番外・東松山市役所(埼玉)
金沢駅前の巨大木製ゲート。行ったことは無くても、ポスターや雑誌で見たことはあるのではないだろうか。
その金沢駅東広場(「鼓門」と、背後にあるガラスと鉄の「おもてなしドーム」)を設計した、白江龍三による東松山市総合会館が見ものの市役所だ。
金沢駅の方はアメリカの旅行雑誌がチョイスした「世界で最も美しい駅」に選ばれているが、総合会館も「世界で最も美しい東松山市総合会館」というにふさわしい、出来栄えだ。
ここまで肝心の市役所についての言及がなく、「東松山市役所」というタイトルはどうなんだとお叱りを受けそうだが、一応、総合会館に隣接する市役所も、白江龍三が耐震改修を手掛けている。
とにかく、駅から歩いて市総合会館へ。1990年落成。
初見では、この年代の公共施設にありがちな、なんちゃってポストモダンかと思ったのだが、ぐるっと回ってみて、「スキがない」。
正面の見た目だけのインパクト勝負でなく、どこから見てもサマになっている。
建物本体だけでなく隣の立体駐車場や、そこから接続する歩道橋の塔屋も円のモチーフにこだわっている。
さて、総合会館のメーン入り口は、いったん地階に降りた先にある。
入ると、地階から2階ぐらいまでぶち抜く豪勢な柱。
ゴージャスな桃山調?のモザイクと、世紀末ウィーン発ですか?みたいな黄金タイルが、渦を巻いて上昇する。
その先にはまぶしい太陽光。
後ろを振り返ると、外の天井面はド派手な朱色(色落ちが激しいけれど)。
相当な傾奇者である。この建物。
建物の外壁は明るい空色。
最初は、色落ちや汚れの付着のせいでこう見えているのかと思ったが、元から雲を散らした空をあしらったものだったようだ。
そんな空色に包まれた脇の階段を、カーブしながら上っていく。
と、突然、視界が開ける。
グリーン、オブジェ、イエロー。
その先は空。
屋上は立ち入り禁止。残念。
いったん建物の中に入って、外を見る。
それから、今度は階段を下る。
その眺めも、登りとはまた違う、ドラマチックな展開だ。
白江龍三は地元出身で1952年生まれ。日大建築を出て、日本設計などを経て独立。東京都多摩動物公園昆虫生態館が出世作だ。
さて、次は隣の市役所。
うん、市役所だ。
その役所からもうちょっと北に行くと、県立松山高校がある。
大正12年落成の旧制松山中学校校舎が、教育資料館として保存公開されている。
こちらもぜひ。
東松山市は、地理的な意味で埼玉県の中央部に位置し、埼玉のへそ、と名乗ったりもしている。
江戸時代は幕末の一時期に陣屋(市役所支所みたいなもの)が置かれたぐらいで、すごく発展していたというわけではないが、明治に入って、製糸業などがそれなりに栄えた。
そして戦後は東京のベッドタウンとして発展し、今日に至る。
とはいえ、新たな住民は広々としたニュータウンに住み、昔の街並みは結構、雰囲気を残している。
駅もそんなイメージに合わせたのか、こんな風に作られている。
交通メモ
東松山市役所(埼玉)
場所: 埼玉県東松山市松葉町
池袋駅から東武東上線で1時間、東松山駅で下車。徒歩10分少々。日本三大焼き鳥の街としても知られる。残り二つは室蘭と今治だが、東松山と室蘭は鶏肉は使わない。室蘭は豚肉串を洋カラシで食べる。東松山は豚のカシラ肉にピリ辛みそだれ。かなり旨いので、お試しあれ。