今日は ”高エネルギー加速器研究機構”の「春のキャンパス公開」に行って来ました。

つくばは言わずと知れた研究学園都市ですが、春のこの時期各研究機関が一般公開を行います。

ただ、これまで私は開催のお手伝いをする方だったので、見に行ったことがありませんでした。定年再雇用になってお手伝いからも解放され、今回初のカスタマーで初の高エネ研見参です。

3月24日に”量子場計測システム国際拠点”の講演会を聞きにつくば国際会議場に行きましたが、今回はその本拠に乗り込む形です。

加速器=ニュースなどで時々見て、素粒子を加速してぶつけてその性質を解き明かすって、なんとなく分かっているつもりですが果たして。

 

11:30からバスでの見学ツアーがあるというので、エントリー。結果から言うと下の

航空写真の丸をした箇所に行ってこれました。

赤丸は「SuperKEKB加速器」の一部。

青丸は「Photon Factory」です。

 

バスに乗って、東京ドームうん十個分の敷地を北へ向かっていきました。上の写真パネルは上がほぼ北とみてよいです。↓途中に道路標識がありました。

見えている道を行くと、筑波・日光まで行けるようです。「いや、まてまて、ここはKEKの敷地内だぞ!」っと思っていると、バスは古めの建物の駐車場で停車。

どうやら、標識の「筑波」はここのことのようです。赤丸の場所ですね。

バスを降りて建物に入って、まずは説明係の職員さんの説明を聞きます。

「一周約3kmのリングの中を電子と陽電子を光速に近い速度まで加速して、正面衝突させる。そこで、出てくるB中間子の様子を観察することによって、(ここから先記憶曖昧)現在の宇宙に反粒子がなく、粒子だけが残ったのか? 宇宙初期にはどのような現象が起こったのかを再現して、未知の粒子や力の性質を明らかにする」んだそうです。

上のモニタ模式図の左側中心の赤い円筒が、電子・陽電子が衝突する部分。そこから出ている線がB中間子で様々な観測機器でこのB中間子をとらえるのが「Bell Ⅱ測定器」というもので、それがこの地下にあるということ。

 

で、いよいよセキュリティドアを入って、階段を地下へ降りていきます。

折れ曲がってその先の扉を抜けると、地下とは思えないだだっ広い空間が現れました目

↑写真の真ん中下あたりに階段のあるコンテナがありますが、これが3階建てだそうです。ということは、5階から6階建てのビルがすっぽり入る高さがあるってこと!

横方向もさて差し渡しう~ん200mはあるでしょうかね。凄いんだろうなとはおもってましたが、ちょっと度肝を抜かれるスケールでした。

↑写真の赤で囲った部分が「Bell Ⅱ測定器」の本体の部分とのこと。様々な機器や膨大な数のケーブルが装置を取り巻いています。本体も重量級ですが取り巻く補器類も凄いボリューム。不具合が起きたら原因究明が大変そうと変な心配をしてしまいます。

左手側には、研究協力している国々の国旗もありました。

高エネ研って地上レベルではそれほど大きな設備がないように見えますが、地下にまさかこんな規模で設備があるとは、ちょっと呆けてしまいました すんごい絶望

 

始めに説明を受けた1階のスペースに戻ってあった↑のが、「Bell Ⅱ」の模型。

先ほどの機器に埋もれていた部分がこれですね。

そして、加速器「SuperKEKB加速器(B factry)」一周の図↓。今見ている筑波実験室もほんの一部であることが分かります。道路標識にあった「日光」もありますね。

素粒子という極小の世界を見るために、これほどの装置とエネルギーを要する。ただ、宇宙初期の状況、ビッグバン間もない状況を見ようと思うとそうなんだろうなーと、感覚のギャップを無理やり納得させながら、「筑波」「Bell Ⅱ」を後にしました。

 

次に見せて頂いたのは、前出写真パネルの青丸の部分「Photon Factory」、日本語正式名称は「放射光実験施設」。加速器が作る、明るく波長の短い「放射光」で物質や生命を原子のスケールで観察できる設備だそうです。高エネの中でも「物質構造科学研究所」に属していて、先の「B Factory」とは違って、原子・分子レベルで’もの’の構造を明らかにしようという設備。主に使用するのはX線の領域だそうです。

3月に聴いた”量子場計測システム国際拠点”の講演会でも、何が見たいかで、使う波長を選択するという話がありましたが、ここでは分子・原子レベルを見るのに適した波長であるX線を発生させて、その解析に供しているとのこと。

X線というと、毎年の健康診断のレントゲン撮影で我々もお世話になっていますが、ここで使うX線はもう少し波長の長いものだそうです。それは、使い方に差がありレントゲンは物を透過してその像を使用しますが、ここでの解析はもの(分子・原子)に当たった(通り抜けてない)現象を観察・解析することで対象物の様子を明らかにするのが目的ということだそうです。

「放射光」ってなんだっていうと、高速近くまで加速された電子を磁場で進行方向を変えるときに放出される光(電磁波)だそうです↓

光を取り出して整えて、解析対象物に当ててその構造を明らかにするんですね。

上のパネルの円形の部分を電子が高速近くで周回して、その周りに放射状にある直線の部分にX線が供給されるとのこと。直線の部分(ビームライン)が沢山ありますが、それぞれ、解析対象によって観測機器や光もチューニングされているようです。

↓はそのビームラインと観測機器の写真です。

写真にはありませんが、「はやぶさ」が持ち帰った小惑星のサンプルもここで解析されたとのこと。

2009年には、この設備でリボゾームの構造解析を行った、Ada Yonath博士がノーベル賞を受賞したそうです。

B Factoryほどではありませんが、こちらもかなりヘビー級の研究設備ですねー

 

さて、重たい設備を見て頭も重たくなって?ちょっと一息つきたいところ。

公開エリアではいつもコーヒーでお世話になっている「もっくん珈琲」が出店されていました。

おかげさまで、おいしいコーヒーで一服させていただきましたよ飛び出すハート

 

キャンパス公開では設備見学の他に「サイエンスカフェ「博士の履歴書」」という催しもありました。

計3回のうち、2番目の「集積回路で描く魔法陣」を聞いてきました。

演者は、量子場計測国際拠点(QUP)の宮原正也さん。

計測解析のための「集積回路」を設計するという、われわれ凡人には全く理解不能な開発をされている方ですね。設計と言っても模様のような形で回路を設計していき、うまく行けば凄い(魔法のような)機能を持たせられる。イコール魔法陣ということ。でも、宮原さんのご出身は千葉の「チバニアン」地層の近くの田舎で、通学にも苦労するような環境で育ち、高専から就職、就職先で面白い分野を見つけてまた再入学、大学院という道をたどって、現在の職「主任研究員」になったとのこと。一時期、半年で一つできるかどうかの設計を年間数十個やってのけたとのこと。凄い集中力、この頑張りが今につながっているんですね。でも、人生諦めることも肝心とも仰ってました。ただ、諦めて忘れるのではなく、それを生かすことが大事と。流石!

 

少し脱線ですが、組織名「QUP」を「キューピー」と発音することは、マヨネーズ会社に承諾をもらっているそうです↓

 

 

さて、折角行ったのでお土産をと売店も物色。

泡箱に出来る荷電粒子の軌跡をプリントしたTシャツを買ってきましたよ

 

3時間ほどの見学でしたが、しょっちゅう脇を通っている高エネ研は予想以上に日常とはかけ離れた世界であることが分かりました(ほんの一部でしょうが)。世界中の頭脳が集まって、究極の理論とその実証を求めて頑張っているんですね。

さて来年はどこに行こうかな??