第二次世界大戦で、東京などの都市が燃やされた。誇りのあった建物や文化物の跡は、瓦礫しか残っていない。原爆の被害も受けて、広島と長崎の存在がほとんど消えた。その地獄のような状態に陥って、敗戦した日本にゴジラが現れる。この設定は斬新でありつつ、山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」は過去作品からのいくつかの部分を取って、混ぜるだけで、見たことがある感じが強いゴジラ映画だった。

 今回のゴジラは主人公の敷島浩一(神木隆之介)の個人の「戦争」を表す。ゴジラに初めて遭遇したときの犠牲を自分のせいした敷島が空襲で破壊された東京に帰る。家族も失った敷島が偶然出会った典子(浜辺美波)と典子に託された赤ん坊の明子と家族のような形で暮らし始める。しかし、そう簡単に逃げられない。復興が進んでいる渋谷にビキニ環礁水爆実験で変身し、より強くなったゴジラが出てくる。ちなみに、ビキニ環礁実験以外、原爆などの描写や言及はない。そして、このところで1991年の「ゴジラvsキングギドラ」を思い出した。終盤のゴジラを倒す作戦も「ゴジラの逆襲」(1955年)の終わりに似ていた。

 渋谷の襲撃では、シリーズ史上最強のゴジラの熱戦が披露されるが、ゴジラによる被害と犠牲者、威迫を見せる場面は少ない。それに、山崎監督が自らの手で作ったVFXは思ったよりよくできたが、着ぐるみやミニアチュールなどの特殊技術がなくなるのは残念すぎる。たまに、ゴジラと人間が同じ空間にいることが信じられないところもあった。

 この映画の問題点は述べたとおり、結構あるが、21世紀に公開された他のゴジラ作品と比べれば、「ゴジラ モスラ キングギドラ大怪獣総攻撃」(2001年)や「シン・ゴジラ」(2016年)ぐらいのクオリティーを持つ作品だと思う。一応楽しめた。おすすめもできる。