類人猿、鴉、蝉 | ルノアール日録

類人猿、鴉、蝉

昨土曜、竹中直人の芝居を観る前に、渋谷のGALLERY LE DECO 4Fで、「こゆび侍」の『飴をあげる』を観劇していた。

「柿喰う客」の『俺を縛れ!』『真説・多い日も安心』、「ひょっとこ乱舞」の『プラスチックレモン』に於ける客演ぶりを観ていて、その存在に注目していた女優、佐藤みゆきのホームグラウンドの劇団、ということが観劇の動機だったのだが、やはりホームというべきか、ここでも佐藤みゆきの存在感は際立っていた。
口跡の確かさ、鮮やかさと表情のチャーミングさ。

桟敷最前列ゆえ、首はかなり痛くなったけど、臨場感はバッチリ。

「亡骸をめぐる冒険」「飴をあげる」「うつせみ」以上、短編3話のオムニバス形式で、全体を貫いているのは、ずばり“死”。

「亡骸」では類人猿が“死”の認識によって人類になるサマ、「飴をあげる」では人間に恋してしまうも、当然越えられるわけもない“種”の壁によって当の人間に殺されてしまうカラス、「うつせみ」では死の運命を拒む“革命”を成就させた蝉たちが、逆に“退屈”に苛まれる皮肉な運命を描く。

結構さらりとポップに描きながらも、せつなさと無情さを絶妙に滲ませる「飴をあげる」「うつせみ」の2編が気に入った。