■長崎大学・片淵キャンパス(長崎市片淵)

 

経済学部の単独キャンパス。

プライドの高い医学部が単独キャンパスを構えることは少なくないが、経済学部でそれというのはめったに聞かない。

 

キャンパスに入ると、レンガをあしらったレトロな建物。

 

 

足元を見れば石造りの立派な橋。

 

 

奥にはレンガ造り倉庫も残っている。

 

 

というような豪勢なキャンパスでもあるのには訳があって、長崎大の前身はなかなかの名門校なのだ。

 

 

つまり、第3高等商業学校。

 

第1は一橋大、第2は神戸大経済学部・商学部になった。

 

 

その次に来るのだから、なかなか大したものである。

 

 

最初に出た立派な建物は、瓊林会館(旧長崎高等商業学校研究館)。

 

 

1919年竣工のレンガ造りの建物だ。

 

 

鉄筋コンクリにレンガ風タイル張りかと思ったら、純然たるレンガ造。

 

 

かなりレアな震災「前」建築である。

 

 

橋は拱橋(こまねきばし)。1903年。

 

これも鉄筋コンではなく、完全石造アーチ橋だ。

 

も一つ、レンガ造倉庫も1907年の完全レンガ造り。

 

とまあ、日本でもかなりレアなリアルレトロ建築3物件が残されている。

 

われながら「レア」「レア」とうるさいが、本当にレアなのだ。

 

 

一般にみんなが「レンガの建物、素敵~」「石造りでレトロ~」と思っている物件は、9割9分、鉄筋コンクリートにレンガ風タイルや薄くスライスした石を張り付けたものだ。

 

 

純然たるレンガ増や石造物件は、地震や戦争や予算の関係で、日本にそうそう残ってはいないのだ。

 

 

戦争の関係といえば、幸いといっては何だが、長崎中心街からはそれほど離れているわけではないのだけれども、山の配置が幸いし、爆風被害は少なかった。

 

 

というわけで、貴重な構造が残っているというわけだ。

 

 

ついでながらこのキャンパス、レトロ3兄弟以外の物も悪くはない。

 

 

というか、主役に引っ張られて、脇役まで輝いて見える感じだ。

 

 

平地の少ない長崎らしく、決して広くはないキャンパスだが、狭いなりに庭も確保されている。それもまたいい。

 

 

ちなみに第3高等商業の初代校長・隈本有尚は、夏目漱石「坊っちゃん」に登場する数学教師「山嵐」のモデルとされる人物だ。

 

人柄の面でもモデルにされたうえ、隈本が旧制山口高等中学校の教頭時代に学校側と一部の生徒が衝突した「寄宿舎騒動」が、バッタ事件のエピソードの元ネタになったらしい。

 

 

まあ変わった人で、専門は数学だが、東大理学部で天文学の助教授をやって、いろいろあって第1高等商業の教授を経て第3高等商業の校長になった。

 

日本に西洋占星術を始めて紹介した人物でもあり、世の中的にはむしろ占星術師として知られていたらしい。

 

 

  交通メモ

 

長崎大学・片淵キャンパス(国立)

 

住所: 長崎市片淵

 

バスや市電で20-30分。徒歩で散歩を楽しむのもよし、ぐらいの距離感。近くにはシーボルト記念館もある。あとは再び中心部に引き返して長崎観光を、というところでしょうか。