■滋賀県立大学(滋賀県彦根市八坂町)

 

なんというか、清里とか八ヶ岳にありそうなテーマパークというかショッピングモールというか。

 

 

馬鹿にしてるんじゃ、ありませんよ。なかなかいい感じの大規模ポストモダン施設ですね、ってことです。

 

 

そろそろ築30年。そろそろ大規模修繕の季節かな、って感じもしてきますね。

 

 

現状のキャンパスは、良い感じにこなれてきた感もあれば、汚れや痛みが目についてきたな、という感じが7分3分ぐらいなので、あんまりピカピカにしない感じで修繕してくれるといいかな、みたいな感じが個人的な感想です。

 

 

さてこのキャンパス、内井昭蔵がマスターアーキテクトとして、公募で選考された建築家が分担して設計した、ということになっている。

 

コンセプトはイタリアの山岳都市だそうですが、そういわれるとそうかもしれないし、そうかなあ?という気もしなくもないが、八ヶ岳とか清里感はあるので、山岳地帯の高原都市感は濃厚だ。

 

 

小高い丘の上に中央広場があり、それを囲むように校舎が展開する作りが産学都市っぽいと言えばそんな感じなんだろう。

 

まあ、広場からの眺望はなかなかだ。

 

 

さて、内井昭蔵の下に配置された建築家は長谷川逸子(工学部棟・体育館)、大江匡/PLANTEC(環境科学部)、浦辺設計(人間文化化学部・交流センター)、坂倉建築研究所(センターゾーン=中央広場)と、そうそうたる顔ぶれ。

 

なんというか、よく金があったな…滋賀県。

 

 

と、それはさておき、すべてが濃厚に内井色で染め上げられている。

 

内井の単独設計といわれても違和感はないぐらいに。

 

 

いや、長谷川ゾーンは長谷川チックか。でも、違和感はなく、流ちょうに接続されている。

 

 

場所は、ひこにゃんが飛び跳ねる彦根城から、バスで15分ぐらい。

 

前身は1950年設立の滋賀県立短期大学。家政・工業・看護・農業など11学科2専攻を展開し、公立短大では国内最大規模だったという。

 

 

さらにその前身までさかのぼると、44年設置の官立彦根工業専門学校(旧制専門学校=新制大学相当)に突き当たる。

 

戦時中に作られた急増高専っぽい感じもしなくもないが、その詳細は不明。

 

 

戦後、新制の国立滋賀大に工学部として加わる選択肢もなくもなかったと思うし、いったん国立短大になってから国立大に昇格した宇都宮大工学部みたいなチョイスもあっただろうけれど、県立に移管され、県立短大となった。

 

その結果、国立滋賀大は文系のみの小規模大学になってしまったのだが、うーんまあ、なんでなんでしょうね。

 

 

でまあ、95年に4年制の県立大としてリニューアルオープン。

 

そんな時期だからなのか、内井が直前に手掛けた、90年開館の浦添市美術館をなんとなく引きずってる感じもある。

 

いや、内井デザインっていつもこんな感じか?

 

 

  交通メモ

 

滋賀県立大学

 

住所: 滋賀県彦根市八坂町

 

JR彦根駅からバスで20分。まず彦根城と滋賀大彦根キャンパスを見て、それからバスで県立大へ向かうべし。先に県立大に行くと、疲れ切って、足が動かなくなりそう。彦根城も体外につかれるけれども。

■横浜商科大学(私立・横浜市鶴見区)

 

誰の設計かわからないけれど、何とはなしに川島甲士っぽさを感じるのだが、如何?

 

 

 

横浜と川崎の中間地点、海にほど近い急斜面に展開する、それほど大振りではないキャンパスだ。

 

 

斜面の上だけあて、眺めは上々。

 

 

基本的には70年代風モダニズム校舎。

 

 

最近できた新しい校舎「50周年記念館」もある。

 

しかし、設計者はだれなのか。

 

 

いや、これが結構いいんですよ。この大学の校舎。

 

 

中心線を外した中庭広場のつくりもそうだが、凡百の「なんとなく、それっぽく作ってみました」風ではない。

 

 

どういうことかというと、川島っぽいんだよ。

 

川島っぽく作りました、風ではない。

 

 

と、川島川島言っておいて、やっぱり違う可能性も高いと思うけど。あからさまな川島風ではないし。

 

 

でも全体的にレベルは高いと思う。中も、地味にじわじわ来るし。飽きがこない。

 

 

感覚的な表現ばかりで申し訳ないが。

 

 

それぞれスタイルの異なる70年代風モダニズム建築3棟が中庭を囲み、残る一方は海に向けての眺望。

 

 

視線の軸は巧みに右前方にずらしてあって、左右対称の構成にはなっていない。

 

 

横浜商科大は、1941年開学の旧制横浜第一商業学校(高校相当)が源流。神奈川県庁勤務を経て県議になった松本武雄氏が創設者だ。

 

戦後の66年、横浜商科短期大学を増設し、68年に4年制大学へ移行した。コンピューターの導入や、日本で2番目に観光学科を創設するなど、商学に特化した先進的な教育環境を整えた、とのことだ。

 

 

  交通メモ

 

横浜商科大学

 

住所: 神奈川県横浜市鶴見区東寺尾

 

京急生麦駅より徒歩15分。あの「生麦事件」があった場所だ。エゲレス人の怨念が漂っているのだろうか。酒好きなら、キリンの工場見学も兼ねていってみてはいかが?

■番外・富山県庁

 

1935年竣工。もろに、この時代にはやった感じのデザインだ。

 

 

つまり、古き良きヨーロッパ風をベースとしつつも、ごてごてとした彫刻や装飾は少しづつ省かれていき、現代風のシンプルモダンにつながる感覚が芽生えている、という感じだ。

 

 

設計は県土木部らしいが、顧問として大熊喜邦が名を連ねている。

 

大熊は官庁営繕のドン(3代目)と呼ばれた大物建築家で、国会議事堂の事実上の設計者としても知られている。

 

車寄せも立派で、堂々たるものだ。

 

 

 

とはいえ、豪勢なのは入り口周りだけ、ともいえる。

 

脇に回ると擬石仕上げだし、内部は昔の高校や大学の校舎、そんな感じ。結構に節約精神。

 

税金は(あんまり)無駄遣い?していない。

 

ところで県庁の敷地内から、県総合福祉会館「サンシップ富山」が見える。

 

 

名前の通り、太陽に向かって出発する船だ。

 

バブルモダンな市役所、昭和レトロな県庁舎、そして超現代風のサンシップが並ぶ富山の公共建築、侮れない。

 

おまけに、県庁と並ぶ富山レトロ建築の双璧、富山電気ビルも。

 

 

 

■浜松学院大学(浜松市中区布橋)
 
1933年開設の興誠商業学校に端を発する。

 


 
1951年に浜松短期大学を開学し、2004年に4年制の浜松学院大学を開いた。

 


 
行けばわかるとおり、街中に位置する小さなキャンパスだ。

 

 


 
静岡大浜松キャンパスから徒歩10分少々かな。

 


 
裏手には、静大付属小がある。

 


 
こちらの校舎が何とも言えない。
 

 

  交通メモ

 

浜松学院大学

 

住所: 浜松市中区布橋


JR浜松駅からバスで15分。歩いていける距離ともいえる。駅から来る途中に浜松城があるし、静大浜松キャンパスもほど近い。ご一緒にどうぞ。

 

■拓殖大学・文京キャンパス(私立・東京都文京区)
 
東大の建物を大体作ったとして有名な内田祥三の物件があると聞いて、茗荷谷へ行ってみた。


入り口すぐの本館。

 


 
なるほど内田祥三だ、と感心したが、後で調べたら加護谷祐太郎の建物であった。

 


 
って、その方どなた?
 
浅草本願寺を設計した人らしいのだけれども。
 
一見してゴチック様式だが、バットレスが飛び出しすぎている。

 


 
1932年落成。アールデコな時代感覚でゴチックを派手にアレンジしたというところか。

 


 
入り口は仏式。壁は白塗、丸窓に仏式の柱。南無。

 


 
お寺建築家だからなのか?
 
それはさておき、数字上はとても狭い敷地だが、意外にそうとは感じさせない。

 


 
そして見所は多い。
 
最寄りは丸ノ内線茗荷谷駅。徒歩10分もかからない。

 


最近、中大が移転してきたので、にわかに大学集中地帯となった。
 
いったん坂を下り、そこからキャンパスを見上げながら、再び坂を上る。

 


 
A館の後ろ側をぐるりと巡ってみると分かるが、後方部は2010年頃に改修・増築されたものだ。
 
途中から壁のスクラッチタイルが新しい物に変わっている。意外に違和感はない。
 
そんなやり方で古い建物を拡張し、現代向けにアップデートするのもありだなと感心させられる。
 
拓殖大の前身は、1901年創立の台湾協会学校だ。
 
日清戦争のあと、日本が手にした植民地・台湾。そこで活躍する若者よ集え!というコンセプトだ。
 
1907年の東北大よりも歴史は古い。
 
創立者の桂太郎元首相の立像もあるが、恥ずかしがり屋なのだろうか。顔がよく見えない。

 


 
個人的な感想だが、桂太郎より、2代目学監の新渡戸稲造をフィーチャーした方が、国際的でおしゃれな大学としてのイメージが出て良いような気がするのだが。

 
さて、本館をあとにして、新造の高層校舎群へ向かう。
 
10階建てのE館はなかなかの迫力だ。

 


 
学食に面したテラスエリアに降りて、そこから狭い空を見上げつつ先に進むと、1969年起工のD館にたどり着く。

 


 
定礎の揮毫は中曽根康弘元首相。

 


 
D館は、新宿の損保ジャパン本社をほんのり連想させる。

 


 
何となくウルトラマン的なセンスを感じてしまう、というと、ますます分かりにくいですね。

 


 
新しい校舎もどうしてなかなか、悪くはない。
 
拓殖大のスクールカラーのオレンジが、キャッチーなアクセントになっていると思う。
 
敷地面積2万6000平米とコンパクトなキャンパスに、学生数は3000~4000人ぐらいは通っているはず。
  
であるが、人々は高層校舎の中に収用されているせいか、それほど人口密度の高さは感じない。
 
キャンパス内の建物配置はメリハリが効いていて、そこが、数字には表れない広さにつながっているのかもしれない。
 
そして残りは、ほとんど使われていない東門付近の空き地(駐車場的な)だ。
 
空き地方面はキャンパス主力地帯から坂を下った、一段低い場所にあり、そちらからキャンパスを見上げるのもいい眺めだ。
 
このあたりと斜面を一緒に、散策路付きの日本庭園に改装した姿が見てみたい。
 
さて、ここだけではなく、徒歩数分のところにある国際教育会館も見ておきたい。
 
こちらこそが内田祥三の設計なのであった。

 


 
鉄筋コンクリ造の和風建築として有名だそうだが、正直、怪しい東洋風寺院建築という感じだろうか。

 


 
正直言って、A館が内田の設計、国際館が加護谷の設計の間違いじゃないの?どこかで書類を取り違えたんじゃないの?と思わざるを得ない。

 

  交通メモ


拓殖大学(文教キャンパス)


住所: 東京都文京区小日向


東京メトロ丸ノ内線の茗荷谷駅から徒歩3分。近所にはお茶の水大、中央大、筑波大(ごく一部の機能のみ)、跡見学園女子大などが集まる大学集中地帯だ。茗荷谷はつまり、後楽園と池袋の中間地帯。どっちに出るのも徒歩でOKだ。

■武蔵野大学・武蔵野キャンパス(東京都西東京市新町)

 

武蔵境か吉祥寺あたりで中央線を降りてバス。

 

大学のほかに付属中高や幼稚園も入ったキャンパスだ。

 

 

そのため、全体では10万平米あるとはいえ、コンパクトでこぎれいにまとまったキャンパス、という印象を感じる。

 

 

メーンの1号館と2号館は、60年代風のいかにもな学校校舎。

 

 

周りには芝生と木々の庭園がきれいに整備され、穏やかで品の良い、という表現がぴったりだ。

 

 

大学本部は湾岸・有明に移転してしまった。キャンパスの重心も、あちらへの移転計画が進んでいる。

 

 

1・2号館はこのまま取り壊すのはもったいないなあ、と思っていたのだが、新学部を充てんするらしい。

 

 

ところでこちら、作りは洋風だが、実は仏教系だ。しかも西本願寺。

 

 

なんと、開校時のボスは大谷光瑞。

 

 

伊藤忠太のマブダチで、築地本願寺をああいうデザインにした張本人の一人だ。

 

 

1924年に築地本願寺内に前身となる武蔵野女子学院が開学。1965年、西東京市に武蔵野女子大がオープンし、2003年に共学化、武蔵野大学に。

 

 

  交通メモ

 

武蔵野大学(武蔵野キャンパス)

 

場所: 東京都西東京市新町

 

中央線の武蔵境と吉祥寺からバスが出ている。中央線沿線は言うまでもなく散歩スポットの王国。ぶらぶら歩いて、お菓子をお土産に帰宅する。

■常葉大学・静岡草薙キャンパス(静岡市駿河区弥生町)
 
2018年竣工の新鋭キャンパス。設計は竹中工務店。

 

 

 
場所は駅から徒歩3分。街なかというか住宅街というか、国道沿いというか。

 

 

 

 

大学がなかったらイオンかヤマダ電機が建てられていたと思われるロケーションだ。

 


 
最近はやりの、一件木材風ルーバー(もちろん木材ではない)がみっちりついた箱型校舎が4棟並列配置されている。

 


と見せかけて、実は全部一体型でつながっている。 

 


この辺もイオン的だ?
 

 


各棟の間はスカイデッキが設けられ、登って行けるようになっている。
 

 

 

 

 

  交通メモ

 

常葉大学・静岡草薙キャンパス


住所: 静岡市駿河区弥生町


JR静岡駅から熱海方向へ2駅。草薙駅で下車。駅の目の前には巨大な静岡銀行タワーがあるが、その向こうにキャンパスが広がる。合わせて同大静岡瀬名キャンパスにも足を運ぶのがいいのでは。草薙からさらに北へ30分もあるけば到着する。
 

■東京都市大学・横浜キャンパス(横浜市都筑区)

 

東急グループ系の私大、東京都市大の環境情報系など新設学部が入る、新しく小さ目なキャンパス。

 

 

 

場所は港北ニュータウン。

 

 

 

ニュータウンと言っても、できてからもう20年以上たってはいるが、やはりニュータウン的だ。

 

 

 

建物はうーん、ポストモダン時代以降の公共建築風、て感じだ。

 

 

 

っていうか、いかにも港北ニュータウンにありそうな感じの建物だ。

 

 

 

としか言いようがない。

 

 

 

こちらは駅前のニュータウン的なモニュメンタル。

 

 

 

  交通メモ

 

東京都市大学・横浜キャンパス(私立)

 

住所: 横浜市都筑区牛久保西

 

東急渋谷英から田園都市線で25分、あざみ野下車。ブルーラインに乗り換えて5分、中川駅へ。そこから徒歩10分。大学巡りなら、青葉台方面に出て横浜美大や昭和薬科大がお勧めか。

■敬愛大学(私立・千葉市稲毛区穴川)

 

千葉大の隣にある小規模私大。建物は3号館が新しく格好いい。

 

 

 

1926年創立の旧制関東中学校が起源。戦後は新制高校となり、1966年に千葉敬愛経済大学を設置。

 

 

1988年に敬愛大学に改称し、今日に至る。

 

 

名前の由来は創業者が西郷隆盛ファンだったことから。

 

 

西郷語録「敬天愛人」からとった、というわけだ。

 

 

キャンパスは高校と共用しており、大学部分はそんなに広いわけではない。

 

 

でも、千葉大と比べると、とても新しくて格好良い。

 

千葉大、千葉経済大の3校はほぼお隣さん同士、というって差し支えない位置関係なので、一緒にどうぞ。

 

  交通メモ

 

敬愛大学

 

住所: 千葉市稲毛区穴川

 

千葉駅からモノレールで5分、天台駅下車。さらに徒歩15分。千葉市累代の墓がある大日寺もそば。このお寺、建物的にもなかなかアクロバティックで、一見の価値あり。

■國學院大学・たまプラーザキャンパス(横浜市青葉区新石川)

 

人間開発学部と観光まちづくり学部が入る、國學院のサブキャンパス。大型グラウンドも設置されている。

 

 

 

見ての通り、完全に洋風。

 

 

シンボル的校舎の若木21館は完全に洋風。

 

 

ちなみに「若木」は、渋谷にある本部校舎の旧町名。若木タワーに若木会と、國學院関連でよく使われる名前だ。

 

 

校舎の見どころ、と言えば、タイル張りに木材を縦柱的にあしらった、最新鋭の1号館校舎か。

 

 

 

この手の構成の場合、縦柱は同じ太さで統一するか、あるいは上を細くして遠近法を利用した高さの強調・軽やかさのアピール、といった誂えにすることが定石だ。

 

が、この建物、逆に上の方が太く、厚くなっている。

 

 

 

洋風建築ではなく、肘木で上方にボリュームを出す和風建築の心意気を強調しているということなのだろうか。

 

 

國學院だけに。

 

 

キャンパスの場所はおしゃれ住宅街、たまプラーザのど真ん中。駅から徒歩10分もかからない。

 

 

 

 

  交通メモ

 

國學院大學(たまプラーザキャンパス)

 

住所: 神奈川県世小浜市青葉区新石川

 

渋谷駅から東急田園都市線で30分弱。たまプラーザ駅下車。徒歩10分弱で到着。昔は美しが丘方面が栄えていたが、今はどうなのだろう。センター方面に重心が移ったとの説もある。その辺の視察散歩もご一緒に?