■茨城県庁

旧庁舎は外観が、新庁舎は眺望が良い。特急ひたちに乗って見に行く価値あり。

まずはJR水戸駅すぐ、市内中心部に位置する旧庁舎(三の丸庁舎)へ。

 



1930年落成、置塩章の設計。

 



見ての通り、直線主体の幾何学的なデザインの装飾を施したアールデコ。

 



アールデコなゴチック。

 

とは言いつつ、アールデコにしては装飾がマシマシ気味?で、割と様式建築っぽさを感じさせてくれる。

 



まあ、1930年という時代のトレンド通りの出来栄えだ。きっと県民も「いかにも県庁らしい建物ができた」と、満足しただろう。

 


3階建て、中央部に塔屋付き。堂々たる建物だ。

 



1954年に4階が建て増しされたのだが、東日本大地震で増築部が大きなダメージを受けた。

というわけで4階部分を撤去して、竣工当時の姿に戻した。

内装はというと、うーん、まあ、シンプルという感じだろうか。

 



全体的に県庁はそんなに派手さはないのだが、その中でもシンプルの部類に入るだろう。

 



やや派手目の大学校舎、という感じか。

 



設計者の置塩は1881年に静岡県島田市生まれ、東京帝国大学造家学科に進学。卒業後は陸軍技師となって大阪駐屯の第4師団に配属された。

 



1920年に兵庫県庁に移籍。というわけで、大阪・兵庫の公共建築を多く手がけている。

 



GUのマーク?と見間違えてしまった兵庫県の徽章も置塩デザインだそうだ。

 



1928年に独立開業。関西以外の庁舎も手掛けるようになった、とのことだ。

兵庫最大の建築事務所として成功を収めたうえ、神戸高等工業学校(現・神戸大)でも建築専攻の教鞭をとって弟子を育て、県建築会の会長も務めた。


まさに「地元の名士」だったそうだ。

隣には、なんだかロココなカラーリングとゴシックな装飾が合体した水戸市水道低区配水塔もあったりする。

 



1932年、後藤鶴松の設計。後藤は起工式の当日に生まれた娘に「塔美子」と名付けた。よほどの自信作だった、ということなんだろう。

それはさておき、旧庁舎の周囲は公園や神社などの広々とした空間。

 



散歩には良いロケーションだ。

 



さて、次は現庁舎に向かう。バスに乗って20分ぐらい、結構遠くだ。

広大な敷地に高層庁舎がそびえる。こちらはこちらで、子連れ住民の遊び場として活用されている模様だ。

 



1993年落成、設計は松田平田設計。

で、外観はこういっては何だけど、よくある高層庁舎だ。

だが展望フロアの出来がいい。他の県庁と比べて、レベルが全く違う。

 



大きな吹き抜けを囲む展望階。

「とりあえずひとフロア、開放しました」的な県庁も少なくない中、ここは「展望」のために設計された、って感じがする。

 



市内を遠望するのもいいのだが、下を見下ろすと、前庭がばっちり。

 



そして町なみへと続いて行く。

 



ああ、これを見てほしかったんですね。という作り手のどや顔が瞼の裏に浮かぶこと間違いなしだ。

とはいえ本当は、この展望ポジション、本当は逆向きに作りたかったんだろうな、とも思う。

前庭は庁舎南側にあるんだけど、市内中心部は庁舎の北側。あと、水戸を代表する庭園「偕楽園」も北側だ。

眺望的には北を眺める方がいいんだけど、そうすると前庭が影で真っ暗になっちゃうからなあ。

 

  交通メモ

 

茨城県庁


住所: 水戸市三の丸、笠原町


上野駅からJR特急で70分。旧庁舎は徒歩15分、新庁舎はバス20分。少し遠いが茨城大水戸キャンパス、かなり遠いが茨城大常陸キャンパスもついでにどうぞ。よく考えると茨城は意外に建築大国なような気もしてきた。