真夏の8月6日ぼくは19歳の誕生日を迎える彼女の『めぐみ』と誕生日のお祝いのためにデートの待ち合わせをしていた。しかし肝心の恵がなかなか現れず夜の広場に一人待たされつづけていた。
すると、そのとき、ガラの悪い3人の男が向こうからやってきた。僕はなるべく目を合わせないように小さくなっていたが、連中はそんな僕の様子をみつけるとニタニタ笑いながら近づいてきた。
いよいよ危険を感じた僕は連中の反対側に向かって駆け出そうとしたが、手遅れだった。三人組は僕を追いかけてきてあっという間に追いつくと僕のの首を腕で絞め、取り押さえてしまった。
「おいおい、坊や。逃げることはねぇだろ」
「一人で何してんだ?彼女と待ち合わせかい?うらやましいねぇ…」
「俺らもいい夜を過ごしたくて『献金』してくれそうなのを探してるんだよ。もちろん、協力してくれるよなぁ…?」
連中は予想通りの要求をしてきた。
「…わ、わかりました」
僕はお金で済むならと、おとなしくお金を出そうとしたが、財布を出したときに誤ってケースを落としてしまった。中から真珠のネックレスがころがり落ちた。めぐみへの誕生日プレゼントだった。
「なんだこりゃ。真珠か?本物ならそれもよこせ」
しかし、これだけは渡すわけにはいかない。
「だ、ダメだ!」
僕はネックレスを抱きかかえてその場にうずくまった。
「コイツ。っふざけるな!どけ!」
何度も背中を踏み蹴られたが、絶対にどくつもりはなかった。しかし、男の一人が僕の顔をめがけて蹴り上げてきた。僕は無理やり地面からひっぺがされ、仰向けになってしまった。そのとき、すかさずネックレスを男の一人に奪い取られてしまった。
「あ…あぁぁ…やめてくれ。返して…」
必死の抗議も鼻血が口内に大量に入り声にならない。
「うるせぇヤツだ。そんなに返して欲しけりゃ、いいもの返してやるぜ!」
一人の男がそう言った瞬間、僕の視界に男の拳が飛び込んできた。
「…も、もうダメだ…」
僕はそう思いながら目をつぶった。
「………」
何秒たっても何の衝撃も痛みもなかった。僕は恐る恐る目を開けると、そこには理解不能の光景があった。吹き飛んだのは僕ではなく、僕に殴りかかろうとした男のほうで、男は20m先で地べたに這いつくばっていた。
他の男たちも何が起きたのか理解できていないようだった。一体何が…。
そのとき、頭上からパタパタと何かが風にはためくような音が聞こえた。
その場にいた全員が一斉に頭上を見上げた。そこにはSマークの入った青いレオタードを身に着けた美女が赤いケープをなびかせ、中に浮いていた。
「…め、女神…」
僕は思わず、そう、つぶやいていた。その姿はまさに女神のように美しく、気高く、そして何よりも力強さを感じさせるオーラを放っていたからだ。
僕も男たちも口を5センチ以上開けたままで、目を大きく見開きながら、その女神を仰ぎ見ていることしかできなかった…。
そんな僕たちの無力さを面白がるかのように女神はうっすらと笑みを浮かべて見下ろす。やがて女神はゆっくりと効果をしはじめ、小さな足音とともに赤いブーツを地につけた。
「遅れてごめんね。大学で残されちゃって…。音速で飛んできたんだけ ど…」
「……め、めぐみ、めぐみなのか?」
なんと、女神は僕の彼女、めぐみであった。
女神はめぐみめぐみは女神
「こ、このアマ!!なめんじゃねぇぞ!!!」
我に返ったとここの一人がスーパーガール恵に襲い掛かった。しかし、勝負はあっという間についた。
めぐみのアッパーが男のあごを直撃し男は地平線の彼方まで飛んでいって消えてしまった。彼女はそれを見届けると、最後 の一人にその美しい顔を向けた。
「ひぃぃぃぃ…」
残った最後の一人の男は悲鳴を上げて逃げ出した。しかしスーパーガールからは逃げられるはずもなかった。
めぐみはあっという間に男の頭上を飛び越え、その男の前に後ろ向きで降り立った。男は恐怖を感じるとともに、その美しい髪と首筋に見せられ快感を覚えた。スーパーガールめぐみは振り返ることもなく裏拳を放ち男の顔を潰しノックアウトした。
「…つ、強い、強すぎる…」
僕は自分の彼女の圧倒的な強さをただ、呆然と立ち尽くして見ているしかなかった。恵は顔の潰れた男の手から真珠のネックレスをひろうと、赤いケープをふるがえして僕のほうに振り返り、天使のような微笑を向けて言った。
「誕生日プレゼントありがとっ!」
-おしまい-
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