
本文はここから
辛い話というか
失敗なんだけれどね
数少ないバイト生活の中で
カラオケ屋さんにいたことがあるのよ
その日は忙しくてね
缶ビールの補充を頼まれての
重い扉の向こうの部屋に
丸いお盆を持って取りに行ったのよ
そうね今思えば
2,3往復すればよかったのでしょうね
せっかちな私は
350ml缶のビールを
丸いお盆いっぱいに乗せて
しかもその上に
もう1段乗せて
運んだわ
運ぶことは可能だったのよ
でもね
問題は
重い扉を開けることが出来ない
だって両手でお盆を持っていたから
どうしようか悩んだわ
でも
トライしたのよ私
そう
片足の裏を壁に押し当てて
膝の上にお盆を乗せて
片手でバランスを取りながら
空いた方の手で開けたわ
重い扉は開いたのよ
そう開いたの
急いで体を扉に滑り込ませようとした瞬間
あーーーーーーーーーーーーーー
芸術的に積み上げられていた缶ビールが
いくつか転げ落ちていったの
転げ落ちただけなら
良かったのに
なら良かったのに
缶ビールの一つが
運悪く
・・・消火器に当たったわ
次の瞬間
シューッと白い煙が
お盆に残ったビールだけを持って
慌てて重たい扉を閉めたのよ
そして
ちょっとしてから
ゆっくりと
重たい扉を開けてみたら
そこはとても幻想的な事に
静かに舞っている白い煙と
廊下と缶ビールに積もった桜色の粉
そうか
消火器って桜色の粉なんだ
なんて思ったっけ
その後
部長の所に行って
出来事を話して
謝って
呆れられて
終わりさ
『急いては事を仕損じる』
この事を覚えた20歳の夏だったわ
ありまい