イタリアでは、1527年に神聖ローマ皇帝カール五世による教皇庁攻撃、いわゆる「ローマ略奪」が起こり、1530年代に入るとフィレンツェでは共和制にかわって君主制が台頭します。また1520年代以降にはドイツで活発化した宗教改革運動がヨーロッパ各地に飛び火し、社会は変革期を迎えます。本章では、盛期ルネサンスにおいて到達した古典的な理想美から逸脱していく、16世紀マニエリスム芸術の展開を見ていきましょう。 Movie1・・・初期マニエリスム -装飾的で非現実的な空間構成- Movie2・・・中期マニエリスム -宮廷趣味と芸術の洗練- Movie3・・・マニエリスム的奇想 -奇怪な庭園- Movie4・・・後期マニエリスム -魔術的なものへの関心- Movie5・・・マニエリスムの終焉 -対抗宗教改革と芸術-
マニエリスムの語源は「様式」あるいは「手法」を意味するイタリア語のマニエラで、その特徴は16世紀初頭まで重視されてきた自然模倣ではなく、過去のすぐれた「芸術」を規範とした点です。マニエリスムは、ミケランジェロが考案した人工的に身体を引き伸ばし歪曲させた蛇状人体や、極端な短縮法を採り入れました。しかし、それは対抗宗教改革が厳格化すると、カトリック教会の方針と合わなくなりバロック様式にとって代わられました。