■番外・静岡市役所(静岡市葵区追手町)
スパニッシュなドームが自慢の白亜の殿堂。1932年。
それが徳川家康のおひざ元・駿府静岡の市役所本館だ。
設計は浜松出身の中村與資平。東京帝大建築を出て辰野葛西建築事務所に入り、旧満州・朝鮮で多くの公共建築を手掛けた。
その後は日本に戻って独立。静岡に事務所を開いた。
市議会は当初、「よそと自治体と同じ感じで、オーソドックスにルネッサンスっぽい感じの庁舎をよろしく」と発注したのだが、やってきた設計書には「それじゃ目立たない」「東海の枢要都市にふさわしくない」と、ド派手なスペイン風ドーム塔屋(=市の王冠、だそうで)がのっかっていた。
しかも「けちけちしては良い建物はできない」ということで、工費50万円と指定したにもかかわらず、65万円の設計図になっていたという。
説明にやってきた中村氏。ざわめく議員たちに答えていわく、「市役所なんだから、この程度でも少ないぐらいだ」。
というわけで、たいへんゴージャスな市役所。現在は主に議会棟として使われている。
ステンドグラス。
壁、柱、階段は琉球石灰岩で、化石入りだ。
さて、その本館の隣には佐藤総合による高層新館(1987年)が立っている。
こちらも昔は、中村氏が設計した公会堂が立っていた。
面白いのは、こちらは白壁直方体に規則的な矩形窓をはめ込んだ、大層モダンなデザインだったということ。
市議会は「歌舞伎座みたいなど派手なやつを」と発注したのだが、今度は中村氏、「モダンな感じで行きましょう」と返したそうだ。
ちなみに市役所新館と県庁新館はともに高層庁舎で、展望スペースが設けられている。
どちらも富士山が主役だが、県庁は21階、市役所は17階に設けられている。
じゃあ4回分、県庁の方が眺めがいいの、と言われると、そうとも言い切れない。
交通メモ
静岡市役所
住所: 静岡市葵区追手町
JR静岡駅から徒歩15分。お濠を挟んだ(やや)帝冠スタイルの県庁も中村與資平設計。そばにSANAA設計の市歴史博物館もできた。もちろん、駿府公園も忘れずに。ところでキルフェボンとヴィノスやまざきは、どちらも静岡生まれなんだぜ。青葉通り。