高校の先輩、山田さんから結婚の報告のハガキがきた。
あ、そういえば奥さんの名前、失念しちゃいました。仮名で真由美さんにします。
ウエディングドレスの山田さんの奥さんの腕、意外と太く筋肉質なので、ビックリ!
あの、質感は普段はゴムのように柔らかく、力を入れるとムキッとなる、全盛期の楽天の松井稼頭央のような腕じゃないでしょうか。
2次会で見たときはスーツ姿で小柄でカワイイかんじなのにね。
そこで、こんなこと考えちゃいました
…ある日、奥さんが家の整理をしていると、家具屋がタンスを配達に来ました。
「こんにちは、○○家具店です。品物を持ってきました~」
「あ、ご苦労さま。まだ、片付けている途中だから、玄関のあたりにでも置いてください」
「でも、奥さん、このタンス大きくて重いですよ。そんなところに置いていったら、奥さん、出られなくなっちゃいますよ」
「いえ、このぐらいなら、自分で運べますから」
「でも、奥さん、このタンスだって俺たち2人がかりでやっと、運んだんですよ。それを女の人が1人でなんて。しかも、小柄な奥さんが、なんて。俺たち、オチョクッテません?」
すると彼女は、着ていたブラウスを脱いでTシャツになった。すると、あのたくましい腕が…
そして、彼女は独り言のように「あ、これ、どけないと置けませんね。いま、どけますから…」と言った。
彼女は、タンスの横にあった、大型冷蔵庫をヒョイと担ぎあげ、「ね、簡単に運べるでしょ!」と言った。
家具屋の男たちは、「す、すげー!この人怪力美人妻だ!」と言って、立ったまま、凍ってしまった。
「あ、家具屋さん、この和ダンス引き取ってもらえます?」
「ええ、いいですけど、このタンス、随分大きいなあ。エレベーターに載るかなあ?」
「だったら、私が下まで運びますけど」
「奥さん、いくら怪力で運べるといっても、エレベーターに載らないかもしれませんよ。まさか、階段で降りる気なの?」
「ま、いいから、いいから。とにかく、私が下まで運びますから、先に行っていてください」
そういうと、彼女は家具屋にウインクをした。
「さてと、こんなところ、近所の人に見られたたらエライことになっちゃうな…」
彼女は、周りを見回し、誰も見ていないのを確認すると、タンスを担ぎ上げ「エイッ!」と下へ飛び降りた!
ちょ、チョッと待って!山田さんちって、たしか団地の10階だったはず!
それを一部始終見ていた家具屋はもう一人の男に「お、おい。今の見たか?な、なんか凄いものを見ちゃったなあ。」とつぶやいた。
家具屋は、奥さんにタンスをトラックに載せるのを手伝ってもらい、帰ろうとすると「あ、車輪が側溝に落ちてら」とつぶやいた。
彼女はすかさず「あ、車輪落ちてるわね…」と、言いながらトラックのバンパーに手を掛け、脱輪したトラックを元に戻してしまった。
家具屋の男たちはボーゼンと見ているしかなかった。
「ねえ。どうかしました?ごめんなさい。ビックリさせちゃって。でも、このぐらい、小学生の頃からやっていたのよ。わたし。」
彼女はそういうと
「あ、いけない。ガス消すの忘れてた。家具屋さん、ビックリさせたお詫びにお茶でも飲んでいってくださいな。先に戻っていますから。」
彼女はそういうと、空を見上げ「エイッ!」と自宅のある10階までジャンプした。
「あ、あの奥さん空も飛ぶんだ。実際に、スーパーウーマンって、いるんだな。しかも、こんな身近に…」
こう言うと家具屋の男たちはうなずきあった。
家具屋の男たちはお茶を注いでいる彼女に聞いた。
「パリン!」
「あ、いけない。力入れすぎて、湯のみ割れちゃったわ」
家具屋の若い方の男が聞いた。
「奥さんのパワーって、測ったことあるんですか?」
「う~ん、詳しくは測ったことないけれど、小学校に入る頃には、自動車を持ち上げるぐらい、やっていたかも。」
「え、え~?!で、奥さん、さっきこの階までジャンプしたでしょう。あれだって普通の人には絶対できませんよ。」
「う、うん、わかってるわ。でも、もう、中学ぐらいの時には、ちょっとしたビルぐらいならジャンプして飛び越えることもできたわ。高校生のとき初めて東京に来て痴漢に襲われたの。それで、痴漢の腕を掴んで手の平を思い切り握り返したわ。そうしたら、その痴漢、手を押さえながらうずくまったの。そのとき、怖くなって逃げるとき、咄嗟に目の前の雑居ビルを飛び越えたわ。」
「で、奥さん、数値はわかったんですか?」
「あ、ごめんなさい。話しが横道に行ったわね。学生のときに、ジムで機械を使っていろいろと測ったけど、ちょっと力を入れるだけで、みんなエラーが出ちゃった。機械で計測できる数値をオーバーしちゃうみたい。だから、いままで自分本当のパワーって使ったことないの。普段はむしろ物を壊さないように神経を使うから結構、疲れるの。きょうは久しぶりに力使ったわ。でも、本気になったときの10分の1も使っているかしら。」
「奥さんは、走るのも速いんですか?」
「そうね。ふつうの人よりは速いわ。OLのとき、熱海の実家に帰るとき、遅くなって電車がなくなったの。それで、走って帰ったら、20分ぐらいで帰れたわ」
「それって、新幹線より速いっすよ!」
ダンナさんが仕事から帰ってきました。
「あなた、なんとか部屋、片付けましたよ。」
「あの、大きな冷蔵庫、そこのタンスも、おまえ一人で動かしたの?ウソだろ?」
「あなた、このぐらいなら楽勝よ」
彼女は、トレーナーを脱ぎ、あのたくましい腕をみせ、力こぶをつくった。
「おまえ、女ポパイみたいだなぁ。納得、納得。」
ダンナは「これじゃあ、ヘタに逆らうと殺されるかも…ま、いいか。そこにおれもホレたんだから」と、心の中でつぶやいた。
このまえは、こんなことがありました。
真由美さんが買い物にデパートへ。デパートに入るとなにやら騒がしい。
「子供が、エレベーターのドアに挟まっているぞ!」
店員が駈け付け、ボタンを押してもドアは動かない。子供をドアに挟んだまま、故障してしまったらしい。
「わたしがなんとか、しなきゃ」
彼女は自慢のたくましい腕に目をやった。
きょうは、今年、一番の暑さ。ちょうど、帽子をかぶりサングラスをかけていた彼女。
「これなら、誰かわからないわ」
彼女は人ごみをかきわけ、エレベーターの前へ。
「ぼく、もうだいじょうぶよ。おねえちゃんが助けてあげるから、がんばるのよ」
「お、おねえちゃん、痛い!痛いよー!」
バタン!彼女の怪力でドアは開いた。
「さあ、もう、だいじょうぶよ。でも、もう、こんなところで遊んじゃだめよ」
「おねえちゃん、ありがとう!」
その光景を見ていたヤジウマたちは、彼女の怪力とポパイのようなたくましい腕に、あっけにとられ、言葉を失っていた。
気がつくと、周りでは大きな拍手と、大歓声が上がっていた。
真由美さんは、気はずかしくなり、デパートを出た。
「こんなところ、隆宏さんに見られたら、どうしよう。離婚かなぁ」
彼女は余計な心配をしていたのだ。じつは、ダンナさんの隆宏さんは、彼女のそのたくましい腕に一目ぼれしてしまったのだ。
夜、ダンナさんが帰宅すると、開口一番。
「真由美、きょうは大活躍だったんだって錦糸町のデパートで、スーパーウーマンが子供を助け出したって、すごい騒ぎだったぞ」
「え、なんで知ってるの?」
「ばか、あそこのデパートのエレベーター、うちの営業所の管理だぞ。さっき、故障を直しに行ったら、店長が興奮して話していたんだ。話しを聞いてるうちに、おまえがやったって、すぐわかったんだ。まさか、うちのカミさんです。なんて言えないし、適当に相槌うって、仕事始めたよ。しかし、派手にやってくれたなぁ。あのエレベーター、業務用だから、扉も頑丈にできていて普通でも交換するのたいへんなんだぞ。それを、いくら力があるからってあそこまで壊れるかなぁ。扉が歪んで、外れなかったぞ。よほど、おまえ呼んで、手伝ってもらおうかと思ったよ。でも、同僚に、ウチのカミさんがスーパーウーマンです。なんて、いえないジャン」
「でも、ふつう、エレベーターのドアって、物が挟まると開く検知装置ついてるでしょう。なんで、働かなかったの?」
「どうも、センサーが故障していたらしい。けど、センサーもおまえの怪力で粉々になって、もう予想の世界だったよ。男が4人掛りでやっと支えるドアをそれをこんな小柄な女性があっというまに壊して、子供をねぇ…。ますます、ほれなおしたよ」
数日後、このまえの事故があったデパートへ買い物に行った、真由美さん。
「きょうは、無事でよかった。もう、ここであんなことできないわ。」
デパートを出て、バスターミナルに向かう彼女、そのとき事件は起きた。子供が母親の姿を見つけ、道路に飛び出したのだ。
「あっ、ママー!」
そのとき、猛スピードを出した大型トレーラーが…
「アッ、危ない!」
彼女はトラックに向かい猛ダッシュ!彼女の姿が消えた。
バーン!
大音響が響く、音の方向に目をやると、真由美さんが大型トレーラーをガッシリ受け止めていた。トレーラーの運転手は彼女がガッチリ受け止めた瞬間を見て、信じられない…といった顔をしていた。スグ後ろには子供が、あとコンマ数秒遅れていたら、子供は即死だった…。
あとから、警察の現場検証でトラックを見たら、彼女の手の跡がクッキリと残っていたそうである。
渾身の力でトラックを止めた真由美さん。彼女の身体は、盛り上がった筋肉でふた周り大きくなり、着ていたブラウスはビリビリに破れていた。残念ながら下にTシャツを着ていたんで、下着姿にはなりませんでした。
「いやぁ。はずかしい!」
彼女は現場から走り去っていった…というより彼女は空へ飛び立っていった。
…「子供に気がついて、危ない!もうダメだ!と思ったら、ドカンって衝撃でトレーラーが止まったんです。そうして、目を下にやると、あのスーパーウーマンが手を付いて止めていたんです。彼女が手をついたところは凹んでいました。」
警察の事情聴取で、運転士はそう答えるしかなかった。
「おまえ、居眠りして夢でも見たんじゃないか?もっとも、このまえのデパートの件もあるしなぁ。おれも、スーパーウーマンに会いたいよ。」
事情聴取をした警官も彼女の存在を認めるしかなかったようである。
以来、錦糸町界隈では「ポパイの腕を持つスーパーウーマンが町の平和を守っている」という噂で、もちきりである。
おしまい。
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