少女のような笑顔で怪力で広辞苑を引き裂いて見せた郁子。その見た目とのギャップに生徒たちは呆気にとられていた。
…つぎの日は郁子の学校は生徒の体力測定だった。郁子は100m走のタイムを測る係になった。
「はい、つぎは風間くんね…」
3年生の風間は陸上部のキャプテンで中学生でありながら、日本記録に迫ろうとする速さの持ち主だった。
「先生、タイムを測るのはいいけど、ゴールには誰もいないよ」
「大丈夫よ。さあ、風間くん、いくわよ。よーい、スタート!」
郁子がストップウォッチを押すと、風間の後を追いかけ走り出した。
ビュン!!
一瞬、郁子の姿が消えた。
「はい。風間くん11秒02ね」
郁子は一瞬で風間を追い越し、ゴールでタイムを計測したのだ。
そんなスーパーガールな郁子だが、音大を主席で卒業するピアノの腕前もさることながら、類い希な絶対音感と歌唱力を見込まれ、合唱部の顧問となった。
ある日の放課後、郁子たちはいつも通り合唱の練習をしていた。しかし、郁子は何やら胸騒ぎがした。
「ちょっと、準備室で資料を整理するから、あなたたちで発声練習していてね」
郁子は準備室に入るとスーパーヒヤリングで耳そばだてた。
…おい、店長!ここにある現金を全て出せ!早くしないと、この機関銃ぶっ放すぞ!…
…本部から墨田115、犯人は*☆銀行墨田支店に5人で篭城、注意されたし…
郁子の学校の近くで銀行強盗が発生したのだ。
「誰も見ていないわよね…」
郁子は音楽準備室の窓から飛び立ちながらスーパーガールに変身した。変身した郁子の身体はヘレンスレイターばりの完璧なプロボーションだった。
「あ、あそこかしら?」
スーパーガール郁子はスカイツリーの展望台の横をすり抜け、下町の上空から一点を見つめていた。
「強硬突入は犯人を刺激するから何かいい方法は無いかしら?」
郁子はそう言いながら、信用金庫の駐車場に着地した。
「あ、スーパーガールさん。ご苦労様です。しかし、噂どおりのプロポーションだな…」
1人の警官がスーパーガール郁子の姿に気づき走り寄る。豊かな胸の膨らみで突き出たSのロゴ。ミニのスカートからスラリと伸びた脚。警官は思わずスーパーガール郁子の身体を舐め回すように凝視してしまった。
「犯人は5人なんですね?私にいい方法があります」
そう言いながら、スーパーガール郁子は信用金庫の裏口に歩きだした。
スーパーガール郁子歩きながら信用金庫の建物の中を透視していた。
「なるほど。1人ずつ倒して行けばいいわね」
スーパーガール郁子は裏口のドアノブに手をかけた。
ガチャガチャ…
「あ、やっぱり…」
裏口はロックされていたがスーパーガール郁子は意に介さなかった。
ガチャガチャ…。バキッ!
郁子の怪力でドアノブは呆気なく壊れてしまった。
ドアの向こうには見張り役の覆面姿の男がライフルを構えて立っていた。
「おっと、コスプレのお嬢さん、ここから先は立ち入り禁止だぜ…。そこから動くと撃つぞ!」
男はスーパーガール郁子の胸元に銃身を突きつけた。豊かに膨らんだSのマークに銃身が食い込む。
「あなた、私を知らないみたいね。ただのコスプレかどうか試してみれば?どうぞ、ご遠慮なく…。その前に、これじゃあ危ないわね」
スーパーガール郁子は銃身を指でつまみ、グニャリとまげてしまった。
「あなたは悪いけど、ここで休憩していてね…」
ドスッ!!
見張り役の男の鳩尾にスーパーガール郁子のパンチが炸裂した。男は崩れ落ちた。
「あと4人ね。残りは人質の監視とカウンターか…。人質は店長だけみたいね。それなら強行策で解決ね…」
スーパーガール郁子は壁を透視してロビーの中を見ていた。
バーン!!
スーパーガール郁子は壁を蹴破り突入した。
強盗は壁が破壊される音に反射的に銃口を人質の店長に向けた。
スーパーガール郁子は目にも止まらぬ速さで店長の前に立ちはだかった。
ババババババン!!
機関銃の弾丸の嵐がスーパーガール郁子に襲いかかるが、郁子は強盗に背を向けマントを広げ、店長の身体を包み込んだ。
「もう、大丈夫ですよ」
弾丸の嵐が止むと、スーパーガール郁子は機関銃を構える強盗にツカツカと歩み寄った。
「スーパーガールのお嬢さんか。なんだ、意外どいい身体してるな。顔は高校生みたいだけどな…」
強盗たちは銃を構えスーパーガール郁子を囲む。1人の男が銃身で郁子のコスチュームのスカートをめくり上げた。
「ちょっと、なにするのよ!」
郁子が銃身を手で払いのけると、機関銃は吹き飛びひしゃげてしまった。
フッ!!
機関銃を持っていた真ん中の男はスーパーガール郁子のスーパーブレスで吹き飛び、壁に叩きつけられ、気絶した。
残りの男2人はスーパーガール郁子に片手でつかみ上げられ、放り投げられ、やはり気絶した。
「やぁーーー!!」
店長の見張りをしていた無精ヒゲの男は仲間があっという間倒され、ヤケになったのか、スーパーガール郁子に鉄棒を振りかざしてきた。
その声に身を翻したスーパーガール郁子は片手で何事も無いように鉄棒をつかみ、もう片方の手で折り曲げてしまった。少女のような笑顔で。
そして、その鉄棒でヒゲ面男の腕を縛り上げた。
「さあ、これで大掃除は終わりよ。あ、こんな時間。学校に帰らないと…」
スーパーガール郁子は店長を縛り上げたロープを引きちぎった。
「店長さん、もう大丈夫です。外にいる警察官には私が話しておきますから。それでは私はこれで…」
スーパーガール郁子はさっきの警官に強盗を倒した事を話し。現場を後にした。
「ちょっと、急がないと…」
空に舞い上がったスーパーガール郁子は右手を突き出すと、彼女の飛行速度はあっという間にマッハを超えた。
「先生、遅いな。準備室、見てくる…」
合唱部の部長の高橋は音楽準備室を覗き込んだ。
「あれ?先生いないよ?」
「私はここよ。どうしたの?」
そこには元の姿に戻った郁子の姿があった。
「あれ?先生。どうしてここに立ってるの?それにその本」
「調べ事していたら、どうしても分からなくて、図書館行って来たの」
「でも、先生、どうやって図書館に行ったの?準備室からは音楽室を通らないと外に出られないよ?」
「うふふ。窓からよ。あたし、スーパーガールだから…」
郁子はそう言いながら、生徒にウインクをした。
-社会人編その3につづく-
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