森へ続く細い道を歩いていくと、小さなお家がありました。
屋根には水色の細い煙突が1本。
そこにはおばあさんが住んでいました。
おばあさんは編み物名人。
細い煙突を通って、キラキラ光るお空の糸でいろんな物を編んでいます。
お空の糸で編んだものは、ポカポカとお日様の優しい匂いがします。フワフワと雲の甘い匂いがします。
その糸で編んだ靴下やブランケットはホッコリ暖か。
ある日、おばあさんの所に男の子がやってきました。
男の子は悲しそうな顔をしています。
おばあさんはお家に招きいれ、紅茶とクッキーをご馳走してあげました。
男の子はポツリポツリと話し出しました。
「大事にしていたクマさんが壊れちゃったんだ。」
そう言って、男の子が出したクマさんはボロボロになっていました。
おばあさんはニッコリと笑って、「明日までに直してあげるから、もう一度尋ねておいで。」と言いました。
男の子が帰った後、おばあさんは早速仕事に取り掛かりました。
お空の糸でスイスイ編み始めます。
まずは頭、体、手足に耳、それからシッポ。
胸には雲のアップリケ。
白いクマさんの目も新しいクマさんに付け替えました。
綿を詰めるときに、魔法の小さなハートビーズを入れました。
そして最後に全てをつなぎ合わせ、空色クマさんができました。
次の日、約束どおりに男の子がやってきました。
おばあさんは、新しい空色クマさんを渡しました。
男の子は初め、色が違うと思いましたが、白いクマさんの目だと気付き、嬉しくなりました。
「おばあさん、ありがとう。」
すると、おばあさんがふしぎな事を言いました。
「よーくよーく考えて、素敵な名前を付けておあげ。」
男の子は「うん。」と返事をして、お家に走って帰りました。
男の子は自分の部屋に戻ってくると、空色クマさんをジーッと見つめました。
なんて名前にしよう
お空のようにきれいな水色、雲のように柔らかそうなお腹。
そして決めたのです。
「ラモン。」
空色クマさんの中のハートビーズが光りました。
「ソラのラとクモのモでラモンだね。」とニッコリ笑いました。
男の子はとってもビックリしましたが、ラモンを驚かせてはいけないと思い、ニコッと笑い返しました。
男の子がスケッチブックを取り出して、絵を書き始めると、ラモンも両腕にクレヨンを抱えて書き始めます。
男の子が本を読み始めると、ラモンも読んでいるふりをします。
男の子はワクワクしてきました。
男の子はお腹が空いてきました。キッチンに行って、パンとチーズを取り出して、ラモンにもあげようとしたら、「僕はすっぱい物が好きなんだ。」と言いました。
男の子は慌ててキッチンに戻って、すっぱい物を探しました。
見つけたのは、レモンとイチゴ。
それを小さく切って、お皿に乗せて、ラモンにあげました。
ラモンは嬉しそうにレモンを一口。すると、水色だったラモンが黄緑色に変わりました。
少しすると、元の水色に戻りました。
次に、イチゴを一口。すると、今度は紫色に。
そしてまた元に戻りました。
男の子はラモンが大好きになりました。
お腹が一杯になったので、男の子はラモンを連れて、お気に入りの場所に出かけました。
そこには大きな木が1本あります。
二人は木の影になっている芝生に寝転びました。
ラモンが嬉しそうに空を見ています。
男の子はそのまま眠ってしまいました。
しばらくして、男の子が起きるとラモンがいません。
「ラモーン、ラモーン!」
いくら呼んでも返事はありません。
男の子は慌てて家に走っていきました。
家中探してもラモンはいません。
男の子は目に涙をためながら、おばあさんの所に行きました。
「おばあさん、ラモンがいないの。」
男の子はボロボロと泣き出しました。
おばあさんは「大丈夫、心配要らないよ。」と言って、暖かいココアを入れてあげました。
トントン
ドアをノックする音がします。
おばあさんがドアを開けると、そこにはラモンがいました。
「ごめんね、君にこれをプレゼントしたかったんだ。」
手には蜜がたっぷり詰まった、大きなお花を持っていました。」
男の子はラモンを優しくギューッっと抱きしめて「ラモン、ありがとう。」と言いました。
ラモンは「心配かけてごめんね。」と言いました。
おばあさんはそのお花の蜜で美味しいクッキーを焼きました。
ラモンには特別にレモン入りです。
みんなで食べたクッキーは、とても優しい味がしました。
おしまい
あなたの空色クマさんは
どんな名前かな?