100円ショップはお好き? | ようこそ もぐ庵へ 

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座右の銘は『いいかげんは良い加減』
人生をなめている訳ではないけれど。

100円(今は99円ショップまでありですが)ショップはお好きですか?

 わたしは、ある本を読んでから足が遠のくようになりました。


『転がる香港に苔は生えない』で大宅壮一ノンフィクション賞をとった星野博美のエッセイ集です。
銭湯の女神『銭湯の女神』 星野博美 文春文庫
 

 「・・・・・100円ショップに行くと、わたしはどうにもいいがたい後ろめたさに襲われる。
 物には最低限の価値というものがあり、その価値は自分で金を払って覚えていくものである。
 わたしたちはよく、安く買った物を無駄に使い、高い金を出した物は大切にする。 

 出した金額によって、その物に接する態度を無意識のうちに選択している。
 ・・・・100円ショップはいうなれば、あらかじめ邪険にされる運命を負わされた悲しい商品の墓場である。
 わたしが店内で感じる後ろめたさは、おそらく墓場を歩いているような悲しみなのだと思う。・・・・・」


 ある日、後ろめたさを感じつつも、彼女は「経済的必要性」から、100円ショップに行き、プラスティック製の健康竹踏みを買う。
かわるがわる踏みつけては、脳天気に笑う家族をよそに、父だけが何か感慨深そうに眺めていた。
彼はつぶやく。
 「これ、型を作るのは大変なんだ」
 「これが100円だったら、型を作った奴には一体いくらはいるんだろう?」
鋳型職人だった彼は、一度もそれを踏まなかった。

  

  ・・・・・彼女とその家族が踏みつけていたのは、「健康竹踏み」だけではなかったのである。

 
 

100円ショップの店内での後ろめたさをわたしも感じるようになった、それが足を遠のかせる理由なのです。


他、感慨深いエッセイ満載、はっきり言って硬くて重いです。
でも、それが快感になる、不思議な本です。

100円ショップ大好きな方にはお薦めしにくいのですが・・・。