キャッチャーなメロディやポップなメロディというのは、ロックファンにはやたら嫌われる傾向がある気がします。その理由として挙げられるのはやっぱりメロディの「わかりやすさ」にあると思うのです。わかりやすいメロディっていうのは、そのままだけど、例えば親しみやすい、耳に残る、誰でも分け隔てなく聴ける音楽のことです。このわかりやすさは、対抗の音楽としての「ロック」ファンにとっては、許せない存在なのです。ロックはメインストリームであってはならないのです。私は以前、というかロックという音楽に目覚めてから数年、やたら「対抗」という言葉にこだわり、メインストリーム(ポップ)の音楽というものを軽視していました。(J-POP(幸田くみとか浜崎あゆみetc)は嫌い)しかし私のこの考え方が大きく変わったきっかけになったのが、My Chemical Romanceの「The Black Parade」でした。このアルバムはこのバンドの3作目のもので、前2作のものとは大きく違うものでした。過去の作品は攻撃性が前面に出されていたため、サウンドは刺々しくエモーショナルで、時に自分を壊してしまいそうなくらいの激情に溢れるものでした。やっぱりこういうものの方が、「対抗」音楽としてのロックのファンは好きなのだと思います。(人それぞれで、嫌いって人も沢山いますけど)しかし、彼らの3作目となった「The Black Parade」は今までのファンをある意味裏切るようなアルバムでした。それは前作のようなメロディの激しさは抑えられ、よりポップに、大衆向けのようなサウンドに仕上がっていました。前からファンであった私も、初めてこのアルバムを聴いたとき、正直微妙・・・と思いました。前みたいなもっとパンクでへヴィなのがよかったって。しかし、このアルバムと向き合うにつれて、その思いは消えていきました。なぜならば、アルバムのコンセプトに深く感銘を受けたからです。それは死という、触れることのできなくて、知っているようで実は死んだことないからわからないというようなすごく漠然とした事柄についてでした。私は死というものにスゴク変な執着を持っています。こんなに死について考える人って誰もいないんじゃないか、とか、こんなことばっか考えてる奴はオカシイんではないかとか思っていました。しかし、この死をコンセプトにした彼らの3rdアルバムは爆発的にヒットしました。本国アメリカでは微妙らしいのですが、イギリス、日本ではそりゃもう驚きの大ヒットでした。私は売れることに対して戸惑いもあったけど、やっぱり嬉しい気持ちの方が勝ちました。
なぜマイケミがヒットしたのか。その答えは、もちろん作品のクオリティの高さもありますがそれに加えて作品を伝える際の「わかりやすさ」というのもひとつ挙げられる思います。ロックの音楽にこういったポップネスは嫌われるのですが、あえて彼らはその武器を利用しました。ポップネスというのはサウンドだけに限らず、ヴィジュアルも入ります。彼らはジーンズにTシャツというシンプルなものではなく、何色にも染められない黒を身にまとい、いかにも作り上げられたポップアイドルのようでした。死という一般的にネガティヴとされる事柄を多くの人たちに伝えるためには、ポップ的な要素が必要だったのだと思います。彼らは死を通して多くの人たちに生へのポジティヴな姿勢を見せようとしました。しかし、ポップネスを利用するという行為は危険で、多くのロックファンを敵にまわすことになりかねないのです。なぜならば、ポップというのはメインストリームであり、常にマイノリティであるロックファンたちはそれを嫌うからです。しかしマイケミカルロマンスというバンドは、その危険を犯してまでポップネスを利用し、自分たちの世界観や考えを世界に伝えようとしました。はじめは聴きやすいサウンドでなんとなくいいなぁという思いから「Black Parade」(マイケミ)を聴き、その後にこのバンドが伝えようとしていたことを知る・・・一見ズルいように見えるかもしれないけれど、これはそうすることでしかこの死という世界観を伝えることができなかったのだと思います。サウンドやヴィジュアルのわかりやすさをこれでもかというほどに使ったマイケミはある意味凄いし、勇気ある行動をしたなと思いました。私はそんな彼らの勇気がとても嬉しかったし、見習わなければならないことがたくさんあることに気づきました。だから彼らこそ、私は本物のロックバンドであると思うのです。
彼らの3作目にある「わかりやすさ」とは何ゆえだったのか、それはつまり、こういうことなのだと思います。私はマイケミが大好きです。
そして最後に、私は決してにわかファンではないことを伝えておきたいです。