400字小説その2の6 | 豆もあいの決して心の折れることのないブログ

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暇な方は読んでみてください。

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「くだらない。」
その言葉を発して最も驚いたのは自分自身だった。"つまらない"、"面白くない"、"面倒くさい"等、ネガティブな発言をよく口にすることはあったが、"くだらない"という言葉を使ったのは殆ど記憶にない。そして父もそれに気づいたようだ。
「くだらない・・・というのはどういうことだ?」
普段なら聞き流す程度の息子の愚痴を、あえて聞き返した。それほどこの"くだらない"という言葉にインパクトがあったに違いない。
「会社という存在がくだらない。他の会社もうちみたいな会社なら、なんでみんな働けるのだろうっていう疑問しか浮かばない。」
「だから朝、自分で会社を作るって言ったのか。」
父はやっと考えが線でつながったようだ。そう言えば会社のことはほとんど父には話していなかった。
「会社ではどんなことをしているんだ?」
「いいじゃんもう。疲れてるから。」
そう言って、朝とは違い、今度は風呂に逃げ込んだ。
頭を雑に洗っていると、扉越しに父の声が聞こえた。
「風呂入りながらでいいから話してみろ。」
こんな父は初めてだった。元々放任主義で、こんな強引に話をさせるなんていうことはしない人だ。
「会社ではどんな仕事をしているんだ?」
「プログラム関係。」
「パソコンを使った仕事か?」
「そんなとこ。」
扉越しに話さなくてはいけないので、自然に大きめの声になる。その声が風呂場に反響して嫌だった。
「自分が好きで入った会社で、仕事だろう。」
「そうだけど、他の環境が悪いから仕事もつまんなくなる。」
「他の環境が悪い?」
「そう。それがくだらないって部分。」
湯船から体を上げた。元々風呂は長い方ではない。父親は察して2階に行ったようだ。

コップ一杯のお茶を飲み干し、自分の部屋へ戻った。
父の部屋の明かりが付いている。普段なら既に寝ていておかしくない時間だ。