■番外・山梨県庁
県庁界という分野が存在するとすれば、その中でもトップクラスに位置づけられる充実具合だ。
断言する。
駅から徒歩五分。
まず、クラシックな1930年落成の県議会棟が見えてくる。設計は県営繕と佐野利器、らしい。
佐野利器がどこまで関与したのかは不明。
いかにもこの年代風の建物。全体的なぱっとみの印象は「昔ながらの欧州風味」だが、細部のデザインや装飾をよく見ると、幾何学的でモダンな塩梅になっている
その横には気持ちよく手入れされた中庭があって、さらにその向こうには新旧の県庁舎もある。
だが、庭は直進せず、左手へまずは進む。
振り返ると、県庁舎と議会棟をつなぐ連絡通路。
旧県庁舎をぐるり壁伝いに進むと、新旧庁舎と最新庁舎(防災庁舎)の3者に囲まれる噴水広場に到着する。
右手が旧庁舎。議会棟と一緒に作られたモノで、基本のデザインは同じだが、ほんのりと帝冠様式が入っている。
控えめにつけられた瓦屋根の部分が、なんだか眉毛のように思えてキュートだ。
正面は新庁舎。1963年落成、早稲田の構造家・内藤多仲と、棒二森屋本館を手がけた明石信道。
マッシブなポーチが、力こそパワー的な存在感を示している。
一方で視線を上に向けると、正面窓の日よけの庇がリズミカルな表情を醸し出している。
しかしまあ、佐野に内藤と、日本の耐震設計の二大巨頭を起用するとは、そんなに地震を警戒しているのだろうか。
左手の防災庁舎は2013年落成で清水組の設計。典型的な現代型ビルだ。
老壮青がそろい踏み。中庭と広場もいい感じ。