を確立し、デザインや建築など多岐にわたる分野で活用された。

4. 戦争と報道写真の発展 

写真は、20世紀の戦争や社会変動の記録手段としても重要な役割を果たした。第一次世界大戦からベトナム戦争に至るまで、報道写真は歴史的な出来事を記録し、その現実を世界に伝える手段となった。ロバート・キャパやアンリ・カルティエ=ブレッソンのような写真家たちは、その作品を通じて報道写真の価値を高めた。

 5. コンセプチュアルアートとポストモダニズム 

1960年代以降、コンセプチュアルアートの台頭により、写真はアイデアや概念を伝える手段として再評価された。シンディ・シャーマンやバーバラ・クルーガーなどのアーティストは、写真を通じてジェンダー、アイデンティティ、消費社会などのテーマを探求した。ポストモダニズムの文脈において、写真はその多様性と柔軟性を活かして、新しい芸術表現の形を模索する重要なツールとなった。

6. デジタル時代の到来 

21世紀に入り、デジカメやスマートフォンの普及により、写真は日常生活の一部となり誰でも高品質の写真を撮影・共有できるようになった。また、編集技術により、写真の加工や変形が容易になり、アーティストたちは新しい表現の可能性を追求することが可能になった。 

まとめ 

写真は記録手段としての役割から始まり、以降様々な芸術文化に多大な影響を与えてきた。歴史的な発展を通じて、写真は単なる記録手段を超え、革新的な表現手段としての地位を確立し続けている。この多様性と柔軟性が、写真の芸術文化における重要な意義を証明している。