昨日の、準夜勤での出来事。

本当はここに残すべきじゃ無いんだろうけど、とても優しい時間を忘れたくないし、忘れられないから残す事にしました。



昨日、担当させていただいていた肝・腎不全の患者様。
5月より状態が悪化し、入院。
一度は快方に向かい意識も回復していましたが、数日前から肝性脳症の状態で昏睡となっていました。
Drからもご家族に患者様の最期について話をされていました。
意識が回復した時にご本人が残されていた意志を尊重してDNRをとる事となりました。
ご家族はそのメモに残されていた、ご本人が危篤状態になった時に連絡をしてほしいと書かれていたご友人に連絡をとり、連日部屋には多くのお見舞いの方が来られていました。


昨日はご家族、高校時代からのご友人、そして婚約者の方がご本人を囲み、明るく話しをされていました。

20時頃、更に状態は悪化しましたがお父様の呼びかけに反応するかの様に少し開眼し、脈拍・血圧共上昇を認めました。
ご家族は涙を堪えながらたくさん話し掛けられておられました。

私は婚約者の方に初めてお会いしたので、ご友人かと思い関係を伺ってみました。
お父様は笑いながら、「旦那なんよ」と答えられ、私は素直に受け止め羨ましいなぁと言う話しをしていました。

話しの中で本当は2日に結婚式をする予定であったと苦笑いを交わすお父様と婚約者の方。
気になって詳しく聞いてみると、2日にこっそりご家族だけで式を挙げる予定にされていたそうなのですが、処置が重なり諦められたとのことでした。

徐々に最期の時が近づいていました。

話しを聞いて、同勤の先輩に相談を持ちかけると、保育のイベント用に用意していた紙の飾りやモールを出して、結婚式を挙げて頂こうということになりました。
ご家族に提案すると、賛成してくださり大急ぎで準備をしました。

まるで子どもの誕生日会の様な飾り。
それでも無機質な病室が明るくなったように感じました。

新郎新婦はブーケの替わりに胸に飾りを着け、神父さん代わりはDr。
血圧は50を切りそうな状態なのに、みんな笑顔でした。

21時、手作りの結婚式の始まり。
婚約者の方が用意されていた、とてもよく似合うリング。
全身に浮腫がみられていたのに、左手の薬指にピッタリでした。
そして、頬に誓いのキス。祝福の声と拍手。
みんなの目に涙が溢れ、顔は笑顔。

温かく優しい時間でした。

指輪交換の直後、徐脈となり血圧は触知出来なくなりました。

意識もない状態だったのに、大きく開眼されお父様の方を向いた後、枕元に立つ婚約者の方を向き、口を必死に動かし何かを訴えようとされていました。
声になることはありませんでしたが、旦那さんは頷かれておられました。

みんな泣きながら声をかけ、たくさんの人に囲まれて最期の時を迎えました。
穏やかな、表情をされていました。









悲しくも、優しく温かな時間だと思いました。

看護師になって3年目、人生においても初めて看取りをさせていだきました。

今、正直に言えば、辛いです。
人の死というものを目の当たりにして、涙を止めることが出来ません。

この方の長い人生のほんの何日間かに関わらせていただいただけなのに、こんなに短い時間の中でたくさんの事を教えてくださいました。
一時的に昏睡状態から回復された時にも担当をさせていただいていたのですが、未熟な私に向けて「ごめんね」と「ありがとう」を繰り返し言われていました。
会話がしっかりしてくると、今までの事、これからしたい事をたくさん教えてくださいました。

たくさんの事を身を持って学ばせて下さったこの方に、私は何も返すことが出来なかった。無力な自分が嫌です。


それでも、今回学ばせていただいた事を糧にして、次へ進んで行けたらと思います。


何も出来なかった自分に後悔するのは簡単な事だけど、優しい時間を共に過ごさせていただいたせめてものお礼に、後悔するのではなく、前に進みたいと思います。
これが、今の自分に出来ることだと思います。




これが、昨日の出来事。
嘘偽りのない事実です。
彼女が精一杯生きた証として、彼女の最期に関わらせていただいた一人として、残したいと思います。