■神奈川大学・横浜キャンパス(私立・横浜市神奈川区)
前川国男とはまた別系統である、バウハウス系昭和モダニズム建築の雄・山口文象が率いる設計事務所RIAによるキャンパスとして知られている。
肝心の山口本人が手掛けた3号館は、解体されてしまったが。
JR横浜駅からバスに乗って神大前まで。学生たちの後について5分ほど。
坂の上に時計塔が見えてくる。
そして入場。
キャンパスの玄関口を固める1-3号館は、RIAによる建物を取り壊して作った、ピカピカの現代建築だ。
時計塔がついているのは、ちょっとレトロな7-10号館。
事実上一体化した、ロの字型の校舎になっている。少々補修して、少しカラフル、おしゃれになっている。
設計は山口本人ではないが、コルビュジエとは違う、禁欲的でスタイリッシュなモダニズムデザインを感じさせる。
見下ろす中庭とかが、ビューポイントかな。
吹き抜けの学生ラウンジには開放感。
隣の5号館と6号館もRIA。
窓と柱と梁のシンプルでリズミカルなバランス。
大阪人みたいな表現で恐縮だが、「シュッとした」としか言いようがない。
筋交いもカラフル。
と、ここまでがキャンパス西側。
その先は、公道をまたぐ神大橋を通ってキャンパス東エリアへ。
グラウンドや体育館、図書館に生協などが立ち並ぶ。
体育館は、西側エリアに比べると、遊びのあるデザインだ。
あとは生協。
大学ロゴ入りのTシャツやトレーナー、湯飲みといった定番のお土産に加え、大学特製スキンケアクリームなども並ぶ。
20号館まではRIAの手によるらしいが、後半はだんだんと量産型という感じになってくるのが、ちょっと残念。
ミナト横浜は神戸ほどではないにせよ、なかなか広い平地は確保しにくい。
そんなこともあって、このキャンパス、広さはそこそこあっても、密度は高めだ。
とはいえ、緑も確保されている。
源流は米田吉盛が1928年に作った私塾、横浜学院。
翌年には現代の大学にあたる専門学校に昇格し、旧制横浜専門学校となった。
この米田氏、中央大の専門部(大学本体ではない)に在学中、かの平沼騏一郎に連なる人脈の知遇を得て、卒業からわずか2年後に学校を作った、ということらしい。
むむむむむ。
それはさておき、戦後には新制大学に昇格し、神奈川大に改称。現在に至る、というわけだ。
とにかく訳が分からないのが、この米田氏、平沼系に連なる方向性で京都学派の高山巌を教授として招へいするような人、つまり保守・右派の思想的な流れに位置する人なのに、革新系というか、共産党に近いと目され、朝鮮大学校校舎なども設計しちゃう山口文象に仕事を発注するところ。
米田氏も建築に関心が高かったらしく、校舎デザインについていろいろ口をはさんだそうだから、山口文象が何者かを知らずに発注したわけではないだろう。
ものの本によると、山口は思想犯として投獄されていた時、なぜか右翼人脈と獄中で仲良くなって…という話もあるらしいのだが。
まあ、戦前の右翼・左翼の思想地図は複雑だからなあ。
そんで帰りは、六角橋ふれあい通りへ。
交通メモ
神奈川大学(横浜キャンパス)
場所:横浜市神奈川区六角橋
JR東京駅から東海道線で30分、横浜駅で下車。バスに乗って約20分。さらに歩いて5分で到着。帰りは15分ほど歩いて、東急東横線白楽駅に出るのがおすすめだ。駅前の六角橋ふれあい通りは、バラック系闇市チックな商店街。つらつら歩いて駅を目指すのも楽しい。TV版・孤独のグルメにも登場した通りだ。