以下の判例について論評してください。その際には、以下の(1)~(5)5つの点に触れた上で1600字程度でまとめてください。 「猫イラスト家紋Tシャツ販売事件」 大阪地裁平成31年4月18日判決平成28(ワ)8552著作権侵害差止等請求事件 (1)何が問題となっているのか(争点はなにか) (2)法令上はどのようになっているのか (3)類似の事件ではどのようなものがあるか (4)他者の意見としてどのようなものがあるか (5)自分はどう考えるか
この事件は、原告の作成した猫のイラストを無断で使用してTシャツを製造・販売した被告に対し、原告が著作権侵害及び不正競争防止法違反を理由に差止め及び損害賠償を求めた事件である。
(1)何が問題となっているのか(争点はなにか)
イラストをデザインした原告が、原告のイラストが描かれたTシャツ等を製造販売している被告に対し、以下の点について訴えたものである。
・被告イラストは、原告イラストを複製又は翻案したものであり、このTシャツ等の製造は原告の複製権又は翻案権を侵害すること。
・上記Tシャツ等の写真を被告が運営するホームページにアップロードしたのは、原告の公衆送信権を侵害すること。
・被告が原告イラストを複製又は翻案し、原告の氏名を表示することなく上記Tシャツ等を製造等したのは、原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害すること。
以上の点を主張して、被告のイラストの複製、翻案又は公衆送信の差止め、被告イラストを使用した各物品の廃棄並びに被告のイラストに関する画像データ及び被告が運営するホームページの被告のイラストが掲載された各物品の表示の削除を求めたものである。
争点としては、原告の猫のイラストが著作物として保護されるか、被告の行為が原告の複製権及び翻案権を侵害するかであるが、原告は、自身が創作した猫のイラストに創作性があり著作物として保護されるべきだと主張した。一方、被告は自身のイラストは独自のものであり、原告の著作権を侵害していないと主張した。
(2)法令上はどのようになっているのか
著作権法上、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されている(著作権法2条1項1号)。裁判所は、原告の猫のイラストが創作性を有し著作物に該当すると判断した。
また、著作権法113条1項は、著作権者の許諾なく著作物を複製したり翻案したりすることを禁止している。裁判所は、被告の行為が原告の複製権及び翻案権を侵害すると認定した。
(3)類似の事件ではどのようなものがあるか
類似の事件としては、2019年に判決の出た「パンダクッキー事件」がある。この事件は被告の菓子製造販売業者が商品パッケージに使用しているパッケージが、原告のデザインした手ぬぐいのイラストに酷似していることから 著作者人格権及び著作権を侵害しているとして、被告に対しイラストの複製等の差し止めや損害賠償等を求める訴訟を提起したものである。判決では、著作権及び著作人格権の侵害の事実が認められている。
(4)他者の意見としてどのようなものがあるか
権利者側からは、創作活動の成果を適切に保護し、無断使用を厳しく取り締まるべきという意見が強い。著作権が侵害されることで、創作者のモチベーションが低下し、文化的な発展が阻害される考える。
一方で、利用者側からは、著作権の保護が過度に厳しい場合、二次創作やパロディなどの自由な表現活動が制限されるという懸念がある。特に、イラストやキャラクターの一部を参考にしたり、インスピレーションを受けたりすることが完全に禁止されると、創作活動全体の活性化が損なわれる可能性がある。
(5)自分はどう考えるか
私自身の考えとしては、著作権の保護と自由な創作活動のバランスが重要だと考える。本件においても、原告のイラストが被告のTシャツに無断で使用されたことは明らかであり、これは著作権侵害として認められるべきである。しかし、同時に、創作活動におけるインスピレーションや参考の範囲内での使用については、一定の柔軟性が必要である。
具体的には、被告が原告のイラストをどの程度改変し、独自の創作物として再構成したかを慎重に検討するべきである。もし被告が単に原告のイラストをそのまま使用した場合は、明確な著作権侵害として認定されるべきと考えるが、被告が独自の創作要素を加えた場合は、その度合いに応じて判断する必要がある。