■拓殖大学・文京キャンパス(私立・東京都文京区)
東大の建物を大体作ったとして有名な内田祥三の物件があると聞いて、茗荷谷へ行ってみた。
入り口すぐの本館。
なるほど内田祥三だ、と感心したが、後で調べたら加護谷祐太郎の建物であった。
って、その方どなた?
浅草本願寺を設計した人らしいのだけれども。
一見してゴチック様式だが、バットレスが飛び出しすぎている。
1932年落成。アールデコな時代感覚でゴチックを派手にアレンジしたというところか。
お寺建築家だからなのか?
それはさておき、数字上はとても狭い敷地だが、意外にそうとは感じさせない。
そして見所は多い。
最寄りは丸ノ内線茗荷谷駅。徒歩10分もかからない。
最近、中大が移転してきたので、にわかに大学集中地帯となった。
いったん坂を下り、そこからキャンパスを見上げながら、再び坂を上る。
A館の後ろ側をぐるりと巡ってみると分かるが、後方部は2010年頃に改修・増築されたものだ。
途中から壁のスクラッチタイルが新しい物に変わっている。意外に違和感はない。
そんなやり方で古い建物を拡張し、現代向けにアップデートするのもありだなと感心させられる。
拓殖大の前身は、1901年創立の台湾協会学校だ。
日清戦争のあと、日本が手にした植民地・台湾。そこで活躍する若者よ集え!というコンセプトだ。
1907年の東北大よりも歴史は古い。
創立者の桂太郎元首相の立像もあるが、恥ずかしがり屋なのだろうか。顔がよく見えない。
個人的な感想だが、桂太郎より、2代目学監の新渡戸稲造をフィーチャーした方が、国際的でおしゃれな大学としてのイメージが出て良いような気がするのだが。
さて、本館をあとにして、新造の高層校舎群へ向かう。
10階建てのE館はなかなかの迫力だ。
学食に面したテラスエリアに降りて、そこから狭い空を見上げつつ先に進むと、1969年起工のD館にたどり着く。
何となくウルトラマン的なセンスを感じてしまう、というと、ますます分かりにくいですね。
新しい校舎もどうしてなかなか、悪くはない。
拓殖大のスクールカラーのオレンジが、キャッチーなアクセントになっていると思う。
敷地面積2万6000平米とコンパクトなキャンパスに、学生数は3000~4000人ぐらいは通っているはず。
であるが、人々は高層校舎の中に収用されているせいか、それほど人口密度の高さは感じない。
キャンパス内の建物配置はメリハリが効いていて、そこが、数字には表れない広さにつながっているのかもしれない。
そして残りは、ほとんど使われていない東門付近の空き地(駐車場的な)だ。
空き地方面はキャンパス主力地帯から坂を下った、一段低い場所にあり、そちらからキャンパスを見上げるのもいい眺めだ。
このあたりと斜面を一緒に、散策路付きの日本庭園に改装した姿が見てみたい。
さて、ここだけではなく、徒歩数分のところにある国際教育会館も見ておきたい。
こちらこそが内田祥三の設計なのであった。
鉄筋コンクリ造の和風建築として有名だそうだが、正直、怪しい東洋風寺院建築という感じだろうか。
正直言って、A館が内田の設計、国際館が加護谷の設計の間違いじゃないの?どこかで書類を取り違えたんじゃないの?と思わざるを得ない。
交通メモ
拓殖大学(文教キャンパス)
住所: 東京都文京区小日向
東京メトロ丸ノ内線の茗荷谷駅から徒歩3分。近所にはお茶の水大、中央大、筑波大(ごく一部の機能のみ)、跡見学園女子大などが集まる大学集中地帯だ。茗荷谷はつまり、後楽園と池袋の中間地帯。どっちに出るのも徒歩でOKだ。